私のお正月2021

元旦の朝、目を覚まし、寝室のカーテンを開けると、年末からの寒波で薄っすらと雪を被った六甲山頂が、新年の朝日に映えて美しく輝き、市中が新型コロナ禍にあるのが信じられない、素晴らしい眺めでした。

山頂に聳える電波塔が、何か観音像のように見え、思わず手を合わせ、1日も早いワクチン接種、新型コロナ終息を祈願しました。

年末年始はお静かにという国や県の求めに応じて、例年なら近郊のホテルに家族が集い、賑やかに過ごす正月ですが、夫婦二人きりでの静かな正月も新鮮でした。半世紀以上にわたり寄り添えたことに感謝し、互いの健康を願い、雑煮を頂きました。

元日の夜は、ZOOMによる家族新年会です。4家族の集まりで、最初はどうなるかと心配でしたが、流石に孫たちはWeb会議に慣れており、巧みなカメラワークと会話で盛り上がり、最後には息子家族がバイオリン・ギターのおうち演奏を披露してくれました。アンコールには、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団のNew Year Concertと同じように、ヨハン・シュトラウスの「ラデツキー行進曲」で締め括られました。

何もかもが、新しいスタイルのお正月です。感染終息の暁には、これまで経験したことのない新しいスタイルの生活、素晴らしい世界が開けるのが楽しみです。

2021-1-3


 

子どもは赤ちゃんに興味をもつ

小学4年の孫娘によると、自分が読んだ本の中から、友達にすすめたい本を紹介する学校の授業があったそうです。読書好きの孫娘は、新型コロナ流行による休学期間中に、手当たり次第に家にある本を読んでいたようで、私が3年前に出版した「赤ちゃんの四季」を見つけ、読後感想文を提出したそうです。担任の先生の花マル入りの文を持ち帰り、私にも見せてくれました。

そこには、「赤ちゃんの大切さがよく分かりました」とか、わたしが好きなところは「赤ちゃんが母親のまねをするのがかわいい」、「命の大切さ」をとても考えさせられる本でしたと書き綴られています。

エッセイ集「赤ちゃんの四季」は、兵庫県予防医学協会の季刊誌「明日の健康」に2000年から20年近く連載しているコラムを1冊にまとめて出版したものです。私は、新生児医療を専門にした小児科医なので、近年の脳科学の進歩により明らかになってきた赤ちゃんの脳の特徴や興味深い行動、母と子の関係性などを中心に、四季折々の子どもの話題を取り上げてきました。

育児の話をするときには、「五感」や「共感」を司る脳に良い刺激を与える大切さを強調してきました。とりわけ、AI・ロボットが進化した近未来社会では、幼少期に体験する「五感」と「共感」こそが、人間らしさの原点と言い続けています。

小学生の孫娘が「赤ちゃん」に関心を寄せたことは感激でした。昔は、兄や姉が学校から帰宅すると、赤ちゃんを背負って遊ぶ姿をよく見かけましたが、少子社会の今では赤ちゃんに直に触れる機会がほとんどありません。

学校の授業として保育園を訪れ、赤ちゃんに触れ、赤ちゃんのもつ不思議さ・可愛らしさを小さい時から体験し続けることが、人間らしさを持続する社会には不可欠です。

2020-12-25

ポストコロナ社会への期待  ー デジタルで共生社会がー

ポストコロナ社会は、テレワークとデジタル化というだけで、一体どんな社会が待ち受けているのか、多くの人はよくイメージできずにおられるのではないでしょうか?

人間の仕事が、AIの活用やロボットに奪われるのではないかという不安、あらゆる個人情報が国や企業に一括管理され、個人の守秘性がなくなるのではという不安感をお持ちの方も少なくないと思います。

オードリー・タンさん曰く、デジタル空間は無限の可能性を持つ

新型コロナ流行当初にデジタルを活用し、マスク在庫状況をはじめ感染状況の可視化で、流行を最小限に抑えた、台湾のデジタル担当閣僚オードリー・タン氏の卓越した能力の報道に驚かれた方は多いと思います。

LGBTである彼女は、16歳で女性となりました。学校は中学までしか行かず、独学でプログラマーとしての実力をつけ、19歳で渡米し、アップル社においてSiri開発の立役者となりました。タン女史は1981年生まれ。ミレニアル世代のトップランナーです。

