伊達正宗公の五常訓

20年近く前に、仙台を訪れた際に、立ち寄った松島にある瑞巌寺で、「伊達正宗の五常訓」を書き記した額を買い、我が家に壁に掲げています。

仁に過ぐれば弱くなる。
義に過ぐれば固くなる。
禮(れい)に過ぐれば諂(へつらい)となる。
智に過ぐれば嘘をつく。
信に過ぐれば損をする。

伊達政宗は、戦国末期の安土桃山時代から江戸初期にかけての武将。米沢城主であり、のちの仙台城主です。幼少のころに疱瘡(天然痘)の毒が入って、右目を失明したと伝えられています。

この政宗公の遺訓は、は、儒教の基本的な”五つの徳目「五常」”をさし、孔子が「仁と礼」を説いた後、孟子が「仁義礼智」の四つを説きます。その後、漢の蕫仲舒(とうちゅうじょ)が、これに「信」を加えて、「五常」になったそうです。

現代人に当てはめて考えてみると、何事にも「ほどよく」行動するのが苦手な感じがします。その根源はマスコミ報道に由来している気がします。単純化しないと読者の興味を引かないために、ワンパターンの偏った論調になりがちです。世間と反対意見を述べれば叩かれる、非民主主義社会に成りつつあるような気がしてなりません。

2024.1.30.

4年ぶりの同門会に出席して

先週末に、神戸大小児科の現役・OBの集いである同門会がありました。実に4年ぶりの再会です。出席者は、100人余り、今春から入会する気鋭の若手医師から全国各地で活躍している幅広い年代層の集まりです。もう私より年長者は、お一人だけでした。

会合への初見参の若手医師たちの自己紹介で、その輝かしい目の輝きを見ていると、これからの日本の小児医療も安泰であるという思いを強くしました。頼もしい限りです。気掛かりなのは、多忙な勤務に追われている中間世代の出席者が少なかったことです。

同門会員の大半は、地域小児医療の最前線で活躍している小児科医です。現在兵庫県小児科医会の会長として活躍しておられる藤田先生が、「今後の小児医療のkeywordとなるのが、bio-psycho-social well-beingとCommunity Pediatrics」とスピーチされたのが印象的でした。

日本の2023年度の出生数は70万人になり、ますます減少し続けます。だからこそ、生まれてきた子一人一人が、健康に育つように我々小児科医の役割がますます重要になっているのです。

2024.1.29.

 

寒中お見舞い申し上げます。

厳しい寒さに向かう折ですが、いかがお過ごしでしょうか。
新年早々の能登半島大地震の揺れ、阪神・淡路大震災がフラッシュバックされました。

道子が亡くなり、はや4か月が経過しました。あらためてみなさまの生前のご厚情に対して深く感謝申し上げます。さる21日には、息子・娘・孫たちの立会いのもと、尼崎市如来院の墓地に、お骨納めも無事に終了しました。

私にとっては、1か月足らずでしたが、高齢者施設で共に過ごせた時間が、大切な思い出になっています。今は、自宅に戻り、買い物・料理にもなれ、娘透子が傍にいてくれるために、元気に生活しております。

新型コロナも第5類になったために、外出が容易となり、月2回の神戸しあわせの村にある障害児者福祉センター「にこにこ」の役員会に出席し、神戸大学の友人の誘いで週2回の東灘区民ホールでの囲碁同好会に、最近増えてきた友人とのお食事会にと退屈せずに過ごしています。

みなさまのご健康、ご多幸を心よりお祈り申し上げます。

2024.1.23.

阪神・淡路大震災で学んだ子どものこころのケア

新年早々の能登半島地震による揺れ、思わず阪神・淡路大震災を思い浮かべました。PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が、広く知られるようになったのが阪神・淡路大震災の時です。

大災害が子どものこころに大きな影響を与えるのは、災害の正体が分からず、また、自分で対処できる範囲も限られているため、余計に不安になっているからです。

怖い体験や喪失体験(親しい人との別離、住居の破壊、生活環境の変化、おもちゃ・人形の紛失など)あるいは、長期にわたる避難生活は、子どもにとって強い苦痛となり、身体症状や行動上の問題として表われます。

これらの反応そのものは、誰にでも認められるものですが、その苦しみが少しでも和らぐよう、適切な時期に、的確に支援することが必要です。思い出すのは、学校が再開され、クラスメートと久方ぶりに出会ったときの子どもたちの満面の笑顔です。一番の良薬だったようです。

