映画「スパイの妻」と軍事研究

今年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した『スパイの妻』は、太平洋戦争前夜の神戸を舞台に、国家機密を知ってしまった実業家(高橋一生)とその妻(蒼井優)の、愛と正義に賭けた姿を描く作品です。

ロケ地として、垂水区にある旧グッゲンハイム邸や神戸税関が使用されるなど、レトロモダンで異国情緒あふれる戦前の神戸の風景を楽しむこともできるとのことで、新型コロナ流行下ではありますが、10月末の平日の昼に家内と観に行きました。

1940年、神戸で貿易会社を営む優作が、赴いた満州で、恐ろしい国家機密を偶然知り、正義のため、憲兵隊の監視の目を掻い潜り、事の顛末を世に知らしめようとする話です。恐ろしい国家機密とは、満州で日本軍がペスト菌を用いて人体実験を行っているフイルムのことです。

折しも、日本学術会議のメンバー推薦に対する政府の任命拒否が話題となっています。20173月には、日本学術会議は、大学における「軍事研究」が学問の自由及び学術の健全な発展を脅かすと、「軍事的安全保障研究に関する声明」を出していました。

太平洋戦争を自分の目で見て、戦後を過ごしてきた私には、これまで当たり前と考えていた平和憲法の理念や学問の自由が、戦前へと巻き戻されつつあるように思えてならない今日この頃です。

2020-11-4