ミレニアル世代が新しい時代をリードする

ミレニアル世代とは、1980年から1995年の間に生まれた世代と定義され、2020年に25歳から40歳を迎えた世代です。

この世代がこうして括られるのは、その成長がデジタルの台頭とともにあったためです。インターネット環境の整備が飛躍的に進んだ時代に育ち、情報リテラシーに優れ、インターネットでの情報検索やSNSを利用したコミュニケーションを自然に使いこなす、ITに極めて高い親和性を持つ世代です。この生まれながらにして、デジタル化という激動の中で育った彼らだからこそ、新しい時代を先導するエネルギーがあるように私には思えます。

Diversity & inclusion(多様性を取り込んだ社会)とConviviality(自立共生社会)

最近出版されたタン女史の自伝によると、デジタル技術を活用すれば、この2020年を境にどのような社会が待ち受けているのか、彼女には明確にイメージできているように思えます。そのキーワードは、Diversity & inclusion(多様性を取り込んだ社会)とConviviality(自立共生社会)です。彼女が目指している「自立共生社会」は、一地域、一国だけでなく、地球全体での共生社会です。

彼女自身がLGBTであることからも、新型コロナ流行後の世界に求められているのが、Diversity & inclusionとConvivialityであるという主張は容易に納得できます。Diversityも、 Inclusionも、経済界でよく用いられている単語です。Diversityは、国籍や性別、学歴を問わない多様な人材活用に、Inclusion(インクルージョン)は、元々フランス語で、直訳すると包含、包括という意味です。ビジネスに当てはめると企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ、活かされる状態を言います。

「共生(ともいき)」は元々仏教用語

「共生(ともいき)」ということばは、元々仏教用語にあったようで、日本人には馴染みの単語です。「共生」とは、「共に生きる」ということですから、直訳すれば「自然と共に生きる」、「地域と共に生きる」ということになります。

つまり、「人間は天地自然の恵みの中で生き生かされているのだから、それをよくわきまえて、むやみやたらな開発はしないで、自然を大切にし、自然のサイクルに合った生き方をしましょう」。また、「人は一人で生きているのではない。家族をはじめとして、隣近所、町や村の中で多くの人々と係わりながら生きているのだから、その関係を大切に、助け合いながら生きましょう」ということになります。

「共生」が、障害者支援や環境問題に対する政策の枕詞に

日本政府は、障害者支援や環境問題に対する政策の枕詞として、「共生」という言葉をこのところ多用しています。2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機として、障害の有無等にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、障害のある人等の活躍の機会を増やし、共生社会の実現を目指しています。 文部科学省は、平成24年7月より共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進に取り組み始めています。

「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等のマイナリティーが、積極的に参加・貢献できる社会です。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会です。

Conviviality(自立共生社会)とは

Conviviality(自立共生社会)という言葉が用いられるようになったのは、イヴァン・イリッチ著の「Convivialityのための道具」という本に由来するようです。本書が出版された1973年は、今日と同じように産業社会における人間性の喪失が大きな社会的不安を招いていた時代です。

Conviviality(コンヴィヴィアリティ)は、日本語では「自立共生」と訳されていますが、行き過ぎた産業主義社会が、人々を単なるサービスの消費者にしてしまったことを問題として指摘し、自立共生な社会のあり方を描いています。

日々の暮らしの中で人は学び、病気に苦しむ人がいれば手を差し伸べ、家族を失えば親族で弔っていた人間の暮らしが、産業化と分業化・専門化によって、教育は学校が、医療は病院や医療者が、弔いは葬儀屋が提供するサービスになり、人々の手から人間らしい振る舞いの機会を奪ってしまったのでは?と、イリッチは問いかけています。

半世紀前にも今と同じような社会現象が

この書が刊行されたのが1973年ですから、我が国においても戦後の高度経済成長により貧富の格差が拡大し、まさに産業中心主義に世の中が大きく変化している時代でした。先行きの不透明感から、全国に大学紛争の嵐が拡がった時代です。

その後、「個々人の尊厳をベースにした真の自立共生社会はユートピアの世界である」と、私たちの世代の者は大学紛争後ずっと思い続けていました。だが、デジタルは無限の資源だと言われると、それも決して実現不可能な課題ではなさそうな気もしてきます。

デジタル民主主義と「自立共生社会」

いま、米国で行われている大統領選挙の報道を見ていると、何だか滑稽です!

