これからどうなる? コロナウイルス病2019 (COVID-19)

今回のCOVID-19の流行においては、軽症例・無症状者が多いと言われています。兵庫県や西日本で感染者が出ないのは? 検査検体数の開示がないので、なんとも言えません。検査検体数が少ないことや、PCR検査の感度や手技が判定に影響するという武漢からのレポートが出ていますので、不確実な面もあります。実際に、感染者がいないなら結構なことです。

これまでのインフルエンザ流行では、いつも患者数は小児・若年者が多く、死亡数は圧倒的に70歳以上という特徴がありました。今回のCOVID-19流行では、小児の感染例はあまり問題となっていません。検査能力の関係で重症の肺炎患者しか検査が実施されておらず、小児の感染陽性例がスルーされているのかも知れません。学校での集団発生が報告されていないのが幸いです。

ともあれ、全国の小中高校や特別支援学校を臨時休校という政府の判断は、流行を抑えるという面で的確であると思います。私たちは、インフルエンザの大流行時でも春休みに入った途端に患者数が激減するのをこれまでに体験しています。今回の決定は極めて唐突で、家庭でどう過ごさすかという問題で親は悩んでいますが、それを解決するのは政治です。まず、校庭を開放し、健康チェックと狭い場所に生徒が集まらないように工夫をすれば、感染の機会はぐんと減ります。2週間の一斉休校で、良い方向に向くことを願っています。


2020年2月28日

COVID-19から回復した患者でRT-PCRテストの陽性化が起った

武漢大学中南病院のLan Lan, Haibo Xuら、JAMA Published online February 27, 2020  RESEARCH LETTER; Positive RT-PCR Test Results in Patients Recovered From COVID-19


中国で、退院または検疫の中止の基準(臨床症状と放射線異常の非存在、連続2回のRT-PCRテスト結果の陰性)を満たしたCOVID-19の4人の患者(いずれも軽症例)が、5〜13日後のRT-PCRテスト結果が陽性であったと報告された。患者の内訳は、COVID-19の自宅で隔離された1人の入院患者と3人の患者(すべて医療関係者)で、2020年1月1日から2020年2月15日まで、中国武漢の武漢大学中南病院で治療を受けている。

RT-PCRテストは、喉のスワブで実施された。中国疾病管理予防センターによって推奨されているRT-PCRテストキット(BioGerm)が用いられた。すべてのRT-PCRテストには、同じ技術者とブランドのテストキットが使用された。内部対照と陰性対照の両方が、テストの各バッチで定期的に実行されている。

この4例はいずれも軽症例であるので、今後は重症例においても、病院からの退院または隔離の中止および継続的な患者管理において注意するとともに、現在の基準を再評価も行う必要がある。


2020/2/27

「COVID-19を追って」を始めるに当たって

中国武漢での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の連日の報道を見ていると、高齢、かつ基礎疾患を持つ私は、ハイリスクグループに属し、外出を控えざるを得ない。私が勤務している医療福祉施設では、WEB会議を採用してくれており、もう外出する機会はほとんどない。私は、2009/10シーズンの新型インフルエンザ流行時には阪神北こども急病センターに勤務しており、山崎武美センター長とその対応に追われました。

そこで、インフルエンザに関する手持ちの資料と、自宅においても入手可能な海外から発信されてくるUpdateな医学情報を合わせて紹介していくことにしました。

今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行では、幸い小児例が少ないようですが、インフルエンザの流行期とも重っており、子どもたちも油断はなりません。できるだけ多くの子どもの情報をスクラップしていきたいと思います。


2020/2/25

ビルゲイツ著    Covid-19への対応 — 1世紀に一度のパンデミック?

