なぜ、関西圏でCOVID-19死亡率が高い?

2021-1-25

人口10万人あたりのCovid-19での死亡者数は、11月末までは東京都と大阪府が全国平均の2倍以上でした。12月以後、東京都は全国平均よりも低値となっていますが、大阪府と兵庫県では、12月の初め頃から急にCovid-19での死亡者数の報告件数が急増し、首都圏特に東京に比べて異常に増え続けているのにお気付きの方が多いと思います。

吉村知事もこの点については多くを語られませんので、私なりに検討を加えてみました。

まず、関西圏と首都圏で、昨年11月末まで、12月単月、1月1日から24日までの3つの期間に分けて、感染者数・死亡数を人口10万人あたりに換算して比較しました。

大阪の死亡率は東京の2.63倍

人口10万人あたりの感染者数は、東京都に比較し、大阪府では53%、兵庫県は40%と約半分ですが(1月分)、人口10万人あたりの死亡率は、大阪府では2.63倍、兵庫県は2.36倍(1月分)となっています。

高齢化率は大阪が東京の1.19倍

死亡数の大半が高齢者です。65歳以上の高齢化率は大阪府が東京都の1.19倍、兵庫は1.25倍です。首都圏に比べて、大阪、兵庫では高齢者の比率が多少高いとしても、説明がつきません。

高齢者施設や病院でのクラスター発生の要因は?

関西圏では、高齢者施設や病院でのクラスター発生件数が多いのではないかと推察されますが、府県ごとのクラスター発生数についての資料を見出すことができません。

社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な介護保険施設に関しては、都道府県別施設数・定員数の2019年6月の資料がありました。65歳以上の高齢者人口との比率を算出し、大阪府と東京都とを比較してみました。

介護老人福祉施設(特養)の高齢者人口あたりの定員数は、大阪府と東京都でほとんど変わりませんが、介護老人保健施設の定員数はは大阪府が東京都の1.51倍と多く、介護療養型医療施設は逆に東京都が大阪府より1.59倍多いという結果でした。高齢者施設には、これら公的施設以外に、私的な各種老人向け施設があり、都道府県別の詳細な施設数、定員数はよくわかりません。

私が首都圏と関西圏の違いに拘るわけ

5、6年前に、京都帝国大学の初代小児科教授の平井毓太郎先生のご業績を調べたことがあります。https://boy-hajime.ssl-lolipop.jp/2015/11/13/hirai/ ‎ 大正時代と旧い話になりますが、原因不明の「所謂脳膜炎」で死亡した児が関西だけで相次ぎ、その原因が白粉に含まれる鉛中毒であること平井先生らが突き止められました。

習慣化された日常ケアに案外落とし穴が

その後判明したことですが、関東でも、明治27〜28年頃に同様の「所謂脳膜炎」が多数観察されていましたが、明治36年に勧業博覧会を機に、鉛白粉の危険を察知した白粉製造業者は、関東地域では発売を中止しました。ところが、関東以外の地域では含鉛白粉が廉価であり、またなんの規制もなかったことから、その後20年間も使い続けられ、大きな被害をもたらしたという話が書かれていました。今は、新幹線が走り、インターネットで繋がっている時代ですから、地域間差はないと思われますが、習慣化された日常ケアに案外落とし穴が潜んでいるかも知れません。

高齢者施設では普段の感染症対策の見直しを

感染症が流行すれば、今後もクラスター発生が起こります。高齢者施設では、今回の経験をもとに普段からの感染症対策が望まれます。関西と東京都での高齢者施設のちがいにヒントが隠されているような気がします。