アリ社会と人間社会

新生児医療の盟友、仁志田博司先生からメールで、神戸大学大学院理学研究科の尾崎まみこ名誉教授を紹介されました。今も研究熱心な仁志田先生は、アリの行動とフェロモン・匂いの研究の第一人者である尾崎まみこ先生が、あかちゃんの頭の匂いの科学的解明から、親子の絆形成との関係の研究をされているという情報を提供して下さいました。

桜も満開近くになっていた3月末に、大倉山にある大学付属病院で、発達障害や児童虐待の専門家である永瀬教授にも同席してもらい、尾崎まみこ先生から直接お話を伺う機会を得ました。

クロオオアリの社会では、

クロオオアリは、日本では非常によく見ることができる大型のアリで、日本最大のアリの一種です。クロオオアリの社会では、10〜12mmの大型働きアリ(リーダー)と7〜9mmの小型働きアリ(フォロアー)、それと1つのコロニーにたった1匹だけいるのが、17〜18mmの大きさをした女王アリです。

女王アリは卵を産むだけ

女王アリは、コロニーから外に出ることはなく、毎日卵を産み落とし、仲間の働きアリを増やすのが任務で、仲間の長として政務を司ることはないそうです。

リーダーアリとフォロアーのアリ

働きアリは、女王の世話、卵と幼虫の世話、餌の運搬などの仕事を分担し、リスクの大きい外で餌を探す仕事は大抵老齢のアリだそうです。多くの働きアリは巣の中にとどまり、その中に食料を蓄えるなどの役目を果たしています。
大型のリーダー働きアリは、獲物を見つけると、尾端からフェロモンを出します。その後をフォロアー・アリたちが付いていくそうです。

同じコロニーのアリたちは、固有のフェロモンの匂いを

同じコロニーのアリたちは、固有のフェロモンの匂いをもつことから、他のコロニーの働きアリと識別してコロニーを守っているそうです。(参考:尾崎まみこ著、「アリ!なんであんたはそうなのか」化学同人、2017)

赤ちゃんのフェロモンの研究から平和な人間社会を

いま、ウクライナでは人間同士の激しい戦争が繰り広げられています。日本人も明治までは、日本人同士で絶えず戦を繰り返していました。人間社会でも、リーダーの出す好戦的なフェロモンに惹かれて数多くのフォロアーが戦場へと駆り出されていくのでしょう。

テレビの映像を見ていると、映し出される戦士たちの多くは中・高齢者で、何かアリ社会と似ているような気がします。リスクのある仕事は経験豊かな高齢者向きのようです。それとも、高齢者ほど愛国意識が高まっているのでしょうか。

赤ちゃんのフェロモン、匂いの研究を通じて、平和な人間社会の形成に役立てたいものです。
2022/4/21