Responding to Covid-19 — A Once-in-a-Century Pandemic?  By Bill Gates February 28, 2020 DOI: 10.1056/NEJMp2003762


ビルゲイツが何を語ったか?興味深かったので、皆様にもその内容の一部を紹介します。まずタイトルが、「Covid-19への対応 — 1世紀に一度のパンデミック」と刺激的です。でも、彼自身は、以前からパンデミックを畏怖し、対応策について考え、行動していたことを知り、敬服しました。短い文章ですが、彼の経営哲学、低・中所得国(LMIC)に対する考えを垣間見た思いです。


概略

ビルゲイツ曰く、どんな危機においても、リーダーには2つの等しく重要な責任;それは、差し迫った問題を解決し、それが再び起こるのを防ぐことであり、Covid-19パンデミックがその好例だと言います。最初のポイントは、アウトブレイクへの対応方法を改善することにより、命を救うことで、より差し迫ったものであり、2番目のポイントは長期的な重大な成果をもたすことです。

1918年のインフルエンザの流行に匹敵するスピードと重症度を持つパンデミックが起こるのは時間の問題だと、グローバルヘルスの専門家から彼は聞かされていたのです。そこで、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団では、これまでから、世界がそのようなシナリオに備えるのを支援するために相当な資金を投入していたとのことです。

彼は、「今、私たちも差し迫った危機に直面しています。 過去1週間で、Covid-19は、私たちが心配していた世紀に一度の病原体のように振る舞い始めました。 それほど悪くないことを望みますが、そうでないことがわかるまではそうなると想定すべきです。」と述べています。

Covid-19がこのような脅威である理由として次の2点を挙げています。

第一に、既存の健康問題を抱えている高齢者に加えて、健康な成人が死亡する例もあることです。これまでのデータをみると、ウイルスの致死リスクが約1%であることを示唆しています。 この率は、典型的な季節性インフルエンザよりも何倍も深刻になり、1957年のインフルエンザパンデミック(0.6%)と1918年のインフルエンザパンデミック(2%)の間に位置します。

第二に、Covid-19は非常に効率的に伝播されることです。 平均的な感染者は、病気を他の2人または3人に拡大し、指数関数的に増加します。 また、軽度の病気の人や予兆の人でさえ伝染する可能性がある点は、1918年のインフルエンザと類似しています。Covid-19は、症候性の人によってのみ効率的に拡散された中東呼吸器症候群または重症急性呼吸器症候群(SARS)よりも収容がはるかに困難になることです。

富裕国の政府は、自国民の対応を支援するだけでなく、低・中所得国(LMIC)がこのパンデミックに備えるのを支援することです。アフリカと南アジアの国々の準備を支援することで、人命を救い、ウイルスの世界的な拡散を遅らせることができるのです。 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団ではすでに1億ドルに達する支援を行なっています。

パンデミック対策のための数十億ドルは多額のお金です。 しかし、それは問題を解決するために必要な投資規模です。 そして、流行がもたらす経済的苦痛を考えると、Covid-19が人々の生活は言うまでもなく、サプライチェーンと株式市場を混乱させる可能性があることはすでにわかっています。それはお買い得です。

最後に、政府と業界は合意に達する必要があります。パンデミックの間、ワクチンと抗ウイルス薬は最高入札者に単純に販売すべきではありません。 それらは、発生の中心にあり、最も必要としている人々のために利用可能で手頃な価格でなければなりません。 これは、伝播を短絡させて、将来のパンデミックを防ぐための正しい戦略でもあります。

これらは、リーダーが今取るべき行動です。 無駄にする時間がありません。


2020.3.7

こども急病センターがとった2009/10年新型インフルエンザ対策

まとめ:阪神北こども急病センターにおいては、2009/10年の新型インフルエンザ流行では臨床的に軽症である患者が多いことから、季節性インフルエンザに準じた感染予防体制で対処することにした。当センターの外来部門は、かかる大流行を想定した十分な感染予防対策の構造ではなったので、緊急工事を実施した。基本的な考えとして、玄関入口の風除室でトリアージを行い、患者を隔離室、「インフル疑いゾーン」と「疑いなしゾーン」、乳幼児用の逆隔離ゾーンに区分できるようにした。


