21世紀に生きる君たちへ

これは、作家司馬遼太郎さんが最後に子どもたちに書き遺したメッセージ、1999年に小学校用教科書用の書き下ろし作品のタイトルです。その一部を紹介すると、

「人間は、自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされている。」と、中世の人々は、ヨーロッパにおいても、東洋においても自然に対してへりくだって考えていた。

この自然へのすなおな態度こそ、21世紀への希望であり、君たちへの期待でもある。そういう素直さを君たちが持ち、その気分を広めてほしいのである。

そうなれば、21世紀の人間は、前世紀にもまして尊敬し合うようになるにちがいない。そのようになることが、君たちへの私の期待でもある。

21世紀に入り、すでに4分の一が経った今

司馬遼太郎の思いとは、全く逆の社会に、世界も、日本も進んでいます。

自然への畏怖の念どころか、いかに自然を克服するかが至上命題のように現代人は振る舞っている気がします。

とりわけ、AIの出現は、人間が自然の一部であることを忘れさせたようです。なにか勘違いして、おごり昂っています。

地球が汚れてしまえば、他の星へ移動すればとよいとの考えもあるようですが、それではもう人間ではないでしょう。

50年後には、高齢化の波も終わり、若者たちが賑やかに神輿を担いでいる活気ある日本の姿を夢見ています。    2025.2.22.

インドネシアからの留学生が母校の教授に就任

Dr. Sutomoさんが、インドネシアのYogyakarta にあるガジャマダ大学Universitas Gadjah Mada (UGM)の小児科学教授に就任したという知らせを受けました。

その就任記念式典が18日に開催され、Zoomでの参加も可能であったので、私も参加させて頂きました。会場の参列者はみな、アカデミックドレスを着用し、頭には角帽と、ヨーロッパの学校の伝統的衣装を纏い、大変厳かなものでした。インドネシア文化とヨーロッパ文化の融合している様は大変興味深いものでした。

Developmental, Behavioral, and Social Pediatrics

彼が、世界的にみて小児医学分野で最も社会的ニーズの高い、Developmental, Behavioral, and Social Pediatricsを専門にされていることは、将来が楽しみです。先進国を含めた国々のリーダーとしての活躍を期待しています。

神戸大学医学部とUniversitas Gadjah Mada医学部

神戸大学医学部とUniversitas Gadjah Mada医学部との関係は深く、その始まりは1970年代に遡ります。私が現役時代に一緒に学んだ4人の留学生たち、Prof. Surjono, Prof. Boutiman, Prof. Purunomo, Prof. Sunartiniも、神戸大学で医学博士の称号を授与され、母国の医学発展の中心人物として活躍されていました。残念なことにみなさん他界されました。

今後は、Prof. Sutomoさんが、彼らの分まで引き継いでほしいと思います。

2025.2.20.

An International Student from Indonesia Becomes a Professor at His Alma Mater

We have received news that for the second consecutive generation, Dr. Sutomo has been appointed as a professor of pediatrics at Universitas Gadjah Mada (UGM) in Yogyakarta, Indonesia.

The inauguration ceremony was held on the 18th, and as it was also accessible via Zoom, I had the opportunity to attend. All attendees at the venue wore academic dress, complete with mortarboards, following the traditional European academic attire, making the event a highly solemn occasion. It was fascinating to witness the fusion of Indonesian and European cultures.

Developmental, Behavioral, and Social Pediatrics

It is exciting to see that he specializes in Developmental, Behavioral, and Social Pediatrics, one of the most socially needed fields in pediatric medicine worldwide. I look forward to his contributions as a leader in this field, not only in Indonesia but also on the global stage, including developed countries.

Kobe University School and Universitas Gadjah Mada (UGM)

The relationship between the Kobe University School of Medicine and the Universitas Gadjah Mada (UGM) School of Medicine runs deep, dating back to the 1970s.

During my active years, I had the opportunity to study alongside four international students—Prof. Surjono, Prof. Boutiman, Prof. Purnomo, and Prof. Sunartini—who all earned their Doctor of Medicine degrees at Kobe University and went on to play central roles in the advancement of medicine in their home country.

Unfortunately, they have all passed away. I sincerely hope that Prof. Sutomo will carry on their legacy and continue their contributions to the field.

2025.2.20.

Gouffre de Padiracの思い出

本棚の書籍・論文・写真を整理していると、パリ留学時代のアルバムが見つかりました。これは、毎月道子が子どもたちの手紙や絵と一緒に、日本に送っていたネガフィルムを、私の母がプリントし、アルバムとして整理してくれていたものです。

その中に、帰国前に訪れたフランス南西部のLe Lot(ロット県)にある地下洞窟Gouffre de Padirac(ゴッフル・ド・パディラック)を訪れた時の写真を見つけました。Le Lotは、フランス南西部のオクシタニー地域圏にある県で、美しい自然・歴史的な町や村・美食で知られるフランスでも人気のある観光地です。

Screenshot

この地域は、石灰岩でできており、多くの地下洞窟やフランス中世のお城が散在しています。車でないと訪れることができませんが、フランスの田舎の美しさと歴史、グルメを堪能できる魅力的な地域です。もう一度ゆっくりと行ってみたいところです。 2025.2.18.

