老子の説く理想の国『小国寡民』

小さい国は人口が少なく、いろいろな器具があっても使わせない。

人民に命を大切にさせ、遠くに移り住ませない。たとえ小舟と車があっても、

それに乗ることはなく、武器や鎧があっても、並べて使用することはない。

二千数百年前に書かれた『老子』という書物は、具体的な人名や地名がまったく現れない、抽象的な議論に終始した内容であるにもかかわらず、長い年月にわたって東アジアの人々の思考の指針であり続けてきました。

それはこの書物の内容の深さと広さとの証明であります。また、欧米の知識人の興味を強く惹きつけ、そのキーワードである「道(タオ)」という言葉は広く流通しています。世界全体を見渡せば、『老子』は『論語』よりもはるかに広く読まれ、大きな影響を与えています。

『老子』の思想の根幹は、その動的な世界観にあります。つまり、世界のいかなるものも、動かないものとしてではなく、生まれ、変化し、滅ぶものとして理解させます。

そしてそれを、固定した動かし得ないものと思い込んでしまうことの危険性を、さまざまな角度から指摘し、粘り強く繰り返し、叱咤激励します。

参照:湯浅邦広著、超入門「中国思想」、大和書房、2016.

2023.11.10.