さまざまなウイルスを保有する蝙蝠(コウモリ)

コロナウイルスの自然宿主として主要な動物種はコウモリです。COVID19の流行と中国武漢のコウモリとの関連性が当初指摘されていましたが、未だに定かではなさそうです。COVID19と関連付けられている重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)も、コウモリを自然宿主としています。

鳥なき里の蝙蝠(コウモリ)

コウモリは、空中を飛べる唯一の哺乳動物です。
今日では、稀有種は珍重されていますが、獣でもなく、鳥でもないコウモリを、昔は一段低く見ていたようです。
「鳥なき里の蝙蝠(こうもり)」とは、にせもの扱いの喩えで、すぐれた人がいないところでは、つまらない者がわが物顔をして威張ることを言います。

いろんなウイルスを保有するコウモリ

コウモリは、コロナウイルス以外にも、エボラウイルスやマールブルグウイルスなどさまざまなウイルスを保有しています。エボラウイルスとマールブルグウイルスは、エボラ出血熱とマールブルグ出血熱の原因ウイルスで、COVID19よりもはるかに致死率が高い病気です。
マールブルグ病は、ケニア、コンゴ、ウガンダなどのアフリカの国々で症例が確認されています。この名称の由来は、ドイツのMarburgで最初の症例が確認されたことによるものです。

A型インフルエンザウイルスがコウモリに

高病原性の鳥インフルエンザが、日本国内でも猛威を振るっています。鳥インフルエンザの原因ウイルス、A型インフルエンザウイルス「H5N1」は、鳥類で起きる感染症と考えられていましたが、最近、コウモリにおいても発見されています。
高病原性の鳥インフルエンザウイルスが、コウモリにおいて変異し、哺乳動物への伝播が起きないことを願っています。
2023.3.15. / 2023.5.19. 修正

いよいよ明日からオリンピック

2021-7-22

日本では、いよいよ明日から東京オリンピックが始まります。
東京の新型コロナ感染者がオリンピックに合わせたように日々増加しており、今や、政府は何ら打つ手がなく、放置したままです。

なぜ、このような事態になったのか?

これまで、日本では欧米に比べて桁違いに感染者数、死亡数が少なかったのは、日本人のもつ感染症に対するガードの固さ、周囲への気配りなど、感染症対策に真面目に取り組んできたおかげです。
元々欧米人と東洋人とは異文化の人種です。辛抱強く耐えるのが日本人の特性です。

オリンピックを開催すれば、人流が増加し、感染者数が増えるのは自明のことです。国際社会に対してしっかりと「ノー」と言えなかった日本政府の責任は重大です。

オリンピックは黒船来襲のようなもの

江戸時代末期の黒船来襲時には、尊皇攘夷の若き志士たちが立ち向かい、日本国を守ってくました。
今回は、復興五輪として新生日本を世界に発信するはずのものが、腰砕けの中で、IOCの意見に押し切られた感が拭えません。彼らは、ワクチンという武器を引さげて、島国日本に攻め込んできたようなものです。国産ワクチンを持たず、接種率が上がらなかった日本の悲しさです。

高齢者の多くがワクチン接種済みですから、以前のように死亡者は増えないでしょうが、中年〜若年層の重症者が増加しているのが問題で、大きな傷が残りそうです。

今回の日本のオリンピックへの対応を見ていると、ずるずると太平洋戦争に巻き込まれた日本、気がつけば国土が焦土化していたという最悪のパターンにならないこと念ずるだけです。

高齢者にやさしい日本の若者たち

首都圏では新型コロナの感染者数が微増しており、蔓延防止措置がオリンピック後まで延長されるようです。今のワクチン接種率では、我が兵庫県も、遠からず感染者数の増加に転じることでしょう。

賢明な日本国民は、政府の日和見的な政策に期待をかけずに、日々発表される感染者の数を見て、さっさと行動に移しているようです。お陰で、日本は、世界的に見て感染者数も、死亡者数ももっとも低いグループに入っています。

福祉大国スウェーデンの失政

スウェーデンは、新型コロナ拡大後、他の欧州諸国のように厳格な都市封鎖を行いませんでした。レストランや小売店は営業を続け、学校も閉鎖しなかった結果、人口約1千万人の同国で、死者は約1万4千人に上り、人口当たりにすると日本の12倍になります。感染者数も18倍と桁違いに多い数字です。

