新型コロナ禍での老人と若者たち

2021-2-13

第3波の新型コロナ流行は、1月7日に非常事態宣言が発令され、見事に感染が抑圧されたようです。しかし、外出自粛を求められ、その非日常的な生活に、老いにも若きにもフラストレーションが溜まっています。

65歳以上の高齢者が新型コロナ死亡者の96%を占めています。高齢者にとっての外出自粛は、自らの命を守るためですが、20代の若者は、たとえ感染しても先ず死亡に至ることはなく、自分の家族や周りの老人を守るためだけに気をつけてくれています。

日本の若者たちは老人おもい

外国に目を向けると、人口1千万人の国、スウェーデンは、積極的な感染防止策をとらなかった国として注目されています。パンデミック以降の感染者数59万人、死者1万2千人が報告されています。人口当たりにして日本と比較すると、感染者数は15倍、死者数は20倍にまで上っています。1日の新規感染者数はいまだに4千人を超えているようです。それでも、スエーデンの若者たちは、混雑したショッピングモールで買い物をし、バーで互いに密接した中で過ごしているそうです。

コロナ禍では、社会的分断が顕在化し、米国をはじめ、ヨーロッパの各地、ミャンマーなど、世界各地で暴動が頻発しています。その点、日本の若者たちは、素直な、老人思いのいい人たちです。

若者に迷惑をかけない老人に

若者にひき換え、破廉恥なのは日本の老人のようです。コロナ禍でもオリンピックを開催したい、「老害」「老害」と言われたくないなどと、喚き立てているのです。老人には、もうこれが日本での最後のオリンピックになるでしょうから。

私も81歳、紛れもなく老人の部類です。妻からは、いつも「老害」「老害」と言われないようにと諭されています。出しゃ張りたくなる気持ちを抑えるのに必死です。

昔のように世の中がゆっくりと流れていたときには、年長者の経験が若者の役に立ったでしょうが、今のように移り変わりの激しい時代には、経験が役立つことはほとんどありません。孫たち世代からスマホの使い方を教えてもらい、絶えずみんなが横一線のスタートです。

老人は、みんな拘りを持って生活してきました。若者には少し面倒と感じる仕事でも、新しいツールを老人に与えるなら、きっと若者の助けになることができそうです。もっとも、瞬発力も、持続力も若者に劣りはするでしょうが・・・

今回の新型コロナのパンデミックは、人類への大きな試練ですが、迅速なワクチン開発で何とか大半の高齢者は乗り越えられそうです。とは言え、近い将来、地震や津波、風水害や熱暑・干ばつなど、次々と新たな試練が待っていそうです。

今や、平均寿命は男性81.4歳、女性87. 5歳となっています。65歳以上の高齢者人口が全人口の28%を占めており、0歳から29歳までの若年者人口よりもその数が多いのです。これからは、老人が若者に甘えておれない時代となりそうです。

 

スエーデンの精神科医アンデッシュ・ハンセン著「スマホ脳」より

平均で1日に4時間、若者の2割が7時間も使っているスマホ。

だが、「スティーブ・ジョブスを筆頭にIT業界のトップは、我が子にデジタル・デバイスを与えない」という帯案内のついた、スエーデンの精神科医アンデッシュ・ハンセン著「スマホ脳」が、アマゾンの書籍案内に掲載されていたので、クリックしてしまいました。

急増する抗うつ薬の服用

9人に1人以上のスエーデン人が、抗うつ薬を服用しているそうです。スマホがみんなのポケットに入るようになったこの10年の間に、抗うつ薬の使用が急激に増えたそうです。世界中の国々でも同じようなことが起きています。

今や世界中の若者は、朝起きるとスマホに手を伸ばし、どこにいても手放なさず、夜はベッド脇に置いて寝るそうです。夜中にも1回はチェックしないと気が済まない者がいるそうです。

報酬系に働く神経伝達物質ドーパミン

ドーパミンは、「意欲」「運動」「快楽」に関係する報酬系に働く神経伝達物質、すなわち、「気持ちが良い」「心地良い」と感じさせてくれる元になる物質です。

ドーパミンは、「この先何かいいことがあると感じたとき」に分泌されます。ドーパミンは、空腹が満たされたとき、何かを達成したときなどに脳から分泌され、快感を誘う報酬系として働きます。

