スーパー・スプレッダーとは

SRASでは、多くの場合、患者一人から1~3人程度への小規模な感染伝播が起こっていたが、中に強い感染力をもつ人、スーパー・スプレッダーの存在が、SARSの拡大を促したとも言われている。

一人の患者から30人以上に感染を広げた事例があった。

このスーパースプレッダーは、糖尿病などの基礎疾患をもち、免疫力の低下のために体内でのウイルスの増殖を抑えきれず、長期間にわたって大量のウイルスを排出し続けていると考えられている。

広東省から香港にSARS コロナウイルスを持ち込んだ第一例の医師が、このスーパー・スプレッダーであった可能性が高いとされている。このスーパー・スプレッダーが香港の国際的なホテルに宿泊して、大量のウイルスを排出し、多くの感染者が発生し、SARS コロナウイルスが世界各地に拡散していく原因になった。

岡田春江著:知っておきたい感染症―21世紀型パンデミックに備える(ちくま新書)から


世界で4千万人が死亡したスペインかぜ

1918 年から1920年に流行したスペインかぜは、全世界で患者数約6億人、死亡数は2,000万から4,000万人に上ったとされています。スペインかぜがヒトにおけるA型インフルエンザウイルスによる流行であることが判明したのは、後になってからです。

日本では1918年の11月に全国的に最初の流行があり、3年間で人口の約半数の2,380万人がかかり、約39万人が死亡したと報告されています。府県別死亡率も載っており、よく見ると、そのピークが発生当初は関西が高いですが、終わりの頃には関東が高くなっています。今回の状況と逆です。(日本におけるスペイン風邪の精密分析、東京健安研セ年報、2005年)

1918年に大流行したスペインかぜ(インフルエンザ)で犠牲者が主に若い健康な成人でした。その理由として、1889年以降に生まれた人々は、1918年に流行したインフルエンザと似た型のウイルスを経験しており、ある程度の免疫があったからだという説があります。(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9190/


2020/2/16

これまでのインフルエンザ・パンデミック

A型インフルエンザウイルスは元来鳥類を中心に保有されていたウイルスです。少しずつその遺伝子が変化し,1957年のアジアインフルエンザと1968年流行の香港型インフルエンザと合わせて3回の大規模のパンデミックが20世紀には起きたことがわかっています。

最近では、2009年にはトリ由来のA型インフルエンザウイルス(H1N1)による流行を経験しています。2018/19年の新型インフルエンザは豚由来のH1N1型インフルエンザによるパンデミックです。

同じH1N1型インフルエンザでも、動物の種類によって宿しているウイルスのタイプが異なり、重症度も異なるようです。幸い、この2回のウイルスでは若年者や小児で重症化する症例は季節性インフルエンザと変わりませんでした。


2020/2/16

超過死亡という新しい概念とは

国立感染症研究所のIASR最新号に、超過死亡の概念が記されている。

インフルエンザの社会的インパクトを評価するにあたって, 重症化の指標として死亡者数が重要である。世界保健機関(WHO)はインフルエンザの流行によってもたらされた死亡の増加を, インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする「超過死亡(excess death, excess mortality)」の概念を提唱している。これは直接的, 間接的を問わず, インフルエンザ流行がなければ回避できたであろう死亡者数を意味する。

これによると1998/99シーズンで超過死亡者数は35,000人を超えているが、2004/05シーズン以降1万人を超えることはなかった。2018/19シーズンは3,276人であり, 直近5シーズンでは3番目と特別に大きな超過死亡が発生したわけではなかった。

IASR Vol. 41, No.2 (No. 480) February 2020


2020/2/16

 

インフルエンザ定点サーベイイランスと推定患者数

インフルエンザ定点サーベイイランスは、1999 年 9 月より開始され、全国約 5,000か所のインフルエンザ定点 医療機関(小児科約 3,000、内科約2,000)が、週ごとに、インフルエンザと診断した症例 の年齢群及び性別で集計した集計表を地方自治体に報告しています。これにより、インフル エンザの発生動向を継続的に監視しています。

このサーベイイランスでは、過去のシーズンの 流行との比較が可能です。また、受診者数推定システムを長期運用しており、全数推定が可 能となっています。

因みに、2018/19 シーズンの推定受診者数は約1170.4万人となっています。(国立感染症研究所 厚生労働省結核感染症課 令和元年7月19日)


2020/2/09

通常の季節性インフルエンザ国内で推定約1000万人

通常の季節性インフルエンザの1年間の感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。 国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。

また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。(厚労省新型インフルエンザA(H1N1)pdm09対策関連情報


2020/2/9