AIでこれまでの殻(から)を破る新しい育児法が ―今年の私の初夢―

英国のデミス・ハサビス氏が、タンパク質の構造を予測する人工知能(AI)を開発し、昨年秋にノーベル化学賞を授賞されました。彼は、ゲームの世界でAIが人間に勝利できることを決定づけた「アルファ碁」の生みの親でもあるのです。

これまでの型にハマった「定石」にこだわらず、自由に指し手を選ぶ「アルファ碁」で学んだ若手棋士たちが、ベテラン棋士たちを打ち負かしています。社会生活においては、AIの悪用の制限といった当面解決すべき課題もありますが、これまでの殻を破る新しい発想の重要性を気づかせてくれます。

近い将来、AIによる子育ても話題になりそうです。これまでの育児書に書かれている「してははいけないこと」が、新しい育児法では高く評価される時代となり、また、画一的な教育ではなく、AIが選んだ個々の特性にあった教育で学んだ子どもたちは、自信に満ちあふれ、生き生きと楽しそうに日々を過ごし、立派に成人していく姿が見えます。

これは、今年の私の初夢です。

2025.1.15.

子ども健康コラム1月号

手足口病になったら保育園は出席停止になる?

毎年夏に流行する手足口病は、生後6か月〜5歳頃の子どもがかかりやすいウイルス性の感染症です。原因は、コクサッキーAウイルス、エンテロウイルス71など複数のウイルスで、感染力が高く、シーズン中に繰り返しかかることもあります。

主な症状として、口腔粘膜と手足の末端に水ぶくれができ、発熱やのどの痛みを伴います。ワクチンはまだ開発されておらず、有効な治療法はありません。まれに、無菌性髄膜炎や脳炎を合併し、けいれんや意識障害が生じることもありますが、多くの場合、3〜7日の自然経過で治癒します。

手足口病は、人目につきやすいところに水ぶくれができるので、他人もすぐに気づきますが、滅多に重症化しないので、厚生労働省ガイドラインでは保育園の出席停止の対象にはなっていません。熱が下がり、痛みが引いて食事がとれるようになってきたら、登園を再開しても問題ありません。

地域子育てネットワークだより寄稿   24.7.14.

 

溶連菌感染症の流行に注意しましょう

ここ数年、新型コロナの流行で、みなさんマスクし、厳重な感染対策をとってきたので、夏になるとこれまで繰り返してきた子どもの感染症の流行がありませんでした。そのため、免疫力がなくなり、大流行の恐れがあります。

夏に流行しやすい感染症のひとつである溶連菌感染症は、ときに、心臓弁膜に障害などを起こすリウマチ熱や、急性糸球体腎炎につながることもあるので要注意です。

はじめの症状は、多くの夏カゼと同様に発熱(38〜39℃)と“のど”の痛みです。繰り返しかかることもあり、大人になってもかかります。咳やくしゃみなどによって近くの人に感染(飛沫感染)し、溶連菌に汚染された食品が原因のこともあります。

夏カゼの多くはウイルス感染症ですが、溶連菌感染症は細菌感染症であり、適切に抗菌薬を服用すれば、効果があります。小児科医を受診すれば、溶連菌検出用の専用キットがありますので、容易に診断できますので、早めに受診することです。

2024.5.6.  「地域子育てネットワークだより」6月号

 

希望に満ちた春

桜花爛漫、真っ新の制服、ランドセルを背負う少年少女たちは、希望に満ち溢れています。彼らがどのような成人になってくれるか周りの大人にとっても楽しみです。

昨年は、将棋界では藤井聡太さんが21歳という若さで8冠という偉業を達成、囲碁界では仲邑菫(なかむら・すみれ)三段(13歳)が史上最年少のタイトル獲得者になりました。近年、囲碁・将棋に限らず、スポーツの世界でも、小・中学生の活躍が目立っています。彼らの活躍の陰には、両親や身近な人々の中にお手本になる人たちがおられます。と同時に、昔は弟子入りして師匠から時間をかけて学んでいたのを、いまは、AIで学習し、より迅速に上達するようです。

今の少年少女たちは、絶えずスマホを握っています。モデルになる大人が彼らの周りにいなくても、ネットを通じていろんな情報収集が可能です。AI開発やプログラム作成などの情報処理分野をはじめ、自らで研鑽を積み、日本人から優れた人々が生まれてくるのが楽しみです。 2024.3.10.

子どもの健康コラム

阪神・淡路大震災で学んだ子どものこころのケア

新年早々の能登半島地震による揺れ、思わず阪神・淡路大震災を思い浮かべました。PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が、広く知られるようになったのが阪神・淡路大震災の時です。

大災害が子どものこころに大きな影響を与えるのは、災害の正体が分からず、また、自分で対処できる範囲も限られているため、余計に不安になっているからです。

怖い体験や喪失体験(親しい人との別離、住居の破壊、生活環境の変化、おもちゃ・人形の紛失など)あるいは、長期にわたる避難生活は、子どもにとって強い苦痛となり、身体症状や行動上の問題として表われます。

これらの反応そのものは、誰にでも認められるものですが、その苦しみが少しでも和らぐよう、適切な時期に、的確に支援することが必要です。思い出すのは、学校が再開され、クラスメートと久方ぶりに出会ったときの子どもたちの満面の笑顔です。一番の良薬だったようです。

