クロノス時間とカイロス時間

「クロノス時間」とは、過去から未来へ一定速度・一定方向で機械的に流れる連続した時間であり、「カイロス時間」は一瞬や人間の主観的な時間を表す、内面的な時間を指します。カイロスも、クロノスもギリシア語で「時」を表す言葉で、ギリシャ神話の神の名前が由来です。

高齢者と時間

先日、高校時代のクラスメイトと話していると、歳を重ねると1日、否1時間があっという間に過ぎ去ることから、「クロノス時間」と「カイロス時間」が話題になりました。
私たち高齢者にとってあっという間に過ぎ去る時間の速さは、仕事・動作スピードの低下による焦りから生じる「クロノス時間」ではなく、時計の針が回る速さとは関係のない余生をいかに過ごすかという内面的な思い、「カイロス時間」を中心に考えているように思えます。

「医師の働き方改革」と「時間」

医師や教師の働き方改革が話題になっていますが、このような人間の内面に接する仕事がクロノス時間でのみ議論されており、本来はカイロス時間が問題なのです。
「からだ」も「こころ」も絶えず変化している患者さんの不安を解消し、納得して医療を受けてもらうために寄り添う時間は、有限のクロノス時間ではなく、無限のカイロス時間です。長時間労働が問題になっていますが、医師には自らのカイロス時間を備え、自らをコントロールする能力が求められます。

ゆっくりとひとの話を聞く

相手に自分の話を聞いてもらいたい時には、無限の時間を準備して望むことです。私は、職場のトラブルで「難しい話し」を相手としなければならないときには、いつも誰もいない静かな休日の朝に時間を設定していました。
自分の意見に納得してもらうには、1日かけて同じ話しを何度も繰り返す覚悟で臨み、話し相手が席を立つまでは絶対に先に席を立たないことです。今思うと、カイロス時間で対話し、相手と気持ちが通じ合えていたようです。
2024.5.14.