私自身にとって、スエーデンは高福祉国家の理想のモデルであり、また医学研究の面でも、世界をリードする国家であると考えていました。ところが、この度のコロナ対策では、集団免疫を目指すとの政策が打ち出されました。

新型コロナ拡大後も、他の欧州諸国のように厳格な都市封鎖を行わず、レストランや小売店は営業を続け、若者たちがレストランでビールのジョッキーを傾けながら歓談している画像には驚きました。

高い死亡率の原因は、当然重症化しやすい高齢者であり、あれだけの死亡者数に達したということは、医療現場で『命の選別』があったにちがいありません。

一番我慢をし続けている日本の若者たち

かつての福祉国家スエーデンは、経済成長とともに、民営化が進み、格差社会に変貌してしまったことが、今回のような結果に結びついたのでしょう。

日本のまん延防止に最も貢献しているのは若者世代です。家庭内にウイルスを持ち込まないように、我慢し続けてきたのが、日本の若者たちです。

私のような高齢者が今こうしていられるのは、老人を大切にする日本の文化、それを体現している若者たちへの感謝の気持ちでいっぱいです。

2021-7-6

mRNAワクチンが世界中の人々を救う

2012.6.19.

 ハンガリー出身の66歳の科学者、カタリン・カリコ博士が研究開発した「メッセンジャーRNAmRNA)」技術によるワクチンにより、世界中の人々が新型コロナウイルスから救われようとしています。

彼女は、mRNAワクチン開発の偉大なパイオニアの一人である。逆境にも負けず、この革新的な方法を信じ続け、ファイザー、ビオンテック、モデルナの超迅速なワクチン開発・実用化を可能にしたのです。多くの人が、彼女が将来ノーベル賞を手にすると見ています。

私もこのワクチンの2回目の接種がようやく済み、巣篭もり閉塞感から解放された思いです。明日620日で、兵庫県の非常事態宣言も解除され、多少は気兼ねなく外出できそうです。

日本でのワクチン接種は、欧米に比べて接種開始が遅れ、その予防効果はオリンピックに間に合いそうではありません。1日も早く、若者層にまで接種が円滑に進むことを願っています。

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンについて

2021.6.8.

ようやく日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの接種が本格化しています。
新規プラットフォームワクチンとしては、mRNAワクチンとウイルスベクターの2種類があり、現在, 我が国で承認されているのはファイザー社製のmRNAワクチンと、アメリカの製薬会社モデルナが開発したワクチンです。いずれにおいても、国内での治験の結果、中和抗体の上昇が認められたそうです。イギリスの製薬大手アストラゼネカのは、ウイルスベクターワクチンです。 

mRNAワクチンとは

現在, 我が国で用いられているファイザー社製のmRNAワクチンは, 脂質ナノ粒子などのキャリア分子に抗原タンパク質をコードするmRNAを封入した注射剤です。
mRNAを脂質ナノ粒子 (LNP) で包み、筋肉注射を行うとmRNAは筋肉細胞内に入り、細胞質で直ちにタンパク質が作られる。そのタンパク質は、細胞内の酵素でプロセッシングを受け、MHCクラスIに提示されます。すると、細胞性免疫が活性化されます。
一方、細胞に発現している完全な形のウイルスタンパク質は、異物であるために、細胞が死ぬと、このタンパク質は抗原提示細胞へと輸送されます。細胞内でプロセッシングされた後、MHCクラスIIに提示され、やがて液性免疫の活性化へとつながります。
つまり、mRNAワクチンは、擬似的なウイルス感染を体内で生じさせ、細胞性免疫、液性免疫の両方を活性化する技術なのです。

