145. 自由な遊びが子どもの社会性を育む 4月号

2020/3/9

新型コロナ感染症の流行で休校、休園となり、子どもたちは自宅に閉じ込められています。幸い、屋外での遊びは、室内遊戯に比べて感染機会がはるかに減りますので、発熱や咳などの風邪症状がなければ、校庭や公園など、人ごみのない屋外で、遊ばすようにしたいものです。

遊びの中でも、ルールの確立しているゲームをスクールやクラブでコーチから系統だった指導を受けていると、上達は早く、自らの上達の度合いもわかりやすいのですが、子どもたちが自発的に始めた、ごっこ遊びのようなルールのない空想力にまかせた遊び(自由遊び)、創造的な遊びの方が、発達中の脳にとってはずっとよい刺激になります。

塾や習い事、スポーツクラブもお休みの今こそ、子ども自身で学び、遊びを考え、親と子の絆を強めるいい機会です。この体験が、大人になった時に、ストレスに対処し、問題解決に役立つことでしょう。

パンドラの箱を逃れる

Escaping Pandora’s Box — Another Novel Coronavirus David M. Morens, M.D., Peter Daszak, Ph.D., and Jeffery K. Taubenberger, M.D., Ph.D. The New England Journal of Medicine, on March 7, 2020.


著者らは、新規コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行の拡大は、1918年のインフルエンザのパンデミック以来の重大事として捉えています。パンドラの箱はすでに開けられてしまっていますが、私たちはその災厄を最小限に食い止めるための努力が必要です。と歴史的考察を加えて警告しています。

今回のパンデミックでは、発症前または無症候性の症例が他の人にウイルスを伝播させるので、感染者のうち感染源が不特定の者の割合が高いという防疫上の難しさがあります。公衆衛生面での取り組みでいずれは収束するかもしれませんが、近い将来、SARS-CoV-2はさらに姿を変えて、人間を襲いかかってくるのは必至です。

地球環境が大きく変化していく中で、ウイルス遺伝子はどんどん変異していますが、人間の遺伝子の変化は遅々たるものです。ノーベル賞受賞者のジョシュア・レーダーバーグが新興感染症について語った有名な言葉、「それは我々の知恵とウイルス遺伝子の戦いだ」が、実感されます。これまでのパンデミックを歴史的に考察したこの論文は、現代人に向けた示唆に富む内容のものです。

その広がりの様子を的確に把握することができなければ、パンデミックを予防できません。それには、今できるウイルス検査をより積極的に進め、この問いへの答えを出すことが必須です。日本の検査体制は、中国や韓国での取り組みに比べて数段劣ります。手遅れになるまでそこに到着していることに気づかないでは困るのです。


概要:

世界保健機関は、新規コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行の国際的な拡大を懸念し、公衆衛生緊急事態と宣言しました。 公衆衛生面での取り組みがウイルスの広がりを制御できない場合には、致命的な世界的大流行の発生をすぐに目撃することになります。

パンドラの箱のギリシャ神話(実際には壺?)が思い浮かびます。神はパンドラに、決して開けることのできないロックされた壷を与えました。 それにもかかわらず、パンドラは人間の弱さによって動かされ、それを開けて、世界中に不幸と疫病を解き放ちました。

私たち科学者は、SARS-CoV-2はまだ壷から逃げていないと思っています。著者らは現時点で、症例数の増加と地理的拡大から、Covid-19の出現の初期段階という形で認識しており、1918年のパンデミックインフルエンザの始まりと驚くほど類似性していると言います。 ともに、呼吸器への広がりであり、発症前または無症候性の症例が他の人にウイルスを伝播させ、感染者のうち感染源が特定の者の割合が高く、また高い死亡率も似ています。

私たちは、二次感染を防ぐための患者とその濃厚接触者の隔離など、発生がパンデミックになるのを防ぐために迅速な公衆衛生措置を取っています。 しかし、これらの取り組みで十分だろうか? ほとんどの専門家は、そのような措置だけでは1918年のインフルエンザのパンデミックを防ぐことができなかったと考えています。

実際、過去1世紀の間に、予防接種や抗ウイルス薬を使用した場合でも、コミュニティ・レベルでのインフルエンザの広がりを完全に防ぐことができていません。 問題は、ほとんどのインフルエンザ患者が、無症候性か症状に乏しく、未診断時に、または症状が出る前に感染していることです。 おそらく潜伏期間と増殖時間が長いウイルスであるSARS-CoV-2は、確定症例に対する未確定症例の割合が未定であり、無症候性患者による拡散率は不明です。 その広がりの様子を把握することができなければ、パンデミックを予防できないという閾値を超えてしまいます。この問への答えが出なければ、手遅れになるまでそこに到着していることがわからないのです。

