高校3年時の文集「がらくた」から

高3の時のクラス10組での文集「がらくた」を、岩崎君が各人の分をわざわざ電子ファイルにしてくれました。60年以上昔のことで、自分が書いたことをすっかり忘れ果てていました。高校時代を振り返ってみると、国語が最も苦手な科目で、この文章をみても納得のいく気がします。タイトルは、美術の得意な吉井さんが描いて下さったものと思います。

このクラスは今も団結力が強く、年に2回の昼食会には十数名が集います。

2024/3/19

希望に満ちた春

桜花爛漫、真っ新の制服、ランドセルを背負う少年少女たちは、希望に満ち溢れています。彼らがどのような成人になってくれるか周りの大人にとっても楽しみです。

昨年は、将棋界では藤井聡太さんが21歳という若さで8冠という偉業を達成、囲碁界では仲邑菫(なかむら・すみれ)三段(13歳)が史上最年少のタイトル獲得者になりました。近年、囲碁・将棋に限らず、スポーツの世界でも、小・中学生の活躍が目立っています。彼らの活躍の陰には、両親や身近な人々の中にお手本になる人たちがおられます。と同時に、昔は弟子入りして師匠から時間をかけて学んでいたのを、いまは、AIで学習し、より迅速に上達するようです。

今の少年少女たちは、絶えずスマホを握っています。モデルになる大人が彼らの周りにいなくても、ネットを通じていろんな情報収集が可能です。AI開発やプログラム作成などの情報処理分野をはじめ、自らで研鑽を積み、日本人から優れた人々が生まれてくるのが楽しみです。 2024.3.10.

子どもの健康コラム

「医師の働き方改革」で思うこと

「働き方改革関連法案」が2018年春に成立、2019年4月1日以降、法人は従業員に対して年5日の年次有給休暇を取得させる義務が発生しました。加えて、関心が高かったのが、長距離輸送のドライバーと医師の働き方です。

来月から勤務医の残業規制

いよいよ来月から勤務医の残業規制が始まることになっていましたが、今朝の神戸新聞によると、年間残業時間の上限が960時間とされていたのを、県立病院をはじめとする多くの病院では、2035年までの経過措置として1860時間とする上限特例指定を行うとの報道でした。人によっては、残業時間が延長する場合もあるかもしれません。
間際になって上限を倍増するなんて。この5年間一体何を考えていたのか疑いたくなります。というよりも非現実的な数字を示す法律をつくった側に問題がある気もします。さらに、法規制を頑なに遵守している労働基準監督署の動きと何か矛盾を感じざるを得ません。

では、医師は1日換算で何時間働くことになるのか?

2024年に土日は年間104日あります。 また、土日と被らない祝日・振替休日は14日あります。多くの職場では、土日祝日および振替休日を公休日と定めているので、最低でも年間休日は118日になります。労働日数は残りの248日です。つまり、労働日数を基にした1日換算での残業時間7.5時間という大きな数字を、上限にしようというのです。

働き方改革は若者のInitiativeで

若者にとって残業時間は貴重な収入源であり、欠かせぬものです。「働き方改革」に若者の声が聞こえて来ないのは、若者一人一人が異なる生活環境にあり、また考え方が異なり、纏まりにくいからでしょう。近年、一般企業においては、労働時間を遵守し、残りの時間は自らのスキルアップのために自由に使え、副業も認められるようになっているそうです。

これだけAI化が進んだ世の中です。私が期待するのは、患者さんの前でキーボードを叩たり、煩雑な書類づくりに時間を使うのではなく、多職種の活用と業務の簡素化を遂行し、病院内にいる間は患者さんと正対した業務に専念し、17時には次の勤務者に仕事を委ね、病院を去るのが当たり前の毎日となることです。主役である今の若者たちの主張を知りたいものです。2024.3.12.

 

リハビリテーションは現代医療の潤滑油

私は、80歳を過ぎて度々入院・手術を繰り返しています。その度に、痛む傷口を庇いながら、歩行練習の手助けをしてくれたのが理学療法士です。医師や看護師の視線は絶えず傍のパソコン画面を向かっています。その点、どのセラピストの方々も、温もりのある手で私の身体に触れながら、ゆっくりとした口調で話し相手になって下さいます。

最近、体調も回復し、再び障害児の神戸医療福祉センター「にこにこ」に顔を出す機会が増えました。センターには、脳性麻痺児の筋力強化訓練・関節可動域訓練・歩行訓練など大きな動作訓練を行う理学療法士だけでなく、病気や障害のある人々の日常生活を支援する「作業療法士」と「言語療法士」がいます。

