子どもの墜落事故を防ぐ

秋本番です。感染症の流行も収まり、注意すべきは子どもの事故です。自宅の窓を開け放し、清々しい空気を取り入れようとする秋に、気をつけたいのがベランダ・窓からの墜落事故です。

最近5年間に、9歳以下の小児が建物から墜落し死亡する事故が37件も発生しています。とくに3~4歳で多くみられます。 年少児ほど体重に占める頭の割合が大きく、墜落時に頭が下になり、頭部外傷が起こりやすく、重症にもなりやすいのです。

事故発生の原因としては、ベランダや部屋の出窓から転落、とりわけ、ベランダや窓際の椅子や不用意に置かれた物を踏み台として、転落するケースが多くみられます。

予防対策としては、1)子どもだけでベランダに出さない、ベランダを遊び場にさせない、2)窓の近くやベランダに踏み台になるようなものを置かない、3)出窓には必ず施錠しておくこと、などに気をつけてください。
2023.9.1.

兵庫県地域子育てネットワーク 10月号

のびしろしかないわ

最近受け取った県立こども病院の情報誌に、難病のために重度障害児になられた娘さんを育てておられるお母さんの「のびしろしかないわ」という寄稿文に、たいへん共感しました。どんなに重度な障害児でも、いつか新しいことが「できる」ことが、ご両親にとって大きな心の支えのように私自身も感じていたからです。

「のびしろしかないわ」は、人気歌手creepy nutsの曲「のびしろ」の中で繰り返し連呼され、若者の間で流行っているようです。お母さんのお気に入りの歌詞は、「もっと覚えたいことが山のようにある」に続いて、「のびしろしかないわ」を繰り返し、熱唱するところだそうです。

また、2020秋に発売されたA.B.C-Z の「頑張れ、友よ! 」の歌詞、

どん底は終わりじゃなくて
始まりさ
「伸びしろ」は無限大
後ろ指さされたら
俺たちゃ未来指差して
走ってゆこう!

の中でも、「伸びしろは無限大」ということばが使われています。「のびしろしかない」は、今の若者たちを元気づけるキーワードのようです。

若者だけではありません。年齢を重ねると、「できなくなる」ことが多いのですが、何歳になっても、新しく「できる」ようになることもあります。私自身の体験でも、最近東灘区の囲碁同好会に参加し始め、確実に上達したのを実感します。90歳の方も元気に打たれています。人間は、亡くなる寸前まで、新しい気づきや「できること」があるような気がします。
2023.8.25.

 

多様性が尊重される新しい時代が

AI技術の進歩は、これまでの人間社会のスタイルを全く新しいもの変えようとしています。人間の働き場を奪うというネガティブなとらえ方もありますが、障がい児・者にとっては、大きなチャンスだと私は考えています。

介護ロボットをはじめ、AIを活用した介護機器がつぎつぎと出現し、うまく機器を使えばこれまで以上にやさしい介護が可能です。また、仮想空間世界(メタバース )という新しいコミュニケーションの場もできています。

自閉的傾向のある児やADHD児は、対面でのコミュニケーションが苦手でも、仮想空間の世界に入ると、他人とのコミュニケーションをスムーズに取れるようになるのです。

新しい社会では、身体的・精神的障がいに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを「多様性」と捉えて、お互いに尊重し合い、一人ひとりの違いを社会の中で活かしていくことも可能です。

振り返ってみると、今日の障害児・者の福祉制度をつくり上げてきたのは、ご家族の声でした。「多様性」を尊重するこれからの新しい時代に向けて、私たち福祉施設の職員は、ご家族の声を大切に、社会に発信していく役割を担っています。

この機関誌「かがやき」が、施設内での生活をご家族に発信するだけではなく、ご家族からのご意見を頂き、お一人おひとりに寄り添える、より充実した入所生活を目指したく思っています。

よろしくお願い申し上げます。

令和5年10月

社会福祉法人「芳友」 会長 中村 肇

機関誌「かがやき」巻頭言より

過去も、未来も身近な感じ

化石から明らかになってきた恐竜史を見ていると、あまりの壮大さに圧倒されます。近年は、出土した化石から、当時の生きた姿を再現するCG化技術が進歩し、広大な草原の中を巨大恐竜が群れをなし、時に恐竜同士の戦う姿を見ていると、とても2億年前という古い過去ではなく、何だかもっと身近な感じがします。

兵庫県は恐竜化石で一躍有名に

丹波市山南町上滝地域には、前期白亜紀(約1億5000万年前から約1億年前あたり)の地層である篠山層群が広がっており、当時の生物の巣穴などの化石(生痕化石)が見られる場所です。
2006年に、巨大恐竜発見の報がもたらされ、日本中の注目を集め、2014年には新属新種「タンバティタニス・アミキティアエ」(通称丹波竜)として記載されました。その後、化石発掘ブームが日本各地で続いています。

丹波竜化石工房HPより

恐竜たちの繁栄と絶滅

約46億年前に地球が誕生し、人類が誕生したのは、ほんの20万年前のことですが、恐竜は、2億3000万から6600万年前までの1億5千万年以上も生存し続けたそうです。
中生代ジュラ紀の2億3000万年前に、大気中の酸素が大幅に減少し、それまで陸上で繁栄していた哺乳類の祖先たちは大量絶滅しましたが、効率の良い呼吸のできる器官「気嚢」をもった爬虫類は生き残りました。
爬虫類の一種である恐竜は、当初小型のトカゲのような形態でしたが、進化を続け、最後には全長10メートルを超える超巨大恐竜として世界各地で生息、地球上の覇者となりました。しかし、6600万年前に巨大隕石の落下で大量絶滅しました。
同じ脊椎動物の四足動物の仲間であるトカゲ類、カメ類、ワニ類などの爬虫類が、環境の変化に順応し、現生しているのも、また驚きです。

写真説明:植物食巨大恐竜デイノケウルスの全身化石から推定されたCG写真。巨大な手と羽毛をもつ。モンゴル・ゴビ砂漠で発見された。NHKスペシャル恐竜超世界より。

2023.8.8.

蝉しぐれ。不快か、快か。

ご無沙汰していました。1ヶ月間お休みをいただきました。

カレンダーは、もう8月夏本番です。夜明けとともに窓から飛び込んでくるアブラゼミの大きな鳴き声が、一番夏を感じさせてくれます。

朝の散歩に出かけると、私は蝉の声に引き寄せられるように樹木に向かいます。頭上から蝉しぐれを全身に浴びていると、暑さを忘れてしまいます。一本の樹に、最低5匹見つけるまで、頭上を見上げています。

蝉の鳴き声は、発達障害や聴覚過敏の子どもには大きな不安を与えるという米国の小児科医の話があります。また、難聴のある方では、いつも耳元で“ジー”という蝉の声に似た音が、耳を塞いでも1日中鳴っているそうです。

「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」

この句は、松尾芭蕉が山形県の立正寺に立ち寄った時のもので、山寺で“蝉の声”を聴きながら「閑さや」と、実に不思議な句です。芭蕉自身がこの世とは思えない、とても静寂な空間に引き込まれて行く様子を表したもので、何も聞こえない無の世界、つまり芭蕉が己の心の中を見つめているのであろうと推察されています。

私はまだまだ無の世界に入るほどの境地に達していませんが、真夏の蝉しぐれは、小さい時から私の心を癒してくれます。

2023.8.1.