脳の報酬系の起源をたどると、我々人類の祖先が、厳しい環境を生き抜くために築き上げた脳の仕組みで、新しい生活場所や環境、食べ物などを見つけた時の興奮、幸福感の名残りのようです。

今日では、スマホを通じて新しい情報を得ると、それがニュースサイトであろうと、メールやSNSだろうと、脳の報酬系が作動するようになっています。メールの着信音、SNSの「いいね」マークなどからの期待感で、ドーパミンがどんどん分泌されるのです。

お酒がやめられないとか、ギャンブルに夢中になってしまうなど、いわゆる依存症に関係するのもこの報酬系です。

IT企業のトップは自分の子どもにスマホを持たせない

IT企業のトップは、人間のもつ弱点をうまくついて開発したスマホが、このような結果になることを一番よく知っていたようです。スティーブ・ジョブスは、自分の10代の子どもには、iPadを使ってよい時間を厳しく制限していたそうで、ビル・ゲイツも子どもが14歳になるまでスマホを持たせなかったそうです。

フェイスブックの「いいね」機能を開発したジャスティン・ローゼンスタインは、自分の創造物が度を過ぎて魅力的であることから、スマホの使用にブレーキをかけるためのアプリを開発し、自らも利用する時間に制限をかけたそうです。できるだけ長い時間、人の注目を引いておくコツは、相手の心理の弱いところを突き、ちょっとばかりのドーパミンが絶えず分泌されるようにすることだとも言っています。

 子どもは、大人に比べて依存症になりやすい

脳がまだ発達過程にある子どもは、大人に比べて依存症になりやすいことはよく知られています。

現在のスエーデンでは11歳児の98%が自分のスマホを持っているそうですが、日本の子どもの年代別にスマートフォン所有率は、小学校高学年34.6%、中学生75.4%、高校生92.4%という調査結果があります。

中学生からスマホを取り上げることは、もう不可能です。でも、1日の使用時間を制限することは今からでも遅くありません。

スクリーンタイムを「オン」にしてみては

いまのiPhoneには、どのアプリをいつ、どれくらいを使用しているかを記録し、わかりやすく表示する「スクリーンタイム」が搭載されています。ホーム画面の設定> [スクリーンタイム] > [スクリーンタイムをオンにする] に進むと、簡単に設定できます。
子ども用のiPhoneだけでなく、大人のあなた自身も、自分が毎日どのくらいスクリーンを見ているか確かめてください。

2月11日

新型コロナ長期戦に備えて

どうやら、人出も減る傾向になく、感染者数もますます増えていきそうな空気です。高齢者は、重症化率が高いので、不要不急の外出を控えるようにと絶えず言われ続けています。私も、天気の良い日には1時間程度の散歩だけで、ほとんど家に籠っています。

ちょうど1年前の1月20日に、硬膜外出血で入院したのを契機に、60年近く乗り続けていた車を手放すことにしました。当時は、新型コロナ流行の直前であり、車のない生活が、こんなに不自由なものとは思いもしませんでした。

昨夏には大病を患い、長期間の入院を余儀なくされましたので、あまり不自由さを感じませんでしたが、秋の訪れとともに、体力が回復し、活動を再開し、身体の衰えを防ぐためにと、せめてゴルフの打ち放し場にでも行こうと思うのですが、感染対策上できるだけ公共交通機関を使いたくありません。

正月以来、寒さもあり、私が一歩も家から出ずに、家の中をいつもウロウロしていると、家内も根をあげ始めています。岡本梅林公園の梅だよりも聞こえてきました。春の訪れが待たれます。

ワクチンも、どうやら3月末には高齢者が接種できそうです。今年は、コロナの網目をかいくぐりながら、少しずつ活動をはじめようと思っています。 2021-1-20

日本の子どもの精神的幸福度は38カ国中37位: ユニセフ「レポートカード16」

ユニセフ報告書「レポートカード16」が、2020年9月3日に発表され、報道もされていましたのでご存知の方も多いと思います。日本の「子どもの幸福度」の総合順位は38カ国中20位でした。この総合順位は、以下の3つの分野を総合した順位です。
精神的幸福度:37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)
〇身体的健康:1位(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合)
〇スキル:27位(読解力・数学分野の学力、社会的スキル)