mRNAワクチンは、インフルエンザ、HIV, ジカ熱,などに対する感染症予防の臨床試験が開始されています。

 ウイルスベクターワクチン

ウイルスベクターワクチンは, ヒトに対して無毒性または弱毒性のウイルスベクターに目的の抗原タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ組換えウイルスを使用しており, ヒト体内で複製可能なものと不可能なものがあります。
ウイルスベクターワクチンの利点としては, 抗原タンパク質発現の安定性, 細胞傷害性T細胞応答誘導, アジュバントが必要ないことなどが挙げられています。しかし, 使用するウイルスベクターによっては, ヒトゲノムへのウイルスゲノム挿入変異による発がん, ウイルスベクターに対する既存免疫によるvaccine failure, ウイルスベクターそのものによる病原性, 低力価,などのハードルが指摘されています。
COVID-19に対するウイルスベクターワクチンとしては, Oxford/AstraZenecaのワクチンがすでに英国で使用許可を受け, 接種が開始されています。このワクチンで使用されているチンパンジーアデノウイルスベクターは, アデノウイルスベクターで問題となる既存免疫がヒトにおいては極めて稀と考えられ, 他の新興再興感染症に対するワクチンとして開発が進められてきたものです。
参照 IASR Vol. 42 p36-37: 2021

これまでのワクチン

これまでのワクチンは、感染の原因となるウイルスや細菌をもとに作られてきました。成分の違いから、大きく「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」に分けられます。

 生ワクチン
生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料として作られます。「ロタウイルス」、「BCG(結核)」、「MR(はしか、風疹)」、「水痘(水ぼうそう)」、「ムンプス(おたふくかぜ)」が代表的な生ワクチンです。

不活化ワクチン
不活化ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の感染する能力を失わせたもの(不活化、殺菌)を原材料として作られます。
「ヒブ」、「肺炎球菌」、「B型肝炎」、「ジフテリア・百日咳・破傷風菌・ポリオ(四種混合)」、「日本脳炎」「インフルエンザ」が代表的な不活化ワクチンです。

トキソイド
死滅した細菌の毒素を無毒化したワクチン。「ジフテリア」、「破傷風」が代表的なトキソイドワクチンです。これらは不活化ワクチンにも分類されます。

緊急事態宣言下でのGW: 胸が痛む兵庫の医療崩壊

今も、自宅前の通りを「不要不急の外出を控えましょう・・・」という兵庫県のキャンペーン・カーが通り抜けて行きました。後輩のドクター達が日夜を分かたず医療に当たっておられる姿を思い浮かべると、気の毒でなりません。

連日の新型コロナウイルス感染症拡大の報道によると、重症患者ですら自宅待機せざるを得ない状況下とのこと、本当に胸が痛みます。

1年以上続く新型コロナウイルス感染症ですが、3月末からの兵庫・大阪での感染拡大は、これまでにない大きな再燃で、まさに災害医療モードです。今回の惨状は、「予告済みの災害」としか言いようがありません。


東京や兵庫・大阪に3度目の緊急事態宣言

政府は4月25日に、東京や兵庫・大阪に3度目の緊急事態宣言を発出しましたが、兵庫・大阪では余りにも遅きに失したようです。関西の危機的状況は政府に伝わらず、中途半端なまんえん防止措置での様子見の間に、急拡大が続きました。漸くピークが見えてきた感はありますが、予断を許しません。

兵庫・大阪と東京の人口10万人あたりに換算した1日感染者数の7日間移動平均を描いてみました。兵庫・大阪では3月下旬から急激に増加しているのが一目でわかります。

緊急事態宣言:1/7-3/21(東京)、1/14-2/28(関西)、まんえん防止:4/5-4/24(関西)、4/12-5/11(首都圏)、緊急事態宣言:4/25-5/11(関西・東京)
データは、日本国内の感染者数(NHKまとめ)による。各都府県の人口は、厚生労働省令和元年(2019)人口動態統計確定数:兵庫県 546万人、大阪府 880万人、東京都 1,392万人。


増え続ける重症患者と死者数

感染者数はピークを迎えても、重症患者と死者数は、今後しばらくは今以上に増え続けること必至です。限られた医療資源を有効活用して、医療破綻を最小限に押さえ込んで欲しいと思います。


医療産業都市神戸への期待

医療産業都市神戸が医療崩壊ではサマになりません。ワクチンも手に入りました。しっかりと情報ネットワーク・システムを活用して、日本の各地に新型コロナウイルス感染症対策の良いモデルを神戸が示してほしいと思います。

2021-5-6

Kobe-Kathmandu Meeting on COVID-19

2021-1-26

Professor Pokharel of Tribhuvan University, Nepal, Professor Hisahide Nishio of Kobe Gakuin University, and myself had a ZOOM meeting for about 1 hour from 11:00 am on January 23, about “COVID-19 Circumstances in Nepal and Japan”. .. The following is a summary.

