小児科医が医療の花形となる日が

若葉「名誉教授からの一言」2018

 最近、いろんなところで人工知能、AIが話題です。どうやら、多くの考えは、最後まで存続する職業が医師、とりわけ精神科医と小児科医だそうです。いずれも、不確実性の中で患者と対応していることが理由のようです。

AIの診断力が、医師の診断力を上回る

データ化された診療情報に基づくAIの診断力が、医師の診断力を上回る日はそう遠い話ではなさそうです。最初に駆逐されるのは、客観的な情報を自分たちで独り占めにしてきた専門医グループです。

客観的な情報に乏しい未分化な診療科ほど、AIが苦手とする医療の領域です。日常検査のデータ一つとってみても、年齢、性別だけでなく、成長発達度で大きく違います。ひとつひとつのマスが小さいので、中々精度の良い基準値を得るのが困難です。これが小児医療、とりわけ発達がらみの小児医療です。

ゴールが判りにくい小児医療

数年先、否、十数年先、どんな大人になっているかわからないのが、子どもの病気です。このような最終判定が難しい医療は、AIが最も苦手とする医療です。

小児科医は、何も心配せずに乳児健診の外来に来られたお母さんに、「あなたのお子さんは発達障害児になるでしょう」と、いきなり宣告しません。お母さんに、いらぬ心配をさせたくないという思いからです。もちろん、いま話しておかねば、子どもに取り返しがつかなくなる不利益が子どもに発生すると判断した時は、すぐに話をしますが、そんなことは滅多にありません。

親が受容しやすい状況づくりを

きっとみなさんも、子どもの状態を、お母さんの性格を勘案しながら、話をされていると思います。心配性の親には、あまり落ち込まないように、楽天的で何も気づかぬ親には少しずつ小出しに話します。たとえ子どもに障害があったとしても、親が前向きに取り組める受容しやすい状況づくりを優先するのが小児科医です。

Evidence Based MedicineはAIに任せ、私たちはNarrative Based Medicineで。

やっと、小児科医が医療の花形になれる日が目の前に。

2018年2月記