にこにこハウス開設20周年を迎えて

にこにこ医療福祉センターが開設後20周年を迎えたことは感激の至りです。

2002年の開設時には、私は神戸大学小児科で新生児医療に関わっており、母子センターで出生した重症心身障害児がお世話になることのできる場が神戸市内に初めて開設され、ご家族の方と一緒に喜んだことを思い出します。

開設されたのは、阪神淡路大震災後7年目で、財政逼迫した神戸市に代わり、古田加代子氏の障害児療育への熱い思いから実現したものです。2017年からは、古田耕司理事長の後任として、当センターの運営に直接関わる機会が与えられ、これまでの恩返しと喜んで引き受けました。

実際に現場に入ってみて、職員の人たちが実に明るく、生き生きと障害児・者に接している姿を目の当たりにし、私は大いに勇気づけられました。と同時に、障害児施設を運営することの難しさを知ることになりました。

入所型の重症心身障害児施設として発足した当センターは、平成24年4月から18歳までの重症心身障害児を受け入れる児童福祉法に依拠する医療型障害児入所施設として、また18歳以上の重症心身障害者に対する療養介護支援を行う障害者総合支援法に基づく事業所として一体的に運営することになりました。

この間、入所していた児童は成人に達し、適切な医療、看護、リハビリテーション、生活環境などで 60歳以上に達する方も増えています。さらに、重症心身障害児の家庭での養育を支える仕組みとして、訪問診療・看護・学校教育や短期入所などの障害児・者支援も充実してきました。

当センターでは、重症心身障害児・者の入所事業だけでなく、生活介護や児童発達支援事業・放課後等デイサービスなどの在宅支援事業と幅広く展開しています。2022年4月には神戸医療福祉センター「ひだまり」を、入所50名、短期入所6名の定員で中央区に開設することになり、これまで入所を希望されていた神戸市在住の重症心身障害児の受け入れ状況は、かなり改善されると考えています。

ポストコロナ社会においては、DX化とともに、障害を理由とする差別の解消に向けての取り組みが求められています。新しくできるセンターはアクセスも良く、地域住民との交流を深め、よりよく理解し合える場になればと願っています。

2022年1月

<参考資料> 医療型障害児入所施設の役割と課題について

平成24年4月から、旧来の重症心身障害児施設は18歳までの重症心身障害児を受け入れる児童福祉法に依拠する医療型障害児入所施設と、18歳以上の重症心身障害者に対する (病院において行われる) 療養介護支援を行う障害者総合支援法に基づく事業所に分かれることになりました。

医療型障害児入所施設と療養介護支援の一体運用

当センターのような、旧来の重症心身障害児施設のほとんどは、新制度になっても医療型障害児入所施設と療養介護支援の一体運用として、発達支援機能と自立支援機能の両方の支援を一体となって行なっています。

昭和42年に児童福祉法が改正され、重症心身障害児施設が法制化された時に、例外的に18歳を過ぎても施設入所を継続できる、あるいは施設入所ができるとされました。 しかし その後50年の間に状況は変化おり、今日では、開設時に入所していた児童は 成人に達し さらに、適切な医療・看護・リハビリテーション、生活環境などにより、高齢化が一層進んでいます。

一方、家庭での養育を支える仕組みも充実し、訪問診療・看護、学校教育、短期入所なども拡大してきたことから、小児期から施設入所を希望する家庭が減少し、旧来の重症心身障害児施設では、成人の割合が小児をはるかに上回るようになりました(当にこにこにこにこハウス医療福祉センター年報2021/3/31より)。

年齢層別にみた入所児・者数

お金と子どもたち

小学5年生の孫娘が、授業の休み時間に、「金や、金や、世の中金や」と大声で教室内を駆け回る男の子がおるねん、おかしいと思わへんと話してくれました。

小学5年生の家庭科では、「お金」をテーマにした授業があるそうで、そのテーマは「かしこい消費者を目指して」になっています。そのねらいとしては、物や金銭の計画的な使い方,身近な物の選び方,買い方を身に付けることになっており、実際の授業でも、メルカリの話があったそうです。

日本銀行からも、インフレ・デフレの話、そして物価の安定がなぜ大事なのかについても学ぶように子ども向けの冊子が出版されています。

昔の子どもには、無駄遣いをしないように、お年玉を大切に蓄えておくようにと渡していました。今は様変わりし、テレビでは子どもたちの消費をあおるコマーシャルが多く見られます。

子どもたちが,物や金銭の大切さについてよく理解し,買い物や金銭の使い方をして欲しいものです。

2022.1.10.

今年の目標はルネッサンスです

新年おめでとうございます。

年末に、NHKのEテレの「100分で名著」に取り上げられていた2021年の新書大賞、人新生の「資本論」という集英社新書を買ってきて読みました。

最近は、SDGsばやりで、環境を守る産業が、今後の経済成長の鍵のように言われる中、マルクス主義を再び持ち出し、脱成長社会を唱える著者は、大阪市大の若手の経済学者斎藤幸平氏で、密かに共感していました。

かつては、「物を大切にすること」が、子どもへの教育でした。今は、無駄遣いを煽ることで社会が動くと考える時代です。大学での研究も経済発展に直接貢献できる研究には研究費が配分され、工学部や医学部は肥り、人文学部はやせ細っています。

戦後の貧困から、高度経済成長社会を実現し、いま衰退していく日本の経済をみていると、私自身のライフサイクルと全く同じで、斎藤幸平氏のいう脱成長社会がよく理解できる気がします。

でも、こんな本がベストセラーになるとは、今の若者も変わってきたのかと思って、正月に息子たちに問うと、そんな本知らんと言われました。
どうやら、読んでいるのは、時間の余った高齢者たちかも知れません。

今年の目標は、元気に活動復帰すること、ルネッサンスです。

2022年1月3日