2024.1.17. 連載「子どもの健康コラム」原稿

子どもの墜落事故を防ぐ

秋本番です。感染症の流行も収まり、注意すべきは子どもの事故です。自宅の窓を開け放し、清々しい空気を取り入れようとする秋に、気をつけたいのがベランダ・窓からの墜落事故です。

最近5年間に、9歳以下の小児が建物から墜落し死亡する事故が37件も発生しています。とくに3~4歳で多くみられます。 年少児ほど体重に占める頭の割合が大きく、墜落時に頭が下になり、頭部外傷が起こりやすく、重症にもなりやすいのです。

事故発生の原因としては、ベランダや部屋の出窓から転落、とりわけ、ベランダや窓際の椅子や不用意に置かれた物を踏み台として、転落するケースが多くみられます。

予防対策としては、1)子どもだけでベランダに出さない、ベランダを遊び場にさせない、2)窓の近くやベランダに踏み台になるようなものを置かない、3)出窓には必ず施錠しておくこと、などに気をつけてください。
2023.9.1.

兵庫県地域子育てネットワーク 10月号

自然の中で遊び、学ぼう

近年、人口は都市に集中し、高層マンションでの生活が増え、子どもたちが自然の中で、土に触れる機会が減りました。いくら科学技術が進歩し、生活が豊かになっても、私たち人間は地球上の生き物です。

戦時中、尼崎市街地に住んでいた私は、米軍B29の空襲を受け、郊外の田園地帯に疎開していました。授業が終わると、校庭で日が暮れるまで草野球、夏休みは小川でのドジョウすくい、フナ釣り、秋には、イモ掘り、採ってきたイナゴを食したことなどが、生涯での思い出です。

地方に行けば、まだまだ豊かな自然が残っています。「過疎の村おこし」として、「古民家の活用」、「生徒のいなくなった学舎の活用」がよく話題になっています。

もうすぐ夏休みです。子どもたちが自然に触れ、オゾンに満ちた大気が子どもの脳に送り込まれると、きっと寛容の精神に満ちた心豊かな大人になってくれるでしょう。

2023.7.1.

 

気をつけるべきは感染症だけでない、 ~熱中症対策を忘れずに~

コロナ5類移行がようやく正式決定しました。マスク着用も個人の判断に任されることになりました。
これから気温が高くなる夏に向かいます。注意すべきは熱中症です。熱中症は真夏よりも、まだ暑さに身体が馴染んでいない夏の初めに多くみられます。

言葉が話せない乳幼児は、喉が渇いてもそれを訴えることができません。ベビーカーに乗せて外出するときは、注意が必要です。地面近くの温度は高くなっていますので、できるだけ日陰を通行するようにしましょう。また、子どもは喉が渇くのも忘れて遊びに夢中になります。脱水に十分注意して、こまめに水分補給をするように気をつけてください。

戸外で遊ぶ時や運動をするときには、必ずマスクを外すようにしてください。マスクをしていると、吐く息の体温がこもることになり、熱中症の原因になります。

ぐったりした様子や嘔吐、筋肉がつるなどの症状がみられたときは、熱中症の可能性が強いので、体を冷やしてすぐに病院を受診しましょう。

2023.5.5.

兵庫県地域子育てネットワークだより

「こども基本法」って、どんな法律?

いよいよこの4月から、子どもたちの権利を守るために「こども基本法」が誕生します。この法律が、どんな内容で、これから何が変わるのか、よくわからないという方が多いのではないでしょうか。
日本は1994年に、国際条約「子どもの権利条約」を批准しました。その条約には「生きる権利」、「育つ権利」、「守られる権利」、「参加する権利」という4つの子どもの権利が定められていまが、日本国内ではこの条約についての関心が低いままで、子どもは「子ども扱い」されたまま、「子どもが主役」にはなりづらい状況が長らく続いてきました。
子どもたちが直面している問題として、児童虐待・ヤングケアラー・子どもの貧困・いじめ・個性や多様性を踏みにじる校則・教育格差など無数にあります。
「こども基本法」は、子どもの視点に立って、きめ細やかで、切れ目のない支援を行い、子どもにやさしい社会を目指すための法律です。

2023.3.1.

兵庫県地域子育てネットワークだより4月号

 

七草粥の由来と春の七草

1月7日の朝、七草粥を食べられましたか。そもそも、なぜ七草粥を食べるのでしょうか?
唐の時代、毎年この日に、7種類の若菜を入れた汁物を食べて、無病息災を願うようになったのが始まりです。

この風習は、奈良時代に日本へ伝わり、年のはじめに若菜を摘んで食べ、生命力をいただく「若草摘み」の風習が、7種類の穀物でお粥を作る「七種粥」の風習などと結びつき、「七草粥」に変化していきました。
江戸時代には、1月7日は五節句のひとつ、「人日(じんじつ)の節句」として定着したそうです。

春の七草、「せり・なずな/ごぎょう・はこべら/ほとけのざ/すずな・すずしろ/春の七草」は、五七五七七のリズムに合わせて口ずさむと、覚えやすいはずですが、私はどうしても覚えることができず、メモ書きを持って母のお使いに行ったのを思い出します。
今では、パック詰めした七草がスーパーの店頭に並んでおり、随分と楽な時代になったものです。

2023.1.8. 県子育て支援