毎日、テレビに映し出されてくるウクライナの惨状には目を覆いたくなります。
昨日は、昭和20年3月17日の神戸大空襲から77年ということで、犠牲になった人たちを追悼する慰霊祭が神戸市で行われました。昭和20年2月~8月にかけてのアメリカ軍の空襲により、神戸では8千人以上が亡くなり、中でも、3月17日の大空襲では神戸の市街地全域が一夜にして廃墟と化し、ウクライナの比ではありませんでした。当時5歳であった私の脳には、真っ赤に染まった神戸の夜空が今でも焼きついています。
欲しがりません勝つまでは
戦時中の有名な標語に、「欲しがりません、勝つまでは」というのがありました。これは、1942年(昭和17年)に大政翼賛会と新聞社が「国民決意の標語」を募集した「大東亜戦争一周年記念」の企画で、国民学校5年の少女の作だそうです。
男性たちは戦場に駆り出され、残された女性たちは「もんぺ」を穿き、竹槍を手にし、バケツリレーと銃後を守るべく、一致団結していました。今のウクライナでは手製の火炎瓶を作成し、通りには土のうを積むという話を聞かされると、80年前の日本人と何ら変わらない感じです。
政治家や軍幹部のメンツの陰で、犠牲となり、悲惨な日々を送るのは市民たちです。
地勢学的にみたウクライナ
これまで、ウクライナという国名を知っているだけで、実はよく知りませんでした。東欧諸国の中でも、最も東に位置し、地勢的にウクライナは日本と全く違うことを今回知りました。
東にロシア、西にポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、モルドバ、北にベラルーシと隣接していて、南には黒海を挟んでトルコが位置しています。ウクライナ人には、多人種の血が混じっており、ウクライナ女性には美人が多いそうです。
国土面積は約60万平方キロメートルと日本の2倍。人口は約4,400万人と日本の3分の1です。国土の大半が肥沃な平原・高原地帯に覆われており、小麦、トウモロコシなどは世界有数の輸出国です。
身軽な動きと複雑な跳躍を含み、早いテンポで演技されるコサックダンスは、ロシア舞踊とばかり思っていましたが、ウクライナ・コサックの踊りに由来するウクライナの伝統舞踊の一つだそうです。
今回の戦争がなぜウクライナで起こったのか、その必然性が納得いきました。ここは、世界の潮流、東西対立の渦が最もできやすい地域のようです。アメリカと政治的に対立する国ロシアにとっては、国境を接する国、同じ東スラブ系民族の兄弟国であるウクライナが、アメリカ軍の支援を求めて軍備を拡大するのは自国にとって大いなる脅威と感じ、その芽を早く積みたいというのが狙いだったのでしょう。
何があっても戦争に巻き込まない、巻き込まれない
四方を海で囲まれた島国日本は、他国と直接国境を接しておらず、ヨーロッパの国々と比べると、地上の楽園のような気がします。でも、変に欲を出すと、大東亜戦争のようなことになるのです。
戦争で得をするのは、死の商人と呼ばれる武器商人、軍需資本家だけです。戦争に勝っても負けても、犠牲となるのはいつも市民です。一度、戦が始まると、あとは憎しみの連鎖です。為政者は何があっても戦争に巻き込まない、巻き込まれないように振舞って頂きたいと念じます。
経済的制裁も戦争と同じです。経済的弱者への虐待です。困窮するのは市民です。制裁という言葉を聞くだけで、子どもへの虐待と同じで、小児科医として心が痛みます。
世界中には、いろんな主義・主張の人たちが住んでいます。周りの国々とうまく接するには、互いにレスペクトし、ほどほどが一番のような気がします。
2022/3/18
「草枕」の冒頭の一節
文豪夏目漱石の1906年の作品「草枕」の冒頭の一節が、突然思い出されました。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向う三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はない。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。あらゆる芸術の士は人の世を長閑にし、人の心を豊かにするだけに尊い。 ・・・・・・
「草枕」は、100年以上も前の日露戦争直後の作品です。 2022/3/7掲載