自由遊びが子どもの社会性を育む

新型コロナ感染症の流行で世界中の子どもたちが自宅に閉じこもっています。幸い屋外での遊びは、室内遊戯に比べて感染機会がはるかに減りますので、発熱や咳などの風邪症状がなければ、校庭や公園など、人ごみのない屋外で、遊ばすようにしたいものです。

これまでの遊びに関する研究から、ヒトでも動物でも、ルールのない空想力にまかせた遊び(自由遊び)のない幼年期を過ごしていると、正常な社会的・感情的・知能的発達が妨げられ、大人になった時に、ストレスに対処し、問題解決などの知的スキルを身につけることができず、周囲に適応した幸せな大人に育ちにくいと言われています。

科学文明の進化により、子どもの自由遊びの時間は、昔に比べ極端に短くなっています。子どもをよい大学に入れるために、両親は遊びの時間を削って、子どもにより系統だった活動をさせようと躍起です。幼稚園児から、子どもの放課後の時間は音楽やスポーツなどのおけいこごとで埋め尽くされています。遊びの中でも、ルールのあるゲームをスクールやクラブでコーチから系統だった指導を受けていると、上達は早く、自らの上達の度合いもわかりやすく、おもしろいものですが、子どもたちが自発的に始めた、ごっこ遊びのようなルールのない、創造的な遊びの方が発達中の脳にとってはずっとよい刺激になります。

多くの子どもたち、特に男の子は、取っ組み合いが大好きです。見ていると、交代で勝者になっています。子どもたちはギブ・アンド・テイクなどの社会的スキルを自然に学んでおり、創造性や問題解決能力の発達に役立っています。子どもたちの自発的な荒っぽい空想遊びで、かすり傷をつくったり、骨折したりするのには目をつむり、社会的な遊びの経験を幼児期から積ませておくと、予測できない社会的環境に対処できる大人に育っていくでしょう。

大人の監督なしに、子どもを外で遊ばすのをためらわざるを得ない時代になりましたが、やがては、その子どもたちも予測不可能な複雑な社会に出て行かねばなりません。  2020/3/6

参照資料:日経サイエンス232、認知科学で探る心の成長と発達、2019年4月