人工知能(AI)は莫大なエネルギーを消費しています

自宅のパソコンやスマートフォンで、いろんな情報を検索し、アクセスできるのは、人工知能(AI)のお陰です。

現在のパソコンは一瞬のうちに答えを出してきてくれます。手のひらに乗せたゲームソフトで遊んでいても、ほとんど電力を使わず、タダ同然と勘違いしていませんか?

自分の手元での電力消費は確かに僅かでしょうが、どこか遥か離れたところに置かれたサーバーでは大きな電力が使われているのです。

ビットコインは途方もないエネルギーを消費している

ビットコインなどの暗号通貨が、世界中で注目されていますが、価格設定の基本となるマイニングには複雑な数式の計算が必要であり、高い演算能力をもつコンピューター機器を必要とし、途方もないエネルギーを消費するそうです。

現在ビットコインのネットワークに使用されている電力量は、年間1,420億kWh(キロワット時)に達しており、この数値はノルウエー国全体の消費電力量を上回り、世界の電力消費量の0.65%を占めているそうです。

国内のデータセンターの消費電力も増大傾向

2018 年のデータセンターの消費電力は、国内140億kWh(キロワット時)、世界で 1,900億kWh と推定されております(資料2) 。これは、日本全体の総電力消費量1兆kWhの約1.4%に相当します。

現在の計算負荷の増大傾向が、将来にわたって継続し、現在入手可能な最新機器を用いたと仮定すると、2030年には7倍の電力が必要となります。

Google は脱炭素化で事業を運営

Googleが、全世界で使用する電力量は2017年に76億kWh  (キロワット時)にのぼり、前年から20%以上も増加しており、今後も増え続けることは確実だと言われています。

Google は 2030 年までに、地域を問わず 24 時間 365日、カーボンフリー・エネルギーで事業を運営するという社告を出していますが・・・・。

「富岳」が使う電力量は、30メガワット時

「京」の100倍の性能を目指して作られた「富岳」は、省エネ性能を競うGreen500でも9位に付けています。

「富岳」の最大消費電力量は、1時間当たり3万kwhです。4人家族が1ヵ月に使う電力量は400kwhですから、これは1所帯の約6年分(75ヵ月分)に相当します。

AIを上手に活用しよう

AIが進化すれば、電気自動車が静かに走るスマートシティーができ、最新の電子通信機器を用いて、市民生活の無駄が省かれれば、エネルギー消費の減少に直結しそうですが、あまりAIに頼りすぎると、不必要な電力消費を招きそうです。

「脱炭素社会」+「省エネ社会」の実現」へ

世界各地から、異常気候による豪雨災害、高温化による被害が伝えられてきます。地球温暖化対策として、これまでの化石燃料から再生可能エネルギーの導入拡大に向けた国際的な「脱炭素社会の実現」への取り組みが行われています。

より問題なのは、不必要な電力を消費しないことです。SNSなどを通じて、情報が世界中に飛び交っています。ジェット機で移動することを考えれば、省エネにはなっていますが、再生可能エネルギーも有限です。

2021-7-23


資料1. 地球温暖化対策推進法が5月26日に成立

「2050年までの脱炭素社会の実現」を明記した改正地球温暖化対策推進法が5月26日に成立しました。再生可能エネルギーの導入拡大に向け、自治体が「促進区域」を設ける制度を創設し、温室効果ガスの削減とともに地域活性化にもつなげるように、脱炭素目標を法律に位置付けて官民が長期的に取り組み、投資を促す狙いもあるようです。(神戸新聞2021/5/26)

資料2. 情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響

国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センターより 令和3年2月

2018年度提案書では情報化社会の進展に伴う世界の IP トラフィック(インターネット回線網)が 2030 年に現在の30倍以上、2050 年に4,000倍に達する予想を前提として、それに伴う膨大な消費電力増加の可能性を指摘した。

本提案書では、データセンターの消費電力について、その構成機器に着目してどのような設備・機器が、どの程度消費電力の増大に寄与しているかを検討した。

また、トラフィックの増加と計算負荷が関連する業務をベース業務とし、近年比重を増しているディープラーニングなど、トラフィック量とは直接関連しないと思われる業務をAI業務とし分けて検討した。

その結果、2018 年のデータセンターの消費電力は国内14TWh、世界が 190TWh と推定された。さらに、現在の計算負荷の増大傾向が将来にわたって継続し、現在入手可能な最新機器を用いたと仮定したときの(将来の技術進歩は織り込まない)消費電力は、国内が 90 TWh(2030)、12,000 TWh (2050)、世界が3,000 TWh (2030)、500,000 TWh (2050)と推定された。    データセンター消費電力の50%をサーバが、25~30%を電源と冷却系が、次いでストレージが10%程度を占める。特にサーバは将来的にはデータセンター消費電力の60 ~ 80%を占めると推定され、この消費電力の低減が最も重要である。消費電力低減効果が大きいデバイスは CPU、GPUであり、消費電力性能(Gflops /W)として2030年に現在の3~10倍程度、2050年には1,000 倍程度が目標となる。またメモリ、電源、ストレージも 2030年に1/10、2050年に1/1,000 程度への消費電力低減が目標となる。

資料3. Google は脱炭素化で事業を運営

Googleが、全世界で使用する電力量は2017年に76億kWh(キロワット時)にのぼり、前年から20%以上も増加しています。今後も増え続けることは確実です。

気候変動の抑制が求められる中で、電力使用量の増加を可能な限り抑えるとともに、CO2(二酸化炭素)を排出しない自然エネルギーの電力に切り替えることが、Google の事業を持続可能なものにするうえで重要な取り組みになっています。 (自然エネルギー団 Renewable Energy Institute, 2019)

Google は 2030 年までに電力供給を完全に脱炭素化し、地域を問わず 24 時間 365日、カーボンフリー・エネルギーで事業を運営するという新たな道を切り開こうとしているという記事も出しています。(Google 社HPより、https://sustainability.google/intl/ja/progress/energy/)

資料4. ビットコインは途方もないエネルギーを消費している

ビットコインなどの暗号通貨が、世界中で注目されていますが、価格設定の基本となるマイニングには複雑な数式の計算が必要であり、高い演算能力をもつコンピューター機器を必要とし、途方もないエネルギーを消費するそうです。

現在ビットコインのネットワークに使用されている電力量は、年間142テラワットアワー(TWh)であり、この数値はノルウエー国全体の消費電力量を上回り、世界の電力消費量の0.65%を占めています。(Forbes Japan, テクノロジー 2021/05/12より)

資料5. 「富岳」が使う電力量は、30メガワット時

「京」の100倍の性能を目指して作られた「富岳」は、省エネ性能を競うGreen500でも9位に付けています。

「富岳」の最大消費電力量は、1時間で30メガワット時です。4人家族が1ヵ月に使う電力量は400キロワット時ですから、これは約6年分(75ヵ月分)に相当します。

富岳と同じ技術で一段上のエクサ・スケールのスパコンを作るとすれば、その消費電力は200メガ・ワットが必要です。

ちなみに1メガ・ワットの電力消費量をお金に換算すると年間に約1億円になるそうです。つまり200メガワットのスパコンは年間に約200億円の電気料金を必要とします。