センターがとった2009/10年新型インフルエンザ対策

2009年5月16日、日本国内で初めてとなる新型インフルエンザA(H1N1swl)の最初の3例が神戸市によって報告された。4月28日の厚生労働省「WHOによる新型インフルエンザ発生宣言」を出し、新型インフルエンザ等感染症は2類相当するために入院の上での治療を行うことが必要とされていた。そのため、神戸市では新型インフルエンザ患者全例に対して入院による治療が行われたが、対応病床が満床になるなどの状況が直ぐに発生し、かつ、臨床的に軽症である患者が多いことから、5月18日より神戸市や大阪府などでは、臨床上入院を必要とする患者についてのみの入院へと切り替えられた。

当センターでも当初は、➀発熱・関節痛等のインフルエンザ症状のある患者に対して海外渡航歴を確認、➁海外渡航歴のある患者は車中待機してもらい、センター内に入らないようにし、車中より保健所に電話し、対応の指示を仰ぐ、➂センター職員にマスク着用と感染予防策の周知徹底を図る等の対策を立てた。

しかし、5月17日付けで、兵庫県健康福祉部医務課長より県内休日夜間急患センター宛に「小児の発熱等に有症状者の対応について」の協力依頼があり、感染拡大防止のために、当センターでは、季節性インフルエンザに準じた感染予防体制で対処することにした。インフルエンザ疑いの患者については一般診察室での診察とし、濃厚接触者については隔離室で診察を行うことにした。6月に入り、患者数が減少してきたのを機に、感染の再流行が予測されたのでより充実した感染対策を配慮し、緊急改修工事を計画。9月20日に工事を開始、ほぼ1ヶ月後の10月26日に工事は完成した。

感染対策の基本的な考え方としては、発熱、咳などの症状に応じたゾーン隔離体制をとること。インフルエンザは飛沫感染であるので、患者1人一人を完全に隔離するのではなく、患者間の距離を空けることにより、患者間の感染を最小限に抑えることとした。


具体的な対策として、

  1. 受付を玄関入口に移し、風除室でトリアージを行い、隔離室、「インフル疑いゾーン」と「疑いなしゾーン」、乳幼児用の逆隔離ゾーンに区分する。
  2. 空気感染する疾患、麻疹・水痘・風疹患者は、受付から、内部に入らずに、外周通路で隔離室に収容する。
  3. 入り口での混雑を減らすために入口と出口を区分し、屋内では換気流に沿って、感染疑いなしゾーンから感染疑いゾーンを配置した。
  4. 電話相談を充実し、不用の受診を減らす。
  5. 待合室での人数をできるだけ減らすために、車での来院者は車内に待機させる。 こととした。

     2020/2/25

China CDCによるコロナウイルス病2019の72,314件の要約

中国でのコロナウイルス病2019(COVID-19)アウトブレイクから得られた疾病の特徴と重要な教訓 中国疾病管理予防センター(China CDC)からの72,314件の報告の要約         From New online first articles from JAMA | JAMA Network


このレポートは、2020年2月11日までの中国本土で報告されたコロナウイルス病2019(COVID-19)のすべての症例72,314件の主要な疫学的および臨床所見と、感染を制御し、封じ込めようとする政府の試みに対応した症例の傾向をまとめたものである。

武漢におけるあの大流行の中で、その医療現場から極めて早期にこのように72,314例という膨大な患者の詳細な分析を実行されたZunyou Wuたちのパワーに敬服するのみです。44,672(62%)が、咽頭スワブサンプルのウイルス核酸検査結果陽性に基づく診断によるCOVID-19の確定症例として分類されているのは驚きです。

JAMAには、中国からの論文が次々と発表されています。SARSおよびMERSのほとんどの二次感染は、ほとんど病院で発生しており、COVID-19の感染もこの状況で発生しているとのことです。日本の病院の具体的な対策が見えないので一抹の不安を覚えます。

ウイルス核酸検査による病気の開始ピークとCOVID-19の診断ピークの間の遅延時間のグラフを見ると、今回の流行のピークが過ぎたようですが、著者は一切論じていません。ここでは、この論文中の、COVID-19の疫学的特徴とCOVID-19とSARSおよびMERSの比較の項のみを邦訳しましたが、是非、この論文原文を読んでください。私は中国の研究レベルの高さに圧倒されました。