国際化とは一体何なのか

寒波襲来で、このところ冬眠生活を送っていましたが、寒さが緩んだのを機に、昔馴染みの仲間とランチをするために、朝から大阪に出かけました。

様変わりした大阪駅

先ず驚いたのは、大阪駅に着くと、様変わりしており、天井は高く・明るい、昔とは違う駅の雰囲気に驚き、アナウンスを頼りにと耳を傾けるが分かりません。よく聞けば、日本語ではなく、中国語なのです。大きなトランクを引きずっている歩行者も外国人です。

マスコミの最大の話題は、日本製鉄による「USスチール」の買収計画をめぐり、トランプ大統領まで絡んできたというニュースです。日本人としては、高度経済成長期を彷彿させ、悪くない気分です。

中国や日本から米国への投資は話題になっていますが、中国人の日本への投資はあまり話題になっていません。中国通のKさんの話では、大阪のミナミはチャイナタウン化しつつあり、高層ビルの高層階は外国人が抑えているとのことです。

神戸に住んでいても、最近外国人の顔をよく見かけます。外国人と言えば、インバウンドによる経済効果、若者数が減った分を外国人が労働力として役立っているといったポジティブな面ばかりが取り上げられていますが、気がつけばこれまで単一民族と考えていた日本が、いろんな民族の集まりである多民族国家になっているかもしれません。

「DEI」を企業理念としてだけでなく、日常社会生活における基本理念として

トランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」を旗印に、「Diversity(ダイバーシティ、多様性)」を否定し、マイノリティー優遇の推進に待ったをかけています。日本人である私には理解できない主張ですが、今日の大阪の街を見ていると日本でも同じような意見が出て来そうな気がします。

日本においても、戦時中や戦後しばらくは隣国の韓国人や中国人に対する偏見がありましたが、今では人種差別が話題になることはほとんどなくなりました。多民族国家化する日本で、Diversity(多様性)・Equity(公平性)・Inclusion(包括性)の頭文字からなる略称「DEI」を、企業理念としてだけでなく、日常社会生活における基本理念として忘れないようしたいと思います。  2025.2.13.

ドクター・イエローの引退とともに

新幹線の安全を長年にわたり監視し続けていたドクター・イエローの引退報道がありました。同時に、我々の研究グループが50年前に開発した新生児の黄疸管理機器「UB測定器」も、引退の時期を迎えたようです。

私の研究仲間の岩谷医師から、今春ハワイで開催されるアメリカ小児科学会に応募していた「黄疸に関する論文」が優秀論文として採択され、口頭発表になったという知らせを受けました。

UBアナライザーの役割も

新生児の脳障害である「核黄疸」を予知するために、微量血液成分UBの専用測定器であるUBアナライザーを半世紀前に開発して、今では日本国内の大半のNICUで用いられ、欧米でも高い評価を得てきました。

今回の論文の内容は、我々が考案し、慣れ親しんできたこの黄疸検査法をルーチンに用いなくても、新生児全身管理に日常的に用いられて血清ビリルビン値と血清アルブミン値でほぼ代替できるという内容です。臨床医学分野では、これまでに蓄積された膨大なデータから、何が患者にとって本当に「必要・不可欠」な検査であるかを見直す時代に入ったように感じます。

新しい時代への変化に合わせて

50年間慣れ親しんできたUB測定で核黄疸による新生児脳障害は激減し、今では全くみられなくなりました。ドクター・イエローの引退も、UBによる黄疸評価の引退も、時の流れのような気がします。

これらの引退によって、安全性が疎かにならないことを念じています。

2025.2.6.

トランプ米大統領が「常識の革命」を宣言

ドナルド・トランプ米大統領は、先の世界経済フォーラム(ダボス会議)にオンラインで参加し、インフレの逆転・化石燃料生産の促進・人工知能(AI)や暗号通貨分野でのリーダーシップを約束し、「常識の革命」を宣言しました。

この大胆な発言は、世界中を唖然とさせたのではないかと思います。彼の具体的な政策には賛同しかねますが、何だか爽快感さえあります。

「常識の革命」はいつも必要なこと

私は、若い時から「常識」に縛られた生活は馴染めませんでした。これだけ世の中の移り変わりの激しい現代生活では、昨日の常識はもう今日の常識ではなくなっているからです。

私が関係していた医療の世界では、文明化が進んだ中で新しい医療技術・機器が次々と導入され、医療のマニュアル化、均一化が進みました。

現役時代の私は、マニュアル化が医療水準の維持・向上に役立つと考えていました。しかし、医療の進化があまりにも早いので、マニュアルが完成した時にはもう新しい手法での医療が行われていたのを思い出します。マニュアルが常識化すると、向上への妨げになると今では反省しています。

今の時代はAI時代です。あるゆる分野にAIが導入され、何もかも「常識の革命」が求められる時代です。私は、あと何年間生き続けるかわかりませんが、どんな世の中が待ち受けているのか楽しみです。

2025.2.1.  85歳になる。