運が良ければ、公衆衛生管理措置により悪魔を瓶に戻すことができるかもしれません。 そうでない場合、1世紀前のインフルエンザのパンデミックによって引き起こされるものと同等または恐らくそれよりも大きな困難に直面することになります。

故ノーベル賞受賞者のジョシュア・レーダーバーグが新興感染症について語った有名な言葉があります、「それは我々の知恵とウイルス遺伝子の戦いだ」と。 現在、ウイルスの遺伝子は、人間への感染力を高め、これまでのところ、すべての秘密を明かすことなく、無言の広がりをみせ、私たちを無視しています。 しかし、私達は少しずつながら追いついています。

古代ギリシアの詩人ヘシオドスが述べている、「パンドラは壷の唇の下に立ちはだかると、災厄が一気に飛び散ることはなかった」と言う話を信じて、前進しましょう。

参考資料: 「パンドラの箱」は、もともとギリシャ神話から来た言葉です。 神ゼウスは、まだ人間というものに男性しか存在せず、災難というものが無かった世界に、パンドラという名前の最初の女性をおくります。 すべての悪と災いを封入した箱を持たせて。 パンドラは地上に着くと、好奇心からその箱を開けてしまい、あらゆる人間の不幸、病気がまき散らされてしまったとのことです。しかし、古代ギリシアの詩人ヘシオドスは、パンドラは壷の唇の下に立ちはだかり、災厄が一気に飛び散ることはなかったと述べています。


2020.3.8

Drive-through testing in Korea by CNN

South Korea pioneers coronavirus drive-through testing station – CNN.com  By Ivan Watson and Sophie Jeong, CNN    Updated 0515 GMT (1315 HKT) March 3, 2020


 3月3日のCNNニュースによると、韓国では、確認された症例の数は2週間で31人から4,200人以上に急増し、少なくとも26人がこの病気で死亡しています。危機対応として、韓国には500を超えるコロナウイルス検査サイトがあり、10万人以上が検査されています。

鼻咽頭からの検体採取用のドライブスルーが、2月26日にオープンしています。この種のドライブスルーは韓国で最初のものであり、1日で384人もの人々をテストしたそうです。

保護用のプラスチック製のスーツ、マスク、およびフェイスシールドを着用した看護師がドライバーを登録し、体温をチェックした後、綿棒を使用して喉と鼻道からサンプルを採取するいくつかのステーションに向かうようになっています。


中村のコメント:今回のCOVID-19の流行では、湖北省やDiamond Princessで多くの医療関係者と検疫関係の方々が感染しています。私自身も新型インフルエンザ流行時の経験から、一度に多数の患者が受診されたときに、室内で連続して検体採取を行なっていると、いくら細心の注意を払っても、患者間、採取者の感染を心配していました。病院や診療所よりもドライブスルーでウイルスをテストする方がはるかに安全で、迅速だと思います。日本でも疑わしい患者を特定の場所で行えばいいと思います。多検体採取をするようになったら。。。。


2020/3/6

自由遊びが子どもの社会性を育む

新型コロナ感染症の流行で世界中の子どもたちが自宅に閉じこもっています。幸い屋外での遊びは、室内遊戯に比べて感染機会がはるかに減りますので、発熱や咳などの風邪症状がなければ、校庭や公園など、人ごみのない屋外で、遊ばすようにしたいものです。

これまでの遊びに関する研究から、ヒトでも動物でも、ルールのない空想力にまかせた遊び(自由遊び)のない幼年期を過ごしていると、正常な社会的・感情的・知能的発達が妨げられ、大人になった時に、ストレスに対処し、問題解決などの知的スキルを身につけることができず、周囲に適応した幸せな大人に育ちにくいと言われています。

科学文明の進化により、子どもの自由遊びの時間は、昔に比べ極端に短くなっています。子どもをよい大学に入れるために、両親は遊びの時間を削って、子どもにより系統だった活動をさせようと躍起です。幼稚園児から、子どもの放課後の時間は音楽やスポーツなどのおけいこごとで埋め尽くされています。遊びの中でも、ルールのあるゲームをスクールやクラブでコーチから系統だった指導を受けていると、上達は早く、自らの上達の度合いもわかりやすく、おもしろいものですが、子どもたちが自発的に始めた、ごっこ遊びのようなルールのない、創造的な遊びの方が発達中の脳にとってはずっとよい刺激になります。