「世界で最も豊かな国々の多くは、すべての子どもたちに良い子ども時代を提供するリソースを持っていながら、それが果たせていません。」と、ユニセフ・イノチェンティ研究所所長のグニラ・オルセンは述べます。

「政府がパンデミックへの対応の一環として、子どもたちの幸福度(wellbeing)を守るための迅速で確固たる行動をとらなければ、子どもの貧困率が上昇し、精神的・身体的健康状態が悪化し、スキルの格差が広がり続けるかもしれません。
COVID-19関連の子どもや家庭へのサポートはひどく不十分です。子どもたちに安全で幸福な子ども時代を提供するために、より多くのことをしなければなりません。そしてそれは今です」

「パンデミックによる経済、教育、社会への影響が続く中、一致して取り組まなければ、今の子どもたちの幸福度、その家族や社会への影響はさらに悪化し、破壊的なものになるでしょう。しかし、今各国政府が、子どもたちの幸福度を守る確固たる行動をとれば、これらのリスクは現実にならずに済むのです」(オルセン)

本報告書を通じてユニセフは、子どもの幸福度を改善するために以下のことを求めています。
所得格差と貧困を減らすために確固とした行動をとり、すべての子どもが必要な資源にアクセスできるようにする
• 子ども・若者のためのメンタルヘルスのサービスに関する深刻な格差を是正する
• 仕事と家庭のバランスを改善し、特に、質が高く柔軟で安価な乳幼児保育へのアクセスを改善するため、子育て支援策を拡充する
• はしかの予防接種率の最近の低下を逆転させることを含め、予防可能な病気から子どもを守るための策を強化する
• 子どものいる家庭を支援するCOVID-19関連の政策を改善し、子どもの幸福度を支える予算が緊縮財政措置から守られるようにする


精神的幸福度
15歳時点で生活満足度の高い子どもの割合(2018年)
日本62.2% 平均 75.7%  最上位:オランダ 89.8%

15~19歳の若者の自殺率 (10万人あたりの自殺者数、2013年~2015年の3年間の平均)
日本7.5 平均 6.5  最上位:オランダ 1.4

「すぐに友達ができる」と答えた15歳の生徒の割合(2018年)
日本69.1% 平均 75.5%  最上位:ルーマニア 82.7%


先進国の子どもの幸福度


精神的幸福度

  • 15歳時点で生活満足度の高い子どもの割合(2018年): 日本62.2%   平均 75.7% 最上位:オランダ 89.8%
  • 15~19歳の若者の自殺率 (10万人あたりの自殺者数、2013年~2015年の3年間の平均): 日本7.5   平均 6.5 最上位:オランダ 1.4

身体的健康

  • 5~14歳の子どもの死亡率 (1,000人あたりの死亡数、2018年):日本0.7   平均 1.0 最上位:ルクセンブルグ 0.4
  • 過体重または肥満である5~19歳の子どもと若者の割合(2016年):日本14.4%   平均 28.9% 最上位:日本 14.4%

スキル

  • PISAテストの読解力・数学分野で基礎的習熟度に達している15歳の生徒の割合(2018年):日本72.9%   平均 62.3% 最上位:エストニア 78.9%
  • 「すぐに友達ができる」と答えた15歳の生徒の割合(2018年):日本69.1%   平均 75.5% 最上位:ルーマニア 82.7%

    デジタルテクノロジーの使用と青年期の幸福との関連性は否定的
    Amy Orben, Andrew K Przybylski: The association between adolescent well-being and digital technology use. Nat Hum Behav. 2019 Feb;3(2):173-182.
    若者によるデジタルテクノロジーの普及は、彼らの定期的な使用が心理的幸福に悪影響を与えるという憶測に拍車をかけています。3つの大規模な社会データセット(合計n = 355,358)について仕様曲線分析(SCA)を適用して、青少年に対するデジタルテクノロジーの影響に関する相関証拠を厳密に調べたところ、デジタルテクノロジーの使用と青年期の幸福との関連性は否定的ですが小さく、幸福の変動の最大0.4%を説明しているに過ぎなかったとのことです。