ネパール・トリブヴアン大学のポカレル教授と神戸学院大学西尾久英教授と私の3人で「ネパールと日本での新型コロナ事情」について、1月23日の朝11時から約1時間ZOOM会議をしました。以下は、その要約です。

JAPAN

population 126M, 5,500 cases / day, 99 deaths / day  on January 22, 2021

In Japan, from the end of the year to the beginning of January 2021, the rapid spread of infection and the third wave came, and the number of infected people per day exceeded 6,000 and the number of deaths exceeded 100 per day. From January 7th to February 7th, a state of emergency was issued, refraining from going out unnecessarily and urgently, and the business hours of restaurants are restricted to 8 pm.

日本では、年末から2021年1月初旬にかけて、感染の急拡大、第三波が訪れ、1日の感染者数が6,000人を超え、死亡者数も1日に100人を超えるようになった。1月7日から2月7日まで、非常事態宣言が発令され、不要不急の外出の自粛、飲食店の営業時間が午後8時までに制限されている。

NEPAL

population 28M, 318 cases / day, 6 deaths / day  on January 22, 2021

Recent overview in Nepal by Prof Dr Rameshwar Prasad Pokharel, Kathmandu, Nepal

In Nepal, there was a big wave from August 18th to January 9th, 2021, with more than 4,000 people a day at its peak, but Lock down was initially implemented from March 24th to June 2nd. Although it declined, the number of infected people surged from mid-August and was locked down again as Nepalese workers who had immigrated from cities in India returned across the border. After that, it was thoroughly carried out for 6 months. As a result, as of January 22, the number of patients was 318 and the number of deaths was 6, which is a low level.

  • Nepalese returned from India during COVID 19 infection.
  • People entering Nepal from Gaurifanta (India) southern west Nepal border.

Situation in Nepal Compared to Japan

  • Infected people in Nepal range from infants to 81 years of age, and by age group, Up to 20 years 22%, 21-40 years 61%, 41-60 years 7%, and 60+ years is 4%. Compared to Japan, it is characterized by being more common in the younger age group, and there are not a few cases of child death.

  • It seems that medical equipment was initially unavailable and confused, but now it seems that there is no problem with medical equipment and medicines.

  • As of January 22, 268,948 people were diagnosed with COVID-19 and 1,986 died.

  • RT-PCR tests are being performed on 1,957,454 people in Nepal. In addition, it is said that a mutant species in the United Kingdom has also been found.

ネパール・カトマンズ大学ポカレル教授による最近のネパールの動向

ネパールでは、8月18日から2021年1月9日までの大きな波があり、ピーク時には1日に4,000人を超えていたが、Lock downが当初3月24日から6月2日まで実施され減少したが、インドの各都市から移民していたネパール人労働者が国境をこえて戻ってきたために、8月中旬から感染者数が急増し、再びLock downされ、その後6か月間と徹底的に行われた。その結果、1月22日現在の患者数318人、死亡者数6人と低レベルを保っている。

日本とネパールの違い

  • ネパールでの感染者は、乳児から81歳までの幅広い年齢層にわたっているが、年齢層別にみると、Up to 20 years 22 %, 21-40 years 61 %,  41-60 years 7 % , 60+ years 4 %と日本と比べ程年齢層が多いのが特徴で、小児死亡例も少なくないとのことである。
  • 医療用機材が、当初は入手出来ずに、混乱したそうだが、今は医療用機材や医薬品で困ることはないそうである。
  • 1月22日現在、COVID-19と診断されたのは268,948名で、死亡例が1,986人である。
  • RT-PCR検査は、1,957,454人で実施されており、検査は全て香港のWHOで行われるそうである。なお、英国の変異種も見つかっているとのこと。

Trends in East Asia

Japan has the highest number of infections and deaths among East Asian countries.

I was fascinated by the spread of the infection in the United States and the United Kingdom. I noticed that Japan had the highest number of infections and deaths among East Asian countries.

What is the reason? When I hear the story in Nepal, I feel that the government’s measures were more focused on economic measures than infection measures in Japan.