疫学的特徴について

COVID-19アウトブレイクの合計72,314の症例記録のうち、44,672がCOVID-19の確定症例として分類され(62%;咽頭スワブサンプルのウイルス核酸検査結果陽性に基づく診断)、16,186が疑わしい症例として(22% ;症状と暴露のみに基づく診断、現在のニーズを満たすには検査能力が不十分であるため検査は実施されなかった)、臨床診断症例として10,567(15%;この指定は湖北省でのみ使用されている; これらの症例では、検査なしに診断が実施されたが、症状は、コロナウイルス肺炎に一致する肺の画像化機能の存在、暴露、および存在に基づいて行われていた。889は無症候性症例として(1%;ウイルス核酸検査結果陽性だが、発熱、乾いた咳、疲労といった典型的な症状を呈さなかった症例)。

全体の致死率(CFR)は2.3%(44 672の確定症例のうち1023人の死亡)で、9歳以下のグループでは死亡は発生していない。



図には、確認された症例の毎日の数は、症状の発症日(青)および診断日(オレンジ)ごとにプロットされています。症状発現曲線の日付別のケース(青)と診断曲線の日付別のケース(オレンジ)の違いは、ウイルス核酸検査による病気の開始とCOVID-19の診断の間の遅延時間を示しています。

症状発現曲線のピークは1月26日前後に、診断曲線のピークは2月4日にあります。病因不明の肺炎の最初の数例は、12月26日(n = 4)および28-29(n = 3)でした。中国政府が行った主要な流行対応措置は茶色のボックスで示されています。

通常予定されている旧正月の国民の祝日は明るい黄色で表示されますが、学校や仕事への出席が禁止された延長期間(医療従事者や警察などの重要な人員を除く)は暗い黄色で表示されており、2月10日に解除されています。


COVID-19とSARSおよびMERSの比較

現在のCOVID-19の発生は、以前の重症急性呼吸器症候群(SARS; 2002-2003)および中東呼吸器症候群(MERS; 2012-継続中)の発生と類似しており、異なっている点もある。

SARSは、中国広東省の市場で、コウモリからヤシのジャコウネズミを介した新しいコロナウイルスの人獣共通感染によって開始された。MERSは、サウジアラビアでの新規コロナウイルス(コウモリからヒトコブラクダを経由する可能性が高い)人畜共通感染として追跡された。

3つのすべてのウイルス感染は一般に発熱と咳を伴うため、高齢者や基礎疾患をもつ人で呼吸器疾患を引き起こしやすい。感染の確認には、気道サンプル(咽喉スワブなど)の核酸検査が必要ですが、症状、暴露、胸部画像に基づいて臨床診断が行われる場合がある。特定の効果的な抗ウイルス療法がないため、支持療法は通常、標準的なプロトコルとなっている。

世界保健機関(WHO)は、2003年7月5日にSARSアウトブレイクを宣言しました。29か国で合計8096人のSARS症例と774人の死亡が報告され、全体のCFRは9.6%であった。 MERSは、27か国で2494の確定症例と858の死亡を34.4%のCFRであった。 このように、SARSとMERSのCFRの方がはるかに致死率は高いにもかかわらず、COVID-19の方が、症例が多いためにより多くの総死亡者が出たことになる。

2020年2月18日現在、中国は72 528人の確定症例(世界全体の98.9%)と1870人の死亡(世界全体の99.8%)を報告している。これは、現在のところ粗CFR 2.6%に相当する。ただし、COVID-19症例の総数は、軽度および無症候性の症例を特定し、カウントするのが本質的に困難であるため、より多い可能性がある。さらに、中国のCOVID-19の試験能力はまだ不十分であるため、疑わしく臨床的に診断された多くの症例はまだ分母に数えられていない。CFRのこの不確実性は、湖北省のCFR(2.9%)と湖北省の外部(0.4%)の違いに反映されている可能性があり、さらなる研究が必要である。