私のお正月2021

元旦の朝、目を覚まし、寝室のカーテンを開けると、年末からの寒波で薄っすらと雪を被った六甲山頂が、新年の朝日に映えて美しく輝き、市中が新型コロナ禍にあるのが信じられない、素晴らしい眺めでした。

山頂に聳える電波塔が、何か観音像のように見え、思わず手を合わせ、1日も早いワクチン接種、新型コロナ終息を祈願しました。

年末年始はお静かにという国や県の求めに応じて、例年なら近郊のホテルに家族が集い、賑やかに過ごす正月ですが、夫婦二人きりでの静かな正月も新鮮でした。半世紀以上にわたり寄り添えたことに感謝し、互いの健康を願い、雑煮を頂きました。

元日の夜は、ZOOMによる家族新年会です。4家族の集まりで、最初はどうなるかと心配でしたが、流石に孫たちはWeb会議に慣れており、巧みなカメラワークと会話で盛り上がり、最後には息子家族がバイオリン・ギターのおうち演奏を披露してくれました。アンコールには、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団のNew Year Concertと同じように、ヨハン・シュトラウスの「ラデツキー行進曲」で締め括られました。

何もかもが、新しいスタイルのお正月です。感染終息の暁には、これまで経験したことのない新しいスタイルの生活、素晴らしい世界が開けるのが楽しみです。

2021-1-3


 

子どもは赤ちゃんに興味をもつ

小学4年の孫娘によると、自分が読んだ本の中から、友達にすすめたい本を紹介する学校の授業があったそうです。読書好きの孫娘は、新型コロナ流行による休学期間中に、手当たり次第に家にある本を読んでいたようで、私が3年前に出版した「赤ちゃんの四季」を見つけ、読後感想文を提出したそうです。担任の先生の花マル入りの文を持ち帰り、私にも見せてくれました。

そこには、「赤ちゃんの大切さがよく分かりました」とか、わたしが好きなところは「赤ちゃんが母親のまねをするのがかわいい」、「命の大切さ」をとても考えさせられる本でしたと書き綴られています。

エッセイ集「赤ちゃんの四季」は、兵庫県予防医学協会の季刊誌「明日の健康」に2000年から20年近く連載しているコラムを1冊にまとめて出版したものです。私は、新生児医療を専門にした小児科医なので、近年の脳科学の進歩により明らかになってきた赤ちゃんの脳の特徴や興味深い行動、母と子の関係性などを中心に、四季折々の子どもの話題を取り上げてきました。

育児の話をするときには、「五感」や「共感」を司る脳に良い刺激を与える大切さを強調してきました。とりわけ、AI・ロボットが進化した近未来社会では、幼少期に体験する「五感」と「共感」こそが、人間らしさの原点と言い続けています。

小学生の孫娘が「赤ちゃん」に関心を寄せたことは感激でした。昔は、兄や姉が学校から帰宅すると、赤ちゃんを背負って遊ぶ姿をよく見かけましたが、少子社会の今では赤ちゃんに直に触れる機会がほとんどありません。

学校の授業として保育園を訪れ、赤ちゃんに触れ、赤ちゃんのもつ不思議さ・可愛らしさを小さい時から体験し続けることが、人間らしさを持続する社会には不可欠です。

2020-12-25

ポストコロナ社会への期待  ー デジタルで共生社会がー

ポストコロナ社会は、テレワークとデジタル化というだけで、一体どんな社会が待ち受けているのか、多くの人はよくイメージできずにおられるのではないでしょうか?