東アジアの動向

日本は東アジアの国々の中で、感染者数・死亡者数が最も多い国

米国や英国での感染拡大にばかり目を奪われていました。気が付いてみら、日本は東アジアの国々の中で最も、感染者数も、死亡者数も多い国になっていました。

その理由は何なのでしょうか?ネパールでの話を聞いていると、どうも政府の対策が経済中心で、感染対策が後回しになっていた結果のような気がしてなりません。


なぜ、関西圏でCOVID-19死亡率が高い?

2021-1-25

人口10万人あたりのCovid-19での死亡者数は、11月末までは東京都と大阪府が全国平均の2倍以上でした。12月以後、東京都は全国平均よりも低値となっていますが、大阪府と兵庫県では、12月の初め頃から急にCovid-19での死亡者数の報告件数が急増し、首都圏特に東京に比べて異常に増え続けているのにお気付きの方が多いと思います。

吉村知事もこの点については多くを語られませんので、私なりに検討を加えてみました。

まず、関西圏と首都圏で、昨年11月末まで、12月単月、1月1日から24日までの3つの期間に分けて、感染者数・死亡数を人口10万人あたりに換算して比較しました。

大阪の死亡率は東京の2.63倍

人口10万人あたりの感染者数は、東京都に比較し、大阪府では53%、兵庫県は40%と約半分ですが(1月分)、人口10万人あたりの死亡率は、大阪府では2.63倍、兵庫県は2.36倍(1月分)となっています。

高齢化率は大阪が東京の1.19倍

死亡数の大半が高齢者です。65歳以上の高齢化率は大阪府が東京都の1.19倍、兵庫は1.25倍です。首都圏に比べて、大阪、兵庫では高齢者の比率が多少高いとしても、説明がつきません。

高齢者施設や病院でのクラスター発生の要因は?

関西圏では、高齢者施設や病院でのクラスター発生件数が多いのではないかと推察されますが、府県ごとのクラスター発生数についての資料を見出すことができません。

社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な介護保険施設に関しては、都道府県別施設数・定員数の2019年6月の資料がありました。65歳以上の高齢者人口との比率を算出し、大阪府と東京都とを比較してみました。

介護老人福祉施設(特養)の高齢者人口あたりの定員数は、大阪府と東京都でほとんど変わりませんが、介護老人保健施設の定員数はは大阪府が東京都の1.51倍と多く、介護療養型医療施設は逆に東京都が大阪府より1.59倍多いという結果でした。高齢者施設には、これら公的施設以外に、私的な各種老人向け施設があり、都道府県別の詳細な施設数、定員数はよくわかりません。

私が首都圏と関西圏の違いに拘るわけ

5、6年前に、京都帝国大学の初代小児科教授の平井毓太郎先生のご業績を調べたことがあります。https://boy-hajime.ssl-lolipop.jp/2015/11/13/hirai/ ‎ 大正時代と旧い話になりますが、原因不明の「所謂脳膜炎」で死亡した児が関西だけで相次ぎ、その原因が白粉に含まれる鉛中毒であること平井先生らが突き止められました。

習慣化された日常ケアに案外落とし穴が

その後判明したことですが、関東でも、明治27〜28年頃に同様の「所謂脳膜炎」が多数観察されていましたが、明治36年に勧業博覧会を機に、鉛白粉の危険を察知した白粉製造業者は、関東地域では発売を中止しました。ところが、関東以外の地域では含鉛白粉が廉価であり、またなんの規制もなかったことから、その後20年間も使い続けられ、大きな被害をもたらしたという話が書かれていました。今は、新幹線が走り、インターネットで繋がっている時代ですから、地域間差はないと思われますが、習慣化された日常ケアに案外落とし穴が潜んでいるかも知れません。

高齢者施設では普段の感染症対策の見直しを

感染症が流行すれば、今後もクラスター発生が起こります。高齢者施設では、今回の経験をもとに普段からの感染症対策が望まれます。関西と東京都での高齢者施設のちがいにヒントが隠されているような気がします。


年明け早々に、2度目の緊急事態宣言が発令

2021-1-13

昨年末からの、感染患者数の急増をみて、1月7日、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県を対象に、期間は1月8日から2月7日までの1か月間で、緊急事態宣言が発令されました。