デジタル民主主義の根幹は、「政府と国民が双方向的に議論できるようにしよう」ということです。オードリー・タンさんは、「国民の意見が伝わりにくい」とされる間接民主主義の弱点を、インターネットなどの力により誰もが政治参加しやすい環境に変えていこうとしているのです。

彼女がすでに取り組み、実現しているのが台湾での選挙制度です。より民主的な選挙を行うために、有権者一人1票ではなく、99票のカードが与えられ、有権者は複数の候補者に配分して投票できるそうです。さらに、4年に一度の選挙ではなく、デジタルを活用すれば毎日でも国民投票が可能だと言います。

多くの国が採用している間接選挙制度の根底からの見直しが必要な時代になっているようです。民主主義国家と言いながら、所得格差が拡大し、社会の分断が進んでいます。 日本が一億総中流の国であるというのは今や完全な幻想で、その貧困率は世界的に見ても高いものです。2020年7月17日に厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」の結果から、2018年(平成30年)の子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%、約7人に1人の子どもが貧困状態にあり、日本も社会的格差が大きいことを示しています。

小児保健従事者は子どもの声を代弁しよう

ラジオやテレビといったメディアでは、情報の流れは一方通行です。パソコンやインターネットの登場で、SNSを通じて誰もが自分が言いたいことを発信できるようになりました。メディアは、SNSでの炎上、誹謗・中傷といったネガティブな面を取り上げ、子どもたちの積極的な活用に向けた意見が少なすぎるように思えます。

日常的に子どもたちに寄り添っている小児保健従事者は、子どもに関する情報を共有するだけでなく、子どもから発信される多様な意見を代弁し、政府の施策に反映されるような社会にしたいものです。

ポストコロナでは、デジタル化による選挙制度改革を推し進め、多様な民意が政府の施策に反映され、自立共生社会へ向かうことを期待しています。


2020/12/18

コロナ禍が母子家庭を直撃

かつては、一億総中流の国と言われた日本が。。。,

7人に1人の子どもが貧困状態

 日本が一億総中流の国であるというのは今や完全なる幻想とも言えるほどに、その貧困率は世界的に見ても高いものです。
2020年7月17日に厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」の結果から、2018年(平成30年)の子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%と、約7人に1人の子どもが貧困状態にあることがわかりました。

 ひとり親家庭の子どもの貧困率はOECD加盟国中で最低

 貧困家庭にある子どもの比率、すなわち子どもの貧困率は、OECD各国の中で日本よりはるかに社会状況が深刻そうな国々とほぼ同じレベルです。特に、ひとり親家庭の子どもの貧困率はOECD加盟国中で最低です。

貧困率が深刻な母子家庭の8割近くでは、世帯収入が300万円以下です。​その大きな理由は、この国でシングルマザーが働き口を探すのが容易でないからと考えられます

日本の相対的貧困率は世界的にみて高い

私たちの実質所得は、1990年代末にピークを迎えた後には下落を続け、現在は30年前の水準に戻っています。一方で、相対的貧困率は着実に伸び続けています。2018年の貧困線(等可処分所得の中央値の半分)は127万円。貧困線に満たない世帯員の割合を示す「相対的貧困率」は15.4%で、2015年の15.7%より0.3ポイント改善したとはいえ、その貧困率は世界的にみて高いものです。

コロナ禍が母子家庭を直撃

政府は昨年11月、貧困家庭の子どもへの支援方針をまとめた「子どもの貧困対策大綱」を閣議決定し、生まれ育った環境で子どもの現在と将来が左右されないよう、早期の対策や自治体の取り組みを充実させる方針を立ててはいました。

しかし、その実効性が現れる前に、新型コロナが流行し、非常事態宣言が出されるに及び、非正規労働者が多いシングルマザーの働き口を奪い、母子家庭の生活をより一層苦しいものとしています。

3組に1組が離婚する現代社会

3組に1組が離婚する現代社会では、母子家庭でも安心して子育てができる社会づくりが求められます。母親に育児の責任を負わせるのなら、母親だけでも育児できるように、就労環境を改善し、子どもの医療費・教育費等の子育てに要する費用を全面的な公費負担とする必要でがあるしょう。


2020.11.28

スマート社会(Society5.0)に向けて

Society5.0とは

狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、そして現代の情報社会(Society4.0)の次に訪れる新しい社会のことを、スマート社会(Society5.0)と呼ぶそうです。この用語は、平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画の中で提唱されたものです。

Society5.0とは、IoTによりサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(人主体空間)を連携し、すべての物や情報、人を一つにつなぐとともに、AI等の活用により量と質の全体最適をはかる社会のことです。

Society4.0では経済発展に限界が

Society4.0では、情報の共有や作業工程の効率化が進みました。しかし、少子高齢化によって労働力が減少し、これまでの労働集約型の業務や知識の集積に基づく業務では、今以上の経済発展が望めません。日本は超高齢化社会が加速する中で、社会保障の破綻も懸念されています。