2024.1.17. 連載「子どもの健康コラム」原稿

アメリカ在住の友人からのメール

年が明け、もう月半ば。あっという間に時が流れていきます。

長年アメリカに在住の大学時代の同級生から、新年のメールが届きました。彼女は妻のLINE友達で、週に1度は1時間以上の長話をしていました。今回の私へのメールでは、今年の11月にあるアメリカの大統領選挙についてのコメントです。

現在の推測ではトランプが共和党候補に選ばれそうです。どうしてアメリカ人がトランプのような人を大統領候補に選ぶのかわかりません。バイデン大統領は年齢がいっているし、沢山の移民が不法に入国している事実と、一般国民の毎日の食糧費が高くなっている事等でバイデンはトランプに負けるのではないかと(私個人の意見ですが)、心配をしています。と書かれていました。そのメールへの私の返信として、

あなたは、「アメリカ人がトランプのような人を大統領候補になぜ選ぶのかわかりません。」ということですが、私は、かつて、日本の皇室制は素晴らしいと言う話をアメリカ人の友人から聞いたことがあります。アメリカには天皇陛下がいない。”America First”と連呼するトランプの強い姿が、国民に夢を与えるのでしょう。

一方、日本では、政治資金パーティー券を巡る事件が連日報道されており、内閣支持率は30%を下回っています。でも、誰が首相になっても変わらないと、政治への無関心、諦めムードです。

国民の30%が65歳以上の高齢者、世界で最も長寿国の日本、身動きが取れない感じです。今のところ、高齢者への福祉はほぼ従来通りですが、これがいつまで持つことやら。

これからも、USA便りを楽しみにしています。 2024.1.18.

 

ある老紳士の話

昨春から参加している東灘区囲碁同好会で、4歳上のカッコ良い老紳士と知り合いました。彼は、真夏でも背広姿に蝶ネクタイで会場に現れます。この話を家内すると、囲碁には興味がない妻ですが、大変会いたがっていたのを思い出します。

先日、同じく同好会メンバーの神戸大学工学部名誉教授と二人で、彼の住むマンションに招待されました。門を初めてくぐりと、中はまるでフランスの宮殿のようです。ロビーにあるソファーに腰掛けている彼の姿は、フランス映画から抜け出してきたいぶし銀の男優そのものです。彼は、食品の輸入を手がけ、一代で財を成した実業家だそうです。

最近報道される政界や財界の不祥事に話題が及び、各界トップの責任感と根性のなさに3人で激昂していました。何でも調査委員会任せ、自ら真正面から取り組む姿勢が感じとれないと。

卒寿を迎える彼は、同好会の最長老ですが、囲碁は粘り強く、最後まで諦めることはありません。その心意気は、頼もしい限りです。後輩に勇気と夢を与えてくれます。2024.1.9.

易経のはなし。 衰運から開運に脱出するには,

昨秋に神戸学院大学の博学の西尾久英教授から「易経」を紹介され、早速読み始めたのですが、内容が膨大すぎて枕元に置いたままでした。年末年始の休暇で時間も十分あり、再び手に取ってみました。

「易経」は、四書五経と呼ばれる儒教の経典の一つで、六十四の卦から成り立っています。六十四の卦は、三つの要素、「天」・「人」・「地」の組み合わせ。「天」は陽と陰の相互作用、「人」は仁と義の相互作用、「地」は剛と柔の相互作用でなり、さらに同じ組み合わせをもう一組、合わせて2の4乗、六十四通りで成り立っています。

「火水未済」が今の時勢に相応しい

年頭にあたって、易経最後の六十四番目の「火水未済」が今の時勢に相応しいと感じました。そこに、記述されているのは、

  • 完成した時代から、未完成の時代に移行しました。これから、また新たな完成に向うのです。
  • 急いではなりません。実力を養い、準備を整えて、順次に事を運びましょう。すると、凶運から盛運に向かっていくのです。
  • 最初はできそうにない事も、やがては成し遂げられます。
  • 慎み深さを失えば、良いことは何もありません。
  • 妄動せずに、全員が一致努力して事に臨めば、事態は好転します。
  • 火と水がうまく交わるように、適材適所を計りましょう。

これら三千年前の古代中国の教えは、現日本政府の施策よりも説得力があり、国民に希望を与えてくれるようです。2024.1.2.