人間の仕事が、AIの活用やロボットに奪われるのではないかという不安、あらゆる個人情報が国や企業に一括管理され、個人の守秘性がなくなるのではという不安感をお持ちの方も少なくないと思います。

オードリー・タンさん曰く、デジタル空間は無限の可能性を持つ

新型コロナ流行当初にデジタルを活用し、マスク在庫状況をはじめ感染状況の可視化で、流行を最小限に抑えた、台湾のデジタル担当閣僚オードリー・タン氏の卓越した能力の報道に驚かれた方は多いと思います。

LGBTである彼女は、16歳で女性となりました。学校は中学までしか行かず、独学でプログラマーとしての実力をつけ、19歳で渡米し、アップル社においてSiri開発の立役者となりました。タン女史は1981年生まれ。ミレニアル世代のトップランナーです。

ミレニアル世代が新しい時代をリードする

ミレニアル世代とは、1980年から1995年の間に生まれた世代と定義され、2020年に25歳から40歳を迎えた世代です。

この世代がこうして括られるのは、その成長がデジタルの台頭とともにあったためです。インターネット環境の整備が飛躍的に進んだ時代に育ち、情報リテラシーに優れ、インターネットでの情報検索やSNSを利用したコミュニケーションを自然に使いこなす、ITに極めて高い親和性を持つ世代です。この生まれながらにして、デジタル化という激動の中で育った彼らだからこそ、新しい時代を先導するエネルギーがあるように私には思えます。

Diversity & inclusion(多様性を取り込んだ社会)とConviviality(自立共生社会)

最近出版されたタン女史の自伝によると、デジタル技術を活用すれば、この2020年を境にどのような社会が待ち受けているのか、彼女には明確にイメージできているように思えます。そのキーワードは、Diversity & inclusion(多様性を取り込んだ社会)とConviviality(自立共生社会)です。彼女が目指している「自立共生社会」は、一地域、一国だけでなく、地球全体での共生社会です。

彼女自身がLGBTであることからも、新型コロナ流行後の世界に求められているのが、Diversity & inclusionとConvivialityであるという主張は容易に納得できます。Diversityも、 Inclusionも、経済界でよく用いられている単語です。Diversityは、国籍や性別、学歴を問わない多様な人材活用に、Inclusion(インクルージョン)は、元々フランス語で、直訳すると包含、包括という意味です。ビジネスに当てはめると企業内すべての従業員が仕事に参画する機会を持ち、それぞれの経験や能力、考え方が認められ、活かされる状態を言います。

「共生(ともいき)」は元々仏教用語

「共生(ともいき)」ということばは、元々仏教用語にあったようで、日本人には馴染みの単語です。「共生」とは、「共に生きる」ということですから、直訳すれば「自然と共に生きる」、「地域と共に生きる」ということになります。

つまり、「人間は天地自然の恵みの中で生き生かされているのだから、それをよくわきまえて、むやみやたらな開発はしないで、自然を大切にし、自然のサイクルに合った生き方をしましょう」。また、「人は一人で生きているのではない。家族をはじめとして、隣近所、町や村の中で多くの人々と係わりながら生きているのだから、その関係を大切に、助け合いながら生きましょう」ということになります。

「共生」が、障害者支援や環境問題に対する政策の枕詞に

日本政府は、障害者支援や環境問題に対する政策の枕詞として、「共生」という言葉をこのところ多用しています。2020年東京オリンピック・パラリンピックを契機として、障害の有無等にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、障害のある人等の活躍の機会を増やし、共生社会の実現を目指しています。 文部科学省は、平成24年7月より共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進に取り組み始めています。

「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等のマイナリティーが、積極的に参加・貢献できる社会です。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会です。

Conviviality(自立共生社会)とは

Conviviality(自立共生社会)という言葉が用いられるようになったのは、イヴァン・イリッチ著の「Convivialityのための道具」という本に由来するようです。本書が出版された1973年は、今日と同じように産業社会における人間性の喪失が大きな社会的不安を招いていた時代です。

Conviviality(コンヴィヴィアリティ)は、日本語では「自立共生」と訳されていますが、行き過ぎた産業主義社会が、人々を単なるサービスの消費者にしてしまったことを問題として指摘し、自立共生な社会のあり方を描いています。

