湯田温泉・萩への旅

寒波の中を、山口へ2泊3日の旅に出かけてきました。
湯田温泉は豊富な湯が湧き出し、駅には足湯場があり、町中に数多くの旅館が立ち並んでいます。
リーゾナブルな国家公務員共済組合の旅館、KKR山口あさくらは、自家泉源を有し、豊富な湯量で露天風呂はとくに快適です。

萩に路線バスで向かう

今回の旅は湯治が目的で、観光の予定は立てていませんでしたが、コンシエルジュの勧めもあり、翌日の朝から松下村塾のある萩に路線バスで向かいました。連なる峠道を越え、道中雪が降り始めましたが2時間ほど要して萩に着きました。
バスで乗りわせた地元の女性の勧めで、萩・明倫学舎前で下車しました。
強風の中を二人でヨタヨタと歩いていると、まるでイシグロ・カズオの小説「忘れられた巨人」に登場してくる老夫婦そのものです。

バス停からすぐのところにある藩校明倫館跡に、日本最大級の木造校舎旧明倫小学校があり、世界遺産「明治日本の産業革命遺産」を紹介するビジターセンターや「幕末ミュージアム」などがありました。

吉田松陰と松下村塾

松下村塾といえば吉田松陰が有名ですが、もともと創設したのは松陰の叔父である玉木文之進という人物が開いた長州松本村に開いた私塾です。塾名の由来は「松本村の塾」という意味だそうです。

幼いころの松陰は、彼のもとで学びました。わずか9歳で才能を認められて、藩校である明倫館の師範に就任したと言います。しかし1854年にペリーが来航した際、黒船に乗り込んでアメリカに密航しようとしたため、長州で収監され、翌年以降は実家である杉家で謹慎処分となってしまいました。その建物は松陰神社に現存しています。

その後、吉田松陰は1858年から59年に起きた「安政の大獄」で、老中首座の間部詮勝(まなべあきかつ)の暗殺を計画した罪で斬首刑になります。そのため彼が実際に塾生に教えを施していたのは2年あまりに過ぎません。

松下村塾の教育とは

長州藩の藩校である明倫館が武士しか入校できなかったのに対し、松下村塾は身分の低い足軽や中間、農民たちも学ぶことができました。そのため従来の教育機関では学ぶことのできない人々が松陰の下に集まり、そのなかから伊藤博文や山県有朋などが輩出されることになります。

いわゆる時間割は存在せず、松陰が各地で学んだ儒学や兵学・史学など多岐にわたるテーマが扱われました。授業形式も特徴的。ただ講義を聴くだけでなく塾生同士の討論が積極的に取り入れられ、時には塾生が講義をすることもあったそうです。

至誠通天

この吉田松陰が好んで用いた孟子の言葉があります。
「誠は天の道なり。誠を思うは人の道なり。至誠にして動かざるものは、未だこれ有らざるなり」という言葉です。
誠に背かないようにつとめるのが人の道であり、誠を尽くせば、それに動かされないものはない、という意味です。これを4文字で簡潔に表した言葉が「至誠通天」という言葉です。
この言葉は、私自身の「座右の銘」にさせていただきました。

長州ファイブ

幕末には日本から自由に西洋に渡ることは難しく、攘夷運動を推進していた長州藩士の洋行は至難の業でした。その中で、1863年5月に命がけで5名の長州藩士が技術を学び「生きた器械」となるべく、イギリスへ密航したのです。

「長州ファイブ」と称されるこの5名は、伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三であり、井上勝、遠藤、山尾が技術官僚となります。当時は、鉄道敷設や電信架設など近代化事業を政府が直接担当しており、西洋に由来する技術の進化を官僚が担い、「明治の技術官僚」として彼らは大きな役割を果たしたのです。
山口の街の至る所に「長州ファイブ」のポスターが貼られていました。

2022.12.18.

国民に夢を与える「こども家庭庁」に

子どもを増やす方向ではなく、子育て環境の充実を

来年4月発足を目指す新官庁「こども家庭庁」は、子育て支援や少子化対策を担当するということですが、初年度にあたる23年度予算の概算要求額は4兆7510億円です。
同庁に移管する厚生労働省や内閣府などの関連部局の22年度当初予算の合計と比較し600億円程度増えるだけです。
子どもを増やす方向ではなく、1人あたりの教育投資の重視など子育て環境の充実に向けた夢のある施策を打ち出してもらいたいものです。

子育て支援・教育関連の公財政支出の低い日本

2022年の出生数は80万人を下回りそうです。2017年の子ども関連支出の国内総生産(GDP)比は1.8%、先進国平均を大きく下回っています。GDPに占める教育に関する公財政支出(2017年)は、初等教育から高等教育まででOECD平均は4.9%、最も比率の高いノルウェーの6.7%に対して、日本は4.0%と低いのです。

防衛予算よりも子育て環境の充実を

我が国の防衛予算は今の対GDP比1%から、5年後には2%への倍増に関心が高まっています。これまで何度か防衛予算増が話題になりましたが、立ち消えになってきました。
戦後教育1回生の私の脳には、戦争放棄という新憲法の条文が今も鮮明に刷り込まれています。

保育士配置基準の見直しを

2015年度の見直しで、0歳児3名につき保育士1人、1,2歳児は6名につき保育士1人、3歳児は20人に1人、4,5歳児は30人に1人の保育士配置が国の基準となっています。どの年齢でも「おおむね」の人数とされていますので、この基準を元に都道府県が保育士配置基準を定めています。

子育て家庭で幼児3人育てるのは大変です。保育園では他人の子を育てるのです。そのストレスは計り知れないものがあります。いろんなトラブルがあっても何の不思議もない気がします。配置基準の見直しと国家的な予算措置を期待します。
2022.12.12.