多くの子どもたち、特に男の子は、取っ組み合いが大好きです。見ていると、交代で勝者になっています。子どもたちはギブ・アンド・テイクなどの社会的スキルを自然に学んでおり、創造性や問題解決能力の発達に役立っています。子どもたちの自発的な荒っぽい空想遊びで、かすり傷をつくったり、骨折したりするのには目をつむり、社会的な遊びの経験を幼児期から積ませておくと、予測できない社会的環境に対処できる大人に育っていくでしょう。

大人の監督なしに、子どもを外で遊ばすのをためらわざるを得ない時代になりましたが、やがては、その子どもたちも予測不可能な複雑な社会に出て行かねばなりません。  2020/3/6

参照資料:日経サイエンス232、認知科学で探る心の成長と発達、2019年4月

144c. 新型コロナによる休校の影響を減すために

新型コロナ感染症の流行に伴い長期間に及ぶ休校で、子どもたちが家に閉じ込められていると、身体活動が少なくなり、スマホやテレビ画面を見ている時間が長くなり、睡眠パターンが不規則になり、食事が不規則になることから、体重が増加し、心肺機能が低下します。

注意しなければいけないのが、子どもや青年への心理的影響です。長期間にわたる感染の恐れ、欲求不満と退屈、不十分な情報、クラスメート・友人・教師との対面接触の欠如、自宅の個人スペースの欠如、家族の経済的損失などのストレス要因が、子どもたちに永続的な影響を与える可能性が心配されます。

子どもは、絶えずウイルス流行関連のニュースにさらされているため、これらの問題について子どもと直接会話することで不安を軽減し、パニックを回避することができます。適切な子育てアプローチにより、家族の絆が強化され、子どもの心理的ニーズが満たされるのです。


2020/3/3

COVID-19流行時の子どもに対する自宅監禁の影響を軽減するために

Mitigate the effects of home confinement on children during the COVID-19 outbreak. Lancet, Published online March 3, 2020  Guanghai Wang, Yunting Zhang, Jin Zhao, Jun Zhang, 中国上海交通大学医学部付属上海小児医療センター、小児トランスレーショナルメディシン研究所、発達・行動小児科


中村のコメント;

中国では、オンラインコースでテレビ放送やインターネットを通じて、新しいバーチャルな学期を国内の多くの地域で提供し始めており、多くの親が懸念している子どもの教育達成への不安を軽減するのに役立っているそうです。

著者たちは、COVID-19の流行に伴う学校閉鎖や自宅監禁に関連する問題として、子どもや青年に与える身体的および精神的影響を取り上げ、子どもたちへの長期的な悪影響を回避するために、細心の注意と多大な努力が必要と言い、地元の専門家による組織活動を求めています。


本文:

コロナウイルス病2019(COVID-19)の発生に対応して、中国政府は、感染の拡大を防ぐための緊急措置として全国的な学校閉鎖を命じました。公共の活動は禁止されています。2億2千万人以上の子どもと青少年が自宅に閉じ込められていると推定されます。これには、1億8,000万人の小中学生と4,700万人の未就学児が含まれています。中国の強力な行政システムは、緊急ホームスクーリング計画を厳密に実施しています。あらゆるレベルの学校および教師が、オンラインコースでテレビ放送やインターネットを通じて配信しており、新しい仮想学期は国内の多くの地域で提供され始めています。これは、子どもの教育達成に対する多くの親の懸念を軽減するのに役立っているようです。

子どもの身体的および精神的健康に悪影響

長期の学校閉鎖と自宅監禁は、子どもの身体的および精神的健康に悪影響を及ぼす可能性が懸念されます。 これまでの経験から、週末や夏休みなど学校が休みになると、身体活動が少なくなり、スクリーン画面を見ている時間が長くなり、睡眠パターンが不規則になり、食事が不規則になることから、体重が増加し、心肺機能が低下することを私たちは知っています。 今回のように、アウトブレイク中には屋外での活動や同年配の友人とのやり取りができず、子どもたちが家に閉じ込められていると、さらに悪化する可能性があります。より重要ではありますが、無視されている問題は、子どもや青年への心理的影響でしょう。長期間にわたる感染への恐れ、欲求不満と退屈、不十分な情報、クラスメート・友人・教師との対面接触の欠如、自宅の個人スペースの欠如、家族の経済的損失などのストレス要因が問題となり、永続的な影響を与える可能性が心配されます。