日々の暮らしの中で人は学び、病気に苦しむ人がいれば手を差し伸べ、家族を失えば親族で弔っていた人間の暮らしが、産業化と分業化・専門化によって、教育は学校が、医療は病院や医療者が、弔いは葬儀屋が提供するサービスになり、人々の手から人間らしい振る舞いの機会を奪ってしまったのでは?と、イリッチは問いかけています。

半世紀前にも今と同じような社会現象が

この書が刊行されたのが1973年ですから、我が国においても戦後の高度経済成長により貧富の格差が拡大し、まさに産業中心主義に世の中が大きく変化している時代でした。先行きの不透明感から、全国に大学紛争の嵐が拡がった時代です。

その後、「個々人の尊厳をベースにした真の自立共生社会はユートピアの世界である」と、私たちの世代の者は大学紛争後ずっと思い続けていました。だが、デジタルは無限の資源だと言われると、それも決して実現不可能な課題ではなさそうな気もしてきます。

デジタル民主主義と「自立共生社会」

いま、米国で行われている大統領選挙の報道を見ていると、何だか滑稽です!

デジタル民主主義の根幹は、「政府と国民が双方向的に議論できるようにしよう」ということです。オードリー・タンさんは、「国民の意見が伝わりにくい」とされる間接民主主義の弱点を、インターネットなどの力により誰もが政治参加しやすい環境に変えていこうとしているのです。

彼女がすでに取り組み、実現しているのが台湾での選挙制度です。より民主的な選挙を行うために、有権者一人1票ではなく、99票のカードが与えられ、有権者は複数の候補者に配分して投票できるそうです。さらに、4年に一度の選挙ではなく、デジタルを活用すれば毎日でも国民投票が可能だと言います。

多くの国が採用している間接選挙制度の根底からの見直しが必要な時代になっているようです。民主主義国家と言いながら、所得格差が拡大し、社会の分断が進んでいます。 日本が一億総中流の国であるというのは今や完全な幻想で、その貧困率は世界的に見ても高いものです。2020年7月17日に厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」の結果から、2018年(平成30年)の子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%、約7人に1人の子どもが貧困状態にあり、日本も社会的格差が大きいことを示しています。

小児保健従事者は子どもの声を代弁しよう

ラジオやテレビといったメディアでは、情報の流れは一方通行です。パソコンやインターネットの登場で、SNSを通じて誰もが自分が言いたいことを発信できるようになりました。メディアは、SNSでの炎上、誹謗・中傷といったネガティブな面を取り上げ、子どもたちの積極的な活用に向けた意見が少なすぎるように思えます。

日常的に子どもたちに寄り添っている小児保健従事者は、子どもに関する情報を共有するだけでなく、子どもから発信される多様な意見を代弁し、政府の施策に反映されるような社会にしたいものです。

ポストコロナでは、デジタル化による選挙制度改革を推し進め、多様な民意が政府の施策に反映され、自立共生社会へ向かうことを期待しています。


2020/12/18

コロナ禍が母子家庭を直撃

かつては、一億総中流の国と言われた日本が。。。,

7人に1人の子どもが貧困状態

 日本が一億総中流の国であるというのは今や完全なる幻想とも言えるほどに、その貧困率は世界的に見ても高いものです。
2020年7月17日に厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」の結果から、2018年(平成30年)の子どもの貧困率(17歳以下)は13.5%と、約7人に1人の子どもが貧困状態にあることがわかりました。

 ひとり親家庭の子どもの貧困率はOECD加盟国中で最低

 貧困家庭にある子どもの比率、すなわち子どもの貧困率は、OECD各国の中で日本よりはるかに社会状況が深刻そうな国々とほぼ同じレベルです。特に、ひとり親家庭の子どもの貧困率はOECD加盟国中で最低です。

貧困率が深刻な母子家庭の8割近くでは、世帯収入が300万円以下です。​その大きな理由は、この国でシングルマザーが働き口を探すのが容易でないからと考えられます

日本の相対的貧困率は世界的にみて高い

私たちの実質所得は、1990年代末にピークを迎えた後には下落を続け、現在は30年前の水準に戻っています。一方で、相対的貧困率は着実に伸び続けています。2018年の貧困線(等可処分所得の中央値の半分)は127万円。貧困線に満たない世帯員の割合を示す「相対的貧困率」は15.4%で、2015年の15.7%より0.3ポイント改善したとはいえ、その貧困率は世界的にみて高いものです。

