PDCAは時代遅れ?

政治資金や企業のリコールなど、つぎつぎと明るみに出ています。これらは、日本の社会構造そのものの歪みのような気がします。2000年代初めにも、品質管理の重大性が社会問題になり、その折に、品質管理の権威といわれる米国の統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミングが1950年代に提唱した、マネジメント品質を改善するためのフレームワーク「PDCA」の重要性が指摘されました。

「PDCA」の意味とは?

「PDCAサイクル」は、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)という4つの業務プロセスで構成されており、P(計画)からA(改善)までが1サイクル。A(改善)まで進んだら再度P(計画)に戻ります。このPDCAサイクルを回し続けていけば、継続的に業務が改善され、自ずと業務の効率化や業績の向上をもたらすことができるという考え方です。

私自身も、「PDCAサイクル」の考えに共感し、研究面で、病院運営面での基本的な考え方として、当時取り入れていました。学生時代に読んだ、毛沢東選集「実践論」・「矛盾論」の考え方にも通ずるものがあり、納得がいくものでした。

PDCAサイクルは時代遅れ?

最近、「PDCAサイクル」という言葉を耳にし、目にすることがほとんどなくなりました。私には、この考えは当たり前で、今更話題にする必要がなくなったと解釈していました。

ところが、ネット上での記事を読んでいると、この考えは「古い」・「時代遅れ」と書かれているのを見て、驚かされました。「時代遅れ」の理由としては、高速に変化する時代の流れに合っていない、枠組みやルールを超えた新しいアイデアが出にくい、形骸化しやすいなどが上げられています。

PDCAサイクルの肝は、評価・チェックなのに

PDCAサイクルを回す際は、施策の評価・チェックが不可欠で、これには時間がかかり、評価・チェックを行っている間に状況が変わることが少なくありません。業務改善策として有効なPDCAサイクルですが、これに当てはめて行動していると、計画を中断することができず、状況が変化したとしても、すぐに実行するのが難しいというのが理由のようです。

いま相次ぐ企業のリコールや政治資金問題は、決して一部の企業、政治家の問題ではなく、品質管理を軽視する現代社会の風潮によるものであることがよくわかりました。人のいのちに関係する医療の場では、今一度、原点に立ち戻ってみては。2023.12.24.