作業療法士の役割は、小児の発達障害や精神障害者の支援、高齢者や認知症のリハビリテーション・介護予防などを目的に、日常生活動作訓練や感覚情報処理能力訓練、コミュニケーション行動訓練など広きにわたっています。

言語療法士は、言語訓練だけでなく、摂食・嚥下訓練などを担当し、日常生活動作機能の向上を目指しています。

リハビリは、1日に40分間、1〜2週に1回を、3か月間行うのを1クールと呼んでいます。多くの方はこのクールを数回繰り返し行っておられます。この間、セラピストは、ご家族に自宅での訓練方法を伝授し、より効果が上がるように努めています。

40分という時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。治療ごとに実施記録や実施報告書を書かねばなりません。いま、私は職場の仲間と一緒に、書類作成はAIに任せて、セラピストがゆっくりと患者さまに向き合える時間を保てる工夫を行なっています。   2024.3.9.

大震災とペットたち

長年保護犬活動に勤しんでいる従兄妹から、今年の元旦の能登半島地震におけるペット犬のレスキューの模様を知らせるメールが届きました。そのメールを読みながら、阪神大震災の折の愛犬Bucciのことを思い出しました。

第1話 いつも夜は玄関で寝ています。大きな揺れが収まり、しばらくすると、暗闇の中で、かすかに足音がします。なぜだか、声をかけると反対方向に走り出す習性があるので、道子が大声を出さずに、一歩一歩瓦礫を踏みしめながら近づき、何とか胴輪をつけることができました。
我が家の周囲は激甚地帯で、しばらくの間飼い主を探し求める犬たちが通りを彷徨っていました。その中に、チャウチャウ犬がおり、うちの犬ではないかと教えてくださった方もいました。

第2話 犬も大きな恐怖を感じたようです。それまで、あまり人に擦り寄るのを好まなかった気位の高い性格でしたが、震災後には家人の側から片時も離れようとしなくなりました。犬もPTSD障害があるようです。

第3話 全身がノミだらけに。我が家は全壊だったので、病院に近く空き家だった道子の実家に疎開しました。ここでも、近隣は全て倒壊し、その中を毎日散歩していました。
ある日、Bucciの耳たぶにのみがいっぱい群生しているのに気づきました。絨毯に落ちたノミが10cm以上高飛びするのを見つけました。
ノミ退治には、薬の散布よりも、浴槽に犬をしばらく浸けておくのが一番です。初回には、水面いっぱいにノミが浮かんできました。いなくなるまでに、4〜5回の入浴が必要でした。

第4話 住処を失ったのは、犬だけではありません。いつも巣を作っているツバメたちも、家屋が倒壊しており、必死に探し求めている光景に出会いました。彼らはどこかで新しい巣作りを初めていたことでしょう。 2024.03.08.

これは震災前年の1994年の年賀状です。

いま再び安全神話が・・・

年初の羽田空港の衝突事故、トヨタ自動車のグループ会社であるダイハツ工業や豊田自動織機なで相次ぐ認証試験の不正の報道をみていると、何だか昭和末期のインターネットが普及し始めた時代が思い浮かびます。全国の大学病院での医療事故がつぎつぎと明るみに出、マスコミで大きく報道されました。私もその矢面に立たされた一人です。

学んだのが航空界のインシデント報告

私たちが当時安全対策のモデルにしたのが、事故につながりかねない事態を示す航空インシデント報告制度です。事故に至るまでに、その数十倍ものニアミス例が必ずあると学びました。大学病院では、当初は報告をためらっていた職員も、ペナルティーに関係しないことが周知され、毎日10件以上の報告が上がってくるようになりました。
わかったことは、インシデントの大半が聞き間違い・勘違いやコミュニケーション不全に基づくものでした。

歪なIT化が安全を脅かしている

日本が誇る世界一の大企業、トヨタでなぜ認証試験の不正が行われていたのか?問題なのは外部の声を聞き入れない、互いに干渉しないという大企業のもつ「文化」が、長年にわたる認証試験の不正を許すことになったと私は考えています。

これらの不正を見抜くには、AIを用いなくても、旧来のIT技術で十分に可能です。新しい製品開発にはIT技術を活用するが、安全管理への活用を後回しにしている今の社会風潮がこのような結果を生んでいる気がしてなりません。参照;PDCAは時代遅れ? 2023.12.25.のブログより

医療界も他人ごとではありません。

全国津々浦々、中小の病院にも電子カルテが導入されています。電子化は、病院の経営戦略を練るには格好のツールです。でも、医療現場で働く職員は大変です。紙に書くと直ぐなのに、パソコン相手にアナログデータを手入力。何だか違和感を感じます。中途半端なデジタル化、デジタルとアナログの混在が、重大事故につながらないことを念ずるのみです。

2024.2.2.