Sprang & Silmanは、検疫を受けていない子どもよりも検疫を受けた子どもの方が、心的外傷後ストレスの平均スコアが4倍高いことを示したと報告しています。生活スタイルの変化と家庭への閉じ込めによって引き起される心理社会的ストレスは、子どもの身体的および精神的健康に対する有害な影響をさらに悪化させ、悪循環を引き起こす可能性があります。自宅監禁の悪影響を緩和するためには、政府、非政府組織(NGO)、コミュニティ、学校および保護者が、状況のマイナス面をよく認識し、この問題にすぐに効果的に対処するために、さらに努力する必要があります。

中国政府は、この異常な期間中に、自宅監禁の潜在的な身体的および精神的健康への影響に関する認識を高める必要があります。政府はまた、効果的なオンライン学習のガイドラインと原則を提供し、コースの内容が教育要件を満たしていることを確認する必要があります。しかし、生徒に負担をかけないことが大切です。政府は、おそらくNGOを含む既存のリソースを動員し、学校が選択できる健康的なライフスタイルと心理社会的サポートプログラムに関する最高のオンライン教育コースを収集するためのプラットフォームを作成することでしょう。たとえば、より良い学習体験のための革新的なコースに加えて、身体活動を増やし、バランスの取れた食事、定期的な睡眠パターン、および良好な個人衛生を確保するためのプロモーションビデオができれば、家庭で健康的なライフスタイルを持つように子どもを動機付けるのに役立ちます。これらの教材が本当に効果的を発揮するためには、年齢に合った魅力的なものでなければなりません。作成には専門知識と実際のリソースが必要なのです。

コミュニティは、家族の問題の難しさを管理する上で貴重なリソースとして役立ちます。たとえば、保護者の委員会が協力して、生徒のニーズと学校の要件を橋渡しし、健康的なライフスタイルに対する子どもの権利を擁護することができます。心理学者は、家庭内紛争、親との緊張、感染からの不安に起因するメンタルヘルスの問題に対処するためのオンラインサービスを提供できます。ソーシャルワーカーは、必要に応じて、状況から生じる家族の問題に親が対処するのを支援する積極的な役割を果たすことができます。このような社会的セーフティネットは、恵まれない家庭やひとり親家庭に特に役立つ可能性がありますが、彼らがアクセスできるようにするための行動が必要です。

学校は、子どもたちに教材を提供するだけでなく、生徒が教師と交流し、心理カウンセリングを受ける機会を提供するという重要な役割を担っています。学校は、健康に配慮したスケジュール、良好な個人衛生を積極的に促進し、身体活動、適切な食事、および良好な睡眠習慣を奨励し、そのような健康促進資料を学校のカリキュラムに統合できます。

家庭に閉じ込められた場合、親は、多くの場合、子供が助けを求めるための最も近くて最良の相手です。子どもとの密接で開かれた関係が、身体的および心理的問題を特定し、子どもを長期間隔離するための鍵となります。親は、子どもの健康な行動においてしばしば重要な役割モデルです。子どもが家に閉じ込められているときには、良い子育てスキルが特に重要です。子どものパフォーマンスと行動を監視することに加えて、親自身が自らのアイデンティティとニーズを明確にすることが、子どもたちの自己規律のスキル開発を助けることになります。子どもは常にウイルス流行関連のニュースにさらされているため、これらの問題について子どもと直接会話することで不安を軽減し、パニックを回避することができ、子どもの活動性や自己満足感を向上させます。適切な子育てアプローチにより、家族の絆が強化され、子どもの心理的ニーズが満たされるのです。

子どもたちは、環境リスクに脆弱であり、身体的健康、精神的健康、および成人期の生産性が初期の環境に深く関わっていることから、これらの緊急問題に効果的に対処し、子供への長期的な悪影響を回避するための細心の注意と多大な努力が必要です。管理システムと地域およびコミュニティ環境へ介入するための、文化的に適応した持続可能なプログラムづくりには地元の専門家の関与が必要です。

最後に、子どもたちは自分のニーズを主張する声を滅多に上げません。すべての子どもたちが直面している「不確実性」に備えるための全体的な戦略を考えねばなりません。 COVID-19の流行が子どもや青年に与える身体的および精神的影響を最小限に抑えることは、政府から親まで、すべてのステークホルダーの責任です。 直ぐにアクションすることです。



