蝉しぐれ。不快か、快か。

ご無沙汰していました。1ヶ月間お休みをいただきました。

カレンダーは、もう8月夏本番です。夜明けとともに窓から飛び込んでくるアブラゼミの大きな鳴き声が、一番夏を感じさせてくれます。

朝の散歩に出かけると、私は蝉の声に引き寄せられるように樹木に向かいます。頭上から蝉しぐれを全身に浴びていると、暑さを忘れてしまいます。一本の樹に、最低5匹見つけるまで、頭上を見上げています。

蝉の鳴き声は、発達障害や聴覚過敏の子どもには大きな不安を与えるという米国の小児科医の話があります。また、難聴のある方では、いつも耳元で“ジー”という蝉の声に似た音が、耳を塞いでも1日中鳴っているそうです。

「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」

この句は、松尾芭蕉が山形県の立正寺に立ち寄った時のもので、山寺で“蝉の声”を聴きながら「閑さや」と、実に不思議な句です。芭蕉自身がこの世とは思えない、とても静寂な空間に引き込まれて行く様子を表したもので、何も聞こえない無の世界、つまり芭蕉が己の心の中を見つめているのであろうと推察されています。

私はまだまだ無の世界に入るほどの境地に達していませんが、真夏の蝉しぐれは、小さい時から私の心を癒してくれます。

2023.8.1.