胸部CTはRT-PCR検査よりも感度がよい

COVID-19の1,014症例の解析から

 Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases. Tao Ai *, Zhenlu Yang *, Hongyan Hou, Chenao Zhan, Chong Chen, Wenzhi Lv3, Qian Tao, Ziyong Sun, Liming Xia     *Department of Radiology, Tongji Hospital, Tongji Medical College, Huazhong University of Science and Technology Wuhan, Hubei, 430030, China Radiology. 2020 Feb 26:200642.


中村のコメント:

RT-PCRアッセイは、COVID-19の診断に特異的ではあるが、その感度が低く、False positiveが出やすいと指摘されている。この論文は、COVID-19の診断において、RT-PCRアッセイと胸部CT検査所見との一致性を調べた論文です。結論として、胸部CTイメージング法は​​COVID-19の診断により高感度であることから、疾患の検査前確率が高い流行地域では、COVID-19のスクリーニング、包括的な評価、およびフォローアップには胸部CTが有用と述べています。

胸部CTがRT-PCR検査よりもウイルス感染を高感度で迅速に検出できることは、ウイルスの拡散をより適切に制御するのに役立つと考られます。我が国のように、RT-PCR検査を迅速にできない地域では、胸部CTをもっと活用したスクリーニングが行われてもいいのではないかと思います。

因みに、近年の日本では、高齢化の進展により肺炎による死亡者数が増加しています。2016年における肺炎死亡者数(男女合計)は119,300人に達し,死亡総数:1,307,748人に占める割合も9.4%、インフルエンザによる超過死亡者数は2018/19シーズンは3,276人となっています。胸部CTを使ったCOVID-19の死亡数はどうなのでしょう。


論文の要約

COVID-19の診断において、RT-PCRアッセイと比較して、胸部CT検査所見との一致性を調査した論文です。調査は、2020年1月6日から2020年2月6日まで、中国・武漢同済病院で新型コロナウイルス感染症の疑いで胸部CT検査とRT-PCR検査の両方を受けた患者1014人です。

患者1014人のうち、59%(601/1014)がRT-PCR陽性であり、88%(888/1014)が胸部CTスキャンで陽性を示した。COVID-19の診断において、RT-PCR結果を基準にすると胸部CTの感度は97%(95%CI、95-98%、580/601患者)。 RT-PCRの結果が陰性でも、胸部CT所見陽性者が75%(308/413)いる。この 308例のうち、48%は臨床症状および胸部CT所見からCOVID-19である可能性が非常に高い症例と、33%が可能性の高い症例です。

RT-PCRを4日以上の時間間隔で複数回施行した患者(258例)において、初回陰性から陽性に転じるまでの期間は平均5.1±1.5日、初回陽性から陰性に転じるまでの期間は平均6.9±2.3日でした。胸部CTでCOVID-19陽性所見の確認が、初回RT-PCR陽性と同時またはそれよりも早かった症例の割合は、サブグループにより差はあるものの60~93%でした。一方、RT-PCRが陰性に転じる前に胸部CTで改善が見られた症例は42%(57例中24例)でした。

結論として、胸部CTイメージングは​​COVID-19の診断にRT-PCR検査より高感度である。特に、流行地域においては、COVID-19のスクリーニング、包括的な評価、およびフォローアップのために胸部CTをも考慮する必要性を指摘している。


  2020/3/11