コロナ禍が母子家庭を直撃

政府は昨年11月、貧困家庭の子どもへの支援方針をまとめた「子どもの貧困対策大綱」を閣議決定し、生まれ育った環境で子どもの現在と将来が左右されないよう、早期の対策や自治体の取り組みを充実させる方針を立ててはいました。

しかし、その実効性が現れる前に、新型コロナが流行し、非常事態宣言が出されるに及び、非正規労働者が多いシングルマザーの働き口を奪い、母子家庭の生活をより一層苦しいものとしています。

3組に1組が離婚する現代社会

3組に1組が離婚する現代社会では、母子家庭でも安心して子育てができる社会づくりが求められます。母親に育児の責任を負わせるのなら、母親だけでも育児できるように、就労環境を改善し、子どもの医療費・教育費等の子育てに要する費用を全面的な公費負担とする必要でがあるしょう。


2020.11.28

スマート社会(Society5.0)に向けて

Society5.0とは

狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、そして現代の情報社会(Society4.0)の次に訪れる新しい社会のことを、スマート社会(Society5.0)と呼ぶそうです。この用語は、平成28年に閣議決定された第5期科学技術基本計画の中で提唱されたものです。

Society5.0とは、IoTによりサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(人主体空間)を連携し、すべての物や情報、人を一つにつなぐとともに、AI等の活用により量と質の全体最適をはかる社会のことです。

Society4.0では経済発展に限界が

Society4.0では、情報の共有や作業工程の効率化が進みました。しかし、少子高齢化によって労働力が減少し、これまでの労働集約型の業務や知識の集積に基づく業務では、今以上の経済発展が望めません。日本は超高齢化社会が加速する中で、社会保障の破綻も懸念されています。

Society5.0では、

膨大な情報を的確に処理するため、人工知能(AI)の活用はさらに進みます。情報は人間が自ら集めて解釈するものから、人間にとってより理解しやすい情報としてAIが解釈・加工して提供されるものになるでしょう。

Society5.0においては、Society 4.0を土台としながらAIやロボット等によって人的リソースを代替化・省力化が実現します。テレワーク等が普及することで時間の有効活用ができるようになり、人は新たな高付加価値な業務を行うことができるようになります。

個別化医療の進展やロボット技術を活用した身体機能の支援が進めば、看護や介護の省力化が進みます。さらに、健康や医療、介護に関するデータを活用することで効率的な社会保障システムの構築も可能となり、質の高いサービスが提供できるようにもなります。

これらが実現すれば、今後直面するとされる社会課題の解決とともに、今以上に経済的な発展が可能となるでしょう。

Society 5.0に向けて国が目指す学校教育

ソサエティ5.0時代到来を見据えた学校の指導体制の確立が、ソサエティ5.0をよりよい社会にする鍵となります。平成30年、文部科学省は 「Society 5.0 に向けた人材育成に係る大臣懇談会」で 学びのあり方の変革を次のように提唱しています。

  • 一斉一律授業の学校は、読解力など基盤的な学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場に。
  • 同一学年集団の学習は同一学年に加え、学習到達度や学習課題等に応じた異年齢・異学年集団での協働学習の拡大を。
  • 教室での学習は、大学や研究機関、企業、NPO、教育文化スポーツ施設等も活用した多様な学習プログラムが望まれる。

新時代に求められる人間教育

文科省は先の提言で、「文章や情報を正確に読み解き対話する力」、「科学的に思考・吟味し活用する力」、「価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力」が重要であると挙げています。

新たな社会を牽引する人材として、国が求めているのは「技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材」、「技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材」、「様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材」です。

私の考えは、高度に情報技術が進歩した時代の初中等教育のあり方として、機械にできることは機械にまかせ、人間はより人間らしい力を身につけることです。

これまで以上に、人の多様性と共生を尊重する社会を目指し、人と人、さらには人とロボットとのコミュニケーション力の涵養が求められます。2020.11.26