Society5.0では、

膨大な情報を的確に処理するため、人工知能(AI)の活用はさらに進みます。情報は人間が自ら集めて解釈するものから、人間にとってより理解しやすい情報としてAIが解釈・加工して提供されるものになるでしょう。

Society5.0においては、Society 4.0を土台としながらAIやロボット等によって人的リソースを代替化・省力化が実現します。テレワーク等が普及することで時間の有効活用ができるようになり、人は新たな高付加価値な業務を行うことができるようになります。

個別化医療の進展やロボット技術を活用した身体機能の支援が進めば、看護や介護の省力化が進みます。さらに、健康や医療、介護に関するデータを活用することで効率的な社会保障システムの構築も可能となり、質の高いサービスが提供できるようにもなります。

これらが実現すれば、今後直面するとされる社会課題の解決とともに、今以上に経済的な発展が可能となるでしょう。

Society 5.0に向けて国が目指す学校教育

ソサエティ5.0時代到来を見据えた学校の指導体制の確立が、ソサエティ5.0をよりよい社会にする鍵となります。平成30年、文部科学省は 「Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会」で 学びのあり方の変革を次のように提唱しています。

  • 一斉一律授業の学校は、読解力など基盤的な学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場に。
  • 同一学年集団の学習は同一学年に加え、学習到達度や学習課題等に応じた異年齢・異学年集団での協働学習の拡大を。
  • 教室での学習は、大学や研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設等も活用した多様な学習プログラムが望まれる。

新時代に求められる人間教育

文科省は先の提言で、「文章や情報を正確に読み解き対話する力」、「科学的に思考・吟味し活用する力」、「価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力」が重要であると挙げています。

新たな社会を牽引する人材として、国が求めているのは「技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材」、「技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材」、「様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材」です。

私の考えは、高度に情報技術が進歩した時代の初中等教育のあり方として、機械にできることは機械にまかせ、人間はより人間らしい力を身につけることです。

これまで以上に、人の多様性と共生を尊重する社会を目指し、人と人、さらには人とロボットとのコミュニケーション力の涵養が求められます。2020.11.26

ポストコロナ、ウェルビーイング重視の地域コミュニティを

国別の幸福度ランキングで日本は51

国連が20173月に発表した、世界155ヵ国を対象にした幸福度ランキングによれば、GDP世界3位の日本の順位は2016年の53位から、二つ順位を上げましたが、51位。1位はノルウェーで、上位5ヵ国のうち4ヵ国を北欧勢が占めています。主要な国をみますとカナダ7位、米国14位、ドイツ16位、フランス31位となっており、日本はまだまだ上を目指さなければならない位置にいます。

ウェルビーイング(well-being)とは、

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。

1946年の世界保健機関(WHO)憲章の草案の中で、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることを言います(日本WHO協会:訳)。

科学と産業革命で人類が蓄積してきた豊かさとウェルビーイング

過去500年の間に、科学と産業革命のおかげで、人類は超人間的な力と実質的に無限のエネルギーを手に入れ、人類が蓄積してきたこの豊かさは、私たち現代人に新たな満足を与えたのだろうか?と、ユバル・ノア・ハラリは著書「サピエンス全史」の最後で問いかけています。

文明社会は、強い絆で結ばれていた大家族を崩壊させ、核家族化しました。緊密で協力的な互助で成り立っていたコミュニティ社会は、都市への人口移動とともに、スケールの大きな、日常生活とかけ離れた組織的な政府によって統治されています。

大家族が崩壊し、コミュニティを奪い去られた現代の人々が、果たして幸せになったと言えるのでしょうか。

ポストコロナで地域コミュニティの見直しを

新型コロナの流行で、リモート・ワークでの勤務が3割近くに達しているそうです。朝夕の通勤ラッシュの中を出かける必要もなくなりました。これまで、会議のために、わざわざ新幹線に乗って、飛行に乗って出張していたのが、Zoomなどのネット会議で十分に間に合うこともわかってきました。

ポストコロナの時代には、国内外の企業に籍をもつ多職種の人々が、同じ地域に居を構えて、ネットを通じて仕事ができます。若い夫婦向けには、学校・保育園・公園の整備が不可欠です。

3人に1人が高齢者という超高齢社会が目の前です。若者たちには必ず高齢者がいます。医師・看護師、介護士など医療福祉関係者が必要です。

これからは、インターネットやAI(人工知能)を活用し、人にも、ロボットにも、ともにウェルビーイング(well-being)をもたらす新しい地域コミュニティづくりが求められます。