緊急事態宣言は昨年4月7日から5月25日までの間以来、2度目となります。さらに、1月13日、緊急事態宣言の対象地域として、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県が追加されました。今回の発令の出し方をみていると、政府はできることなら経済活動を停滞させたくない、緊急事態宣言を出したくないとの想いが伝わってきます。

感染症学が専門でない素人でも、パンデミックの危機管理は一旦後手に回ると、取り返しがつかなくなることは容易に理解できます。欧米の各国が良い例です。SARS、MERSの経験のある東アジアの中国、台湾、シンガポール、ベトナムでは、政府も、国民も感染者ゼロを目標とした施策を取っています。感染者数を減らしたこれらの国々は、決して経済活動が低下していないのです。近年、パンデミック体験のない日本人はどうやら危機管理意識ゼロのようです。

四方を海で取り囲まれ、最も防疫対策を取りやすい日本です。先手、先手の防疫対策を期待します。

東アジアでは、新型コロナ感染者が少なかったが。。。

Googleの新型コロナ全世界統計情報をみると、日本では11月初旬から増加の一途で(図1)、正月明けから感染爆発となりました。1月7日時点の一日感染者数7,563人、累計で26万5千人近くにまで急増し、政府は慌てて1都3県に緊急事態宣言を発令しました。

日本の一日感染者数の推移


以前から、欧米に比べて東アジアではCOVID-19の感染者数が少ないことは謎でした。台湾、ベトナム、シンガポールでは9月以後ほとんど感染者は見られません。

香港でも11月末に小さなピークがありましたが、その後に目立った増加はありません。

ところが、日本だけでなく、韓国でも同じような感染者数の急増が見られています(図2)。


図2. 東アジア諸国の累計感染者数の比較 1月6日現在


台湾、ベトナム、シンガポールには第三波がない

台湾では流行当初より、デジタルデータを活用した、緻密な防疫対策が国を挙げて実践されたことは10月14日付のブログで紹介しました。シンガポールも同様に、政府の強いリーダーシップのもとでCOVID-19を制圧したようです。これらの国々では、恐らく、SARSでの苦い経験が役立ったのでしょう。

コロナを抑え、ワクチンも開発したベトナムの底力

注目すべきはベトナムです。人口9700万人のベトナムは、累計の感染者数1,509人、死者35人(1月6日現在)と、コロナ制圧で特筆すべき国家です。

ネットで検索していると、2020年のGDPも前年比2.91%とプラス成長を達成したベトナムでは何が奏功したのか。というオルタナ副編集長、吉田広子氏の記事が見つけました。

その中に、Vietnam-Japan University客員研究員桂良太郎氏のコメントとして、「ベトナム戦争を経験したベトナム国民は、平和、命の尊さを知っている。社会主義国であることもあり、政府や公的機関からの指示を信頼し、受け止めて行動する風土もある。勤勉な国民性とともに、ベトナム政府の優秀な人材がリーダーシップを発揮したことが功を奏したのではないか」と記載されていました。

ベトナム政府は、世界的にコロナが感染拡大し始めた2020年2月初旬から、強力な防疫措置、外出制限を実施し、その後は全く感染拡大が見られていません。経済面でも、2021年のGDP成長率目標は約6%に設定しているそうです。ベトナムでは、新型コロナウイルス対応ワクチンの開発も進んでいるとは驚きです。

日本と韓国で、なぜ感染爆発が

これまで東アジアの諸国では、欧米に比べてCOVID-19の感染対策が成功していると思われていましたが、日本と韓国では昨年11月から感染者数が増加の一途です。その理由として2つ考えられます。

  • 日本と韓国は緯度の高い地域にあり、気温が低いこと。
  • 感染対策よりも経済優先の政策で、当初より、徹底した感染抑止策をとらなかった。

感染抑止に今も成功している台湾・シンガポール・ベトナムに共通しているのは、政府の強力なリーダーシップ、政府への国民の信頼感がベースになっているようです。

日本は、二律背反する感染対策と経済対策の同時進行を目指すあまり、後手後手の感染対策となり、若者たちの危機管理意識を奪ったことが感染爆発に結びついたようです。