十代、二十代の若者たちに人気のAdoの曲、「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」というポップミュージックがレコード大賞優秀作品賞に選ばれ、また年末の紅白でも歌われました。
ポップ・ミュージックには若い頃から関心のなかった私ですが、この曲を年末に初めて耳にし、そのリズムに今までにない強い衝動を覚えました。
テンポが速く、なかなか歌詞が聞き取れないので、ネット検索してみると、「メタモルフォーゼ」という単語を見出しました。
「新時代」の歌詞
新時代はこの未来だ
世界中全部変えてしまえば変えてしまえば
ジャマモノやなものなんて消して
この世とメタモルフォーゼしようぜ
ミュージックキミが起こすマジック
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この歌詞の中に出てくるメタモルフォーゼ(変態)という言葉から、四半世紀前に私自身が学生講義に使っていた一枚のスライド「文明のMetamorphosis」を思い出しました。
サナギからチョウになる変態プロセス
チョウは、サナギの中で幼虫の体の組織が少しずつ変化して、空を飛ぶ美しい成虫に変身します。サナギは成長するのではなく,自らの形態と行動様式を変える変態を行っているのです。われわれ哺乳動物は、個体としてこのような変態プロセスを持ち合わせていません。
人間社会のメタモルフォーシス ゆらぎ社会
戦後の高度成長期の人間社会は, 蝶の変態にたとえていえば、卵から孵化した青虫がどんどん成長してサナギになるまでの過程でした。ところが、ある段階まで成長すると、サナギのように、外目にはじっとして動かなくなったのです。
この変態期には、古い体質と新しい体質が同居して、それまでの発想では収まり切らないものが多発し、「ゆらぎ社会」となったのです。
若者たちが感じている現代社会
最近よく用いられる言葉に,「個性化」や「多様化」があります。これらは一見, 分かったようで、その実よく分からない言葉です。不登校の問題も、児童に問題があるのではなく、昔ながらの教育方法に問題が潜んでおり、子供たちが学校に行きたがらない気持ちが私にはよく理解できます。
昔のような画一的、均質的な標準モデルが当てはまらない社会になっていることだけは確かであり、「新時代」の歌詞から彼らの未来への期待がよく伝わってきます。
Metamorphose は動詞、Metamorphosis は名詞。
2023.1.3.