2020.11.18

2020年米大統領選挙と社会的分断

共和党のドナルド・トランプ米大統領と民主党のジョー・バイデン前副大統領が争ってきた米大統領選は、日本時間の8日未明、バイデン氏が当選を確実にしました。ただ、トランプ氏は選挙の不正を主張するなど、敗北を受け入れる様子を今のところ見せていません。

米国にいる私の知人の多くは、小児科医です。彼らは、いつも社会的弱者に接していることから、民主党支持者が多く、トランプ大統領に嫌悪感を露わにしたメールをよく送ってきます。トランプ大統領は、日本人のモラルでは理解しがたい言動がこれまでから多いのですが、今回の選挙戦では一層激しいものがありました。今回の選挙戦でも、前回選挙を上回る票を獲得し、敗北は僅差であり、なお根強い支持基盤の存在が浮き彫りになりました。

恐らく大半の日本人は、アメリカ合衆国を民主主義のモデル、世界の盟主とこれまで考えていたと思いますが、今回の選挙戦での両陣営の発言・ニューヨークなどでの暴動・選挙に対する不正発言などは、アフリカ新興国の選挙風景と変わらないようです。

2020年米大統領選挙においては、アメリカ社会の分断と人種差別を結びつけた報道が目立ちます。アメリカ社会そのものが移民によって成り立っており、白人による黒人やヒスパニック系への人種差別は続いていますが、次第に薄まってきたように思えます。今回の選挙で副大統領に就任予定のカマラ・ハリス氏は、ジャマイカ人とインド人の混血だそうで、大変理知的な女性です。

いま、アメリカ社会の分断の根底にあるのは、二極化した経済的格差です。

2020-11-11

アジア初の国連機関UNOPSのGlobal Innovation Centerが神戸に

国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)が、神戸市にグローバル・イノベーション・センター(GIC Japan(Kobe))を開設する記念式典が116日にありました。

神戸市森林植物園2020-11-5

GIC Japan(Kobe)は、持続可能な開発目標(SDGs)の課題解決に資する新たな製品やサービスの創出を行なうことを目的としたインキュベーション施設であり、世界で3拠点目、アジアでは初の拠点とのことです。

WHO神戸センター (WKC) 19962月に設立

19951月の阪神淡路大震災により、 壊滅的な被害を受けた神戸には、WHO神戸センター (WKC) 19962月に設立され、被災地の復興と発展のシンボルになっています。

WKCの活動目標と戦略では、21世紀におけるグローバルな問題である、高齢化と健康、都市と健康、保健福祉システムの開発、さらには、女性と健康、伝統/相補・代替医療といった問題に重点を置いて活動しています。

神戸のこれらの機関から、先進国から発展途上国への情報発信基地としての活躍が期待されます。

UNOPSとは、コペンハーゲンに本部を置く、プロジェクト実施に特化した国連機関。UNOPS は他の国連機関、国際開発金融機関、援助国及び被援助国政府等からの依頼に基づき、特に被災地域や紛争地域等における援助プロジェクト推進を行う。

持続可能な開発目標(SDGs)とは

映画「スパイの妻」と軍事研究

今年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した『スパイの妻』は、太平洋戦争前夜の神戸を舞台に、国家機密を知ってしまった実業家(高橋一生)とその妻(蒼井優)の、愛と正義に賭けた姿を描く作品です。

ロケ地として、垂水区にある旧グッゲンハイム邸や神戸税関が使用されるなど、レトロモダンで異国情緒あふれる戦前の神戸の風景を楽しむこともできるとのことで、新型コロナ流行下ではありますが、10月末の平日の昼に家内と観に行きました。

1940年、神戸で貿易会社を営む優作が、赴いた満州で、恐ろしい国家機密を偶然知り、正義のため、憲兵隊の監視の目を掻い潜り、事の顛末を世に知らしめようとする話です。恐ろしい国家機密とは、満州で日本軍がペスト菌を用いて人体実験を行っているフイルムのことです。

折しも、日本学術会議のメンバー推薦に対する政府の任命拒否が話題となっています。20173月には、日本学術会議は、大学における「軍事研究」が学問の自由及び学術の健全な発展を脅かすと、「軍事的安全保障研究に関する声明」を出していました。

太平洋戦争を自分の目で見て、戦後を過ごしてきた私には、これまで当たり前と考えていた平和憲法の理念や学問の自由が、戦前へと巻き戻されつつあるように思えてならない今日この頃です。

2020-11-4