 

 

 

 

 

 

 

伊達正宗公の五常訓

20年近く前に、仙台を訪れた際に、立ち寄った松島にある瑞巌寺で、「伊達正宗の五常訓」を書き記した額を買い、我が家に壁に掲げています。

仁に過ぐれば弱くなる。
義に過ぐれば固くなる。
禮(れい)に過ぐれば諂(へつらい)となる。
智に過ぐれば嘘をつく。
信に過ぐれば損をする。

伊達政宗は、戦国末期の安土桃山時代から江戸初期にかけての武将。米沢城主であり、のちの仙台城主です。幼少のころに疱瘡(天然痘)の毒が入って、右目を失明したと伝えられています。

この政宗公の遺訓は、は、儒教の基本的な”五つの徳目「五常」”をさし、孔子が「仁と礼」を説いた後、孟子が「仁義礼智」の四つを説きます。その後、漢の蕫仲舒(とうちゅうじょ)が、これに「信」を加えて、「五常」になったそうです。

現代人に当てはめて考えてみると、何事にも「ほどよく」行動するのが苦手な感じがします。その根源はマスコミ報道に由来している気がします。単純化しないと読者の興味を引かないために、ワンパターンの偏った論調になりがちです。世間と反対意見を述べれば叩かれる、非民主主義社会に成りつつあるような気がしてなりません。

2024.1.30.

4年ぶりの同門会に出席して

先週末に、神戸大小児科の現役・OBの集いである同門会がありました。実に4年ぶりの再会です。出席者は、100人余り、今春から入会する気鋭の若手医師から全国各地で活躍している幅広い年代層の集まりです。もう私より年長者は、お一人だけでした。

会合への初見参の若手医師たちの自己紹介で、その輝かしい目の輝きを見ていると、これからの日本の小児医療も安泰であるという思いを強くしました。頼もしい限りです。気掛かりなのは、多忙な勤務に追われている中間世代の出席者が少なかったことです。

同門会員の大半は、地域小児医療の最前線で活躍している小児科医です。現在兵庫県小児科医会の会長として活躍しておられる藤田先生が、「今後の小児医療のkeywordとなるのが、bio-psycho-social well-beingとCommunity Pediatrics」とスピーチされたのが印象的でした。

日本の2023年度の出生数は70万人になり、ますます減少し続けます。だからこそ、生まれてきた子一人一人が、健康に育つように我々小児科医の役割がますます重要になっているのです。

2024.1.29.

 

寒中お見舞い申し上げます。

厳しい寒さに向かう折ですが、いかがお過ごしでしょうか。
新年早々の能登半島大地震の揺れ、阪神・淡路大震災がフラッシュバックされました。

道子が亡くなり、はや4か月が経過しました。あらためてみなさまの生前のご厚情に対して深く感謝申し上げます。さる21日には、息子・娘・孫たちの立会いのもと、尼崎市如来院の墓地に、お骨納めも無事に終了しました。

私にとっては、1か月足らずでしたが、高齢者施設で共に過ごせた時間が、大切な思い出になっています。今は、自宅に戻り、買い物・料理にもなれ、娘透子が傍にいてくれるために、元気に生活しております。

新型コロナも第5類になったために、外出が容易となり、月2回の神戸しあわせの村にある障害児者福祉センター「にこにこ」の役員会に出席し、神戸大学の友人の誘いで週2回の東灘区民ホールでの囲碁同好会に、最近増えてきた友人とのお食事会にと退屈せずに過ごしています。

みなさまのご健康、ご多幸を心よりお祈り申し上げます。

2024.1.23.

阪神・淡路大震災で学んだ子どものこころのケア

新年早々の能登半島地震による揺れ、思わず阪神・淡路大震災を思い浮かべました。PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が、広く知られるようになったのが阪神・淡路大震災の時です。

大災害が子どものこころに大きな影響を与えるのは、災害の正体が分からず、また、自分で対処できる範囲も限られているため、余計に不安になっているからです。

怖い体験や喪失体験(親しい人との別離、住居の破壊、生活環境の変化、おもちゃ・人形の紛失など)あるいは、長期にわたる避難生活は、子どもにとって強い苦痛となり、身体症状や行動上の問題として表われます。

これらの反応そのものは、誰にでも認められるものですが、その苦しみが少しでも和らぐよう、適切な時期に、的確に支援することが必要です。思い出すのは、学校が再開され、クラスメートと久方ぶりに出会ったときの子どもたちの満面の笑顔です。一番の良薬だったようです。

2024.1.17. 連載「子どもの健康コラム」原稿