中国のNCPとSARSのRo(基本再生産数)と比べて今の日本は

Liuらの論文に比べて、今の日本は?

今後の流行を占う上で、Rt値、doubling time が一つの指標になると考えられており、武漢では、12月29日に第一例が出て以来1月12日まではOutbreakは見られていませんが、その後急激に増加しており、Ptが6以上、Doubling timeは2.8日です。

日本の現状を見ると、3月21日現在、患者数が1,060人、死亡37人、直近3日間の患者数は131人です。武漢ほど急峻ではありませんが、トレンドとして決して減少しておらず、予断許さない事態であることが理解できます。


NCPとSARS時症例のDoubling times, Ro(基本再生産数)

Time-varying transmission dynamics of Novel Coronavirus Pneumonia in China.  By Tao Liuら:Guangdong Provincial Institute of Public Health, Guangdong Provincial Center for Disease Control and Prevention, Guangzhou, China


中国全土でのNCPの時変的な感染動態を推定し、SARSと比較することを目的とした研究成果です。2020年2月7日現在、中国では34,598のNCP(Novel Coronavirus Pneumonia)症例が確認され、2月4日以降、毎日確認される症例は減少した。これらの症例を対象にした研究です。その結果、

  • NCPの倍増時間は全国(2.4日)、武漢(2.8日)、で、SARS時の広東省(14.3日)、香港(5.7日)、北京(12.4日)のよりも短かった。
  • 全国および武漢のNCP症例のRo(基本再生産数)はそれぞれ4.5および4.4であり、SARS時の広東省(Ro = 2.3)、香港(Ro = 2.3)、および北京(Ro = 2.6)のRoよりも高かった。因みに、インフルエンザのRo は2-3とされている。

結論:NCPはSARSよりも高い感染率を持ち、アウトブレイクを封じ込める努力が効果的であった。ただし、経時的に変化する基本再生産数を1.0未満に抑えるには、以後も努力を続ける必要がある。

図2. 全国、武漢、広東省で確認されたNCP症例の時間的分布

パネルA:全国のNCP症例。 パネルB:武漢におけるNCP症例。 パネルC:広東省で確認されたすべてのNCP症例。 パネルD:広東省における二次NCP症例。赤棒グラフ:日別発生数、青棒グラフ:日別予測数、赤折れ線グラフ:累積患者数。

全国、武漢で2月4日以後は患者数が減少し始めている。

図3. NCPの時変再生産数(Time-varying reproduction number, Rt)

全国 武漢

時間軸は上の図と一緒。

表1. 全国、武漢、広東省で確認されたNCP症例の特性