 2020/3/3

Coronavirus Disease 2019 and Influenza in USA

コロナウイルス病2019(COVID-19)の流行には多大な注意が払われていますが、中国のある特定の地域では非常に深刻ですが、その地域以外での臨床的影響は限られているようです。 COVID-19に関する議論で見失なってはならないのは、米国がすでに16,000人以上の死者を出した深刻なインフルエンザシーズンを経験しているという事実です。 このJAMAインフォグラフィックは、2つの疾患の発生率と死亡率を比較したいます。インフルエンザによる入院患者も28万人の及んでいます。小児においても、103名のインフルエンザ関連死がありました。(Coronavirus Disease 2019 and Influenza, JAMA Network, FEBRUARY 29, 2020 )

私のコメント:日本においても、阪神北広域こども初期急病センターでは昨年12月初め頃よりインフルエンザBの受診者増加が続いています。幸い重症化している小児は少ないようです。


2020/2/29

これからどうなる? コロナウイルス病2019 (COVID-19)

今回のCOVID-19の流行においては、軽症例・無症状者が多いと言われています。兵庫県や西日本で感染者が出ないのは? 検査検体数の開示がないので、なんとも言えません。検査検体数が少ないことや、PCR検査の感度や手技が判定に影響するという武漢からのレポートが出ていますので、不確実な面もあります。実際に、感染者がいないなら結構なことです。

これまでのインフルエンザ流行では、いつも患者数は小児・若年者が多く、死亡数は圧倒的に70歳以上という特徴がありました。今回のCOVID-19流行では、小児の感染例はあまり問題となっていません。検査能力の関係で重症の肺炎患者しか検査が実施されておらず、小児の感染陽性例がスルーされているのかも知れません。学校での集団発生が報告されていないのが幸いです。

ともあれ、全国の小中高校や特別支援学校を臨時休校という政府の判断は、流行を抑えるという面で的確であると思います。私たちは、インフルエンザの大流行時でも春休みに入った途端に患者数が激減するのをこれまでに体験しています。今回の決定は極めて唐突で、家庭でどう過ごさすかという問題で親は悩んでいますが、それを解決するのは政治です。まず、校庭を開放し、健康チェックと狭い場所に生徒が集まらないように工夫をすれば、感染の機会はぐんと減ります。2週間の一斉休校で、良い方向に向くことを願っています。


2020年2月28日

COVID-19から回復した患者でRT-PCRテストの陽性化が起った

武漢大学中南病院のLan Lan, Haibo Xuら、JAMA Published online February 27, 2020  RESEARCH LETTER; Positive RT-PCR Test Results in Patients Recovered From COVID-19


中国で、退院または検疫の中止の基準(臨床症状と放射線異常の非存在、連続2回のRT-PCRテスト結果の陰性)を満たしたCOVID-19の4人の患者(いずれも軽症例)が、5〜13日後のRT-PCRテスト結果が陽性であったと報告された。患者の内訳は、COVID-19の自宅で隔離された1人の入院患者と3人の患者(すべて医療関係者)で、2020年1月1日から2020年2月15日まで、中国武漢の武漢大学中南病院で治療を受けている。

RT-PCRテストは、喉のスワブで実施された。中国疾病管理予防センターによって推奨されているRT-PCRテストキット(BioGerm)が用いられた。すべてのRT-PCRテストには、同じ技術者とブランドのテストキットが使用された。内部対照と陰性対照の両方が、テストの各バッチで定期的に実行されている。

この4例はいずれも軽症例であるので、今後は重症例においても、病院からの退院または隔離の中止および継続的な患者管理において注意するとともに、現在の基準を再評価も行う必要がある。


2020/2/27

144b 感染症予防には、正しい手洗いを

例年流行するインフルエンザに加え、今年は新型コロナウイルスの流行拡大が心配されます。あなた自身への感染を防ぐとともに、家族・子どもや周囲の人々に感染を広げないことが大切です。感染のリスクを回避するには、

  • 不要不急の外出を控え、特に狭い場所に多くの人が集まる所には出かけない。
  • 頻繁に石けんをつかった手洗いをする、または手指消毒用アルコールを頻繁に使用することで、ウイルスの除去に努めること。
  • 咳やくしゃみの症状がある際はマスクをすること。マスクをしていない場合は、咳やくしゃみの際にティッシュなどで口と鼻を覆うこと(咳エチケット)。なお、使用済のマスクやティッシュからウイルスが伝染しないよう、適切に処分し、毎回新しいものを使用するようにしたいものです。

2020/2/26