なぜ、医療者にCOVID-19感染が多い?

兵庫県だけでなく、和歌山県や大分県のようにOutbreak には医療機関が発端になっていることが少なくありません。しかも、医師や看護師が数多く感染しています。この現象は、中国武漢でも、韓国でも見られました。2002年のSARSが流行した発端者も医師であったと言われています。

医療者はみんな感染症対策の専門的なトレーニングを受けているのに、なぜ罹るのか一般人には理解できないようです。医療者にCOVID-19感染が多い理由を考えてみました。

  • 医療者のガードが甘くなっている?

中国、シンガポールではSARSの流行を、韓国ではMERSの流行を21世紀に入ってから経験しており、対処も迅速に行われていますが、新型ウイルスの流行に遭遇するのは日本国内では初めての経験です。この差が、政府、専門家、国民だけでなく、医療者自身の危機意識に油断があったのも事実でしょう。私が小児科医になった昭和30年代には、ポリオ、結核、赤痢、腸チフスの流行がまだありました。

  • 無症状、軽症者と無防備な接触が?

COVID-19感染者では無症状、軽症であることが多いので、全く病識を持たない患者が受診する可能性が高く、また医師が初期に疑いを持っても迅速に検査を行えない状況にあったので、診断が遅れ、十分な防備もなく対応していたツケが、医療者に回ってきたように思える。

  • 病院の防疫体制に問題が?

今回は重症になるまで診ないという一貫した国の方針が、医療混乱をこれまで回避できたが、一方で軽症者が、複数医療機関を受診するという事態も招いており、検査もしないので感染状況の把握もできていません。

地域の基幹病院ですら、マスク、手袋、ガウンの十分な配布がないそうで、感染防御に対するモチベーションの低下を招いているように思えます。3月19日の専門家会議では、いつオーバーシュート(爆発的な感染拡大)が起こっても不思議ではない。というコメントがいきなり出されたが、恐らく医療現場では対応策に苦慮しているのではと案じています。行政では収容ベッド確保に躍起ですが、中国、イタリアでも一番の問題は医療者の確保です。不安です。

オーバーシュートが起こらないことを、後輩の医師たちが安心して医療ができることを念ずるのみ。備えあれば、憂いなし。


    2020/3/23