すばらしい未来が楽しみです 最終回

2001年秋から20年間にわたり、年4回の連載「赤ちゃんの四季」が、今回で終わることになりました。少子化が進む中で、赤ちゃんがもつ明るく、夢のある話を、幅広い読者にお届けしたいと、お引き受けしたのを思い出します。

21世紀に入り、脳科学・認知心理学の進歩とともに、人間の脳の微細な構造とその機能が画像で観察できるようになり、乳幼児期の精神運動発達のようすを脳の発達と結びつけて考えることができるようになりました。非行・犯罪・自殺といった思春期の問題も、乳幼児期から学童期にかけての過ごし方と無関係でないこともわかってきました。

子育てで大切なこと、それは赤ちゃんの脳に「他人を信頼する能力」を刻み込むことです。赤ちゃんは、見つめ合いや微笑、表情の模倣を介して学習し、それが人への信頼感を育み、感性豊かな大人になっていくのです。

いま、世界は人工知能(AI)の時代に突入しました。AIのもつ深層学習(Deep Learning)という機能は、人間の脳の働きを模して組み立てられた人工の脳であり、学習したことを記憶として刻み込んでいきます。

AIロボットが、子育ての手助けをする時代がもう目の前まできています。AIロボットに子育ての手助けをしてもらうには、手塚治虫氏の鉄腕アトムのような、「おもいやり」と「あたたかい心」をもったロボットに育てねばなりません。

それには、私たち人間が、AIロボットの良きお手本となる振る舞いをしないと、AIロボットは勝手に「おもいやり」や「あたたかい心」を手に入れることはできません。私たち人間自身の行っている子育てがこれでいいのか、よく振り返ってみることです。

これまで以上に子どもたちを心豊かに育むことにより、互いの人格と個性を尊重し、支え合い、多様なあり方を認め合える新しいデジタル社会が訪れるのを楽しみにしています。

長年にわたり、ご愛読ありがとうございました。
2020-01-08   「赤ちゃんの四季」最終回