SARSおよびMERSのほとんどの二次感染は、ほとんど病院内で発生しており、COVID-19の感染も同様にこの状況で発生している。2020年2月11日現在、医療従事者の間で3,019人が疑われ(そのうち1716人が確認され、5人が死亡)

ただし、これはCOVID-19拡散の主要な道ではなく、 むしろ、濃厚接触者の間でかなりの感染が発生していた。 現在までに、湖北省以外の20の省で1,183件の症例クラスターが報告されており、そのうち88%に2〜4件の確定症例が含まれている。これまでに記録されたクラスターの64%が家族の世帯内にあったことは注目すべき点である。

COVID-19はSARSやMERSよりも伝達性が高いようである。COVID-19の生殖数(R0)の推定値がすでに公開されてはいるが、正確なR0推定値を求めたり、評価するにはまだ早すぎるようだ。


From: Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China Summary of a Report of 72 ,314 Cases From the Chinese Center for Disease Control and Prevention. Zunyou Wu, MD, PhD; Jennifer M. McGoogan, PhD New online first articles from JAMA | JAMA Network https://jamanetwork.com › journals Published online February 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2648.


2020/2/24

コロナウイルス病2019(COVID-19)の状況 by CDC

コロナウイルス病2019(COVID-19)の状況

私のコメント:2020年2月23日付の米国CDCの「コロナウイルス病2019(COVID-19)の状況の概要」https://www.cdc.govを引用して、最新の情報が提供されているので紹介します。

中国の湖北省武漢市で最初に検出された新規(新しい)コロナウイルスによる呼吸器疾患の発生に対応していますが、現在では米国を含む32の場所で検出されています。このウイルスは「SARS-CoV-2」と呼ばれ、それが引き起こす疾病を「コロナウイルス病2019」(「COVID-19」と略されます)と呼んでいます。

2020年1月30日に、WHOの国際保健規制緊急委員会は、発生を「国際的な懸念の公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)と宣言しました。2020年2月23日現在、パンデミックには至っていません。

MERS-CoVとSARS-CoVはどちらも、人々に重篤な病気を引き起こすことが知られています。 COVID-19に関する完全な臨床像は理解されていません。 これまでの報告では、軽度から重度のものがあり、死に至る病気も含まれています。


2020/2/23

無症候性キャリアがCOVID-19の伝播に関係している?

Yan Baiら 中国河南省人民病院の医療画像部門 JAMA Published online February 21, 2020 RESEARCH LETTER: Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of COVID-19


中国の安養にあるCOVID-19肺炎の5人の患者の家族クラスターは、発症前に武漢の流行センターから旅行した無症候性の家族と接触していた。一連のイベントは、コロナウイルスが無症候性の保菌者によって感染した可能性が示唆された。

すべての症候性患者は、胸部CTで多発性すりガラス状陰影を有しており、C反応性タンパク質レベルが増加し(1.021.7;正常0.00.4)、リンパ球数は減少していた。

すべての患者は胸部CT画像検査を受けた。 COVID-19核酸のリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)テストは、鼻咽頭スワブ(Novel Coronavirus PCR蛍光診断キット、BioGerm Medical Biotechnology)を使用して実施された。


2020/2/21

SARSとMERSと医療者の感染

SARSは、2002年11月16日、中国広東省で普通とは異なるタイプの肺炎症例が報告されたことをきっかけに、流行が拡大。2003年7月5日にWHOが終息宣言を出すまで東アジアを中心に32の国と地域へ拡大した。WHOに報告された発症者数は8098例、死亡数は774例で、全体の致死率は9.6%と高い。日本では感染者ゼロであった。原因はコロナウイルスであるSARS – CoVと特定された。


MERS(中東呼吸器症候群)は、2012年にアラビア半島で発生したコロナウイルス感染症で、症例の多くは院内感染、もしくは病院スタッフとその家族など濃厚接触者の周辺で起こっています。MERSは2015年と2018年に韓国でアウトブレイク(局地的、一時的な感染症の流行のこと)を起こしたが、これも中東からの帰国者が発端となった院内感染が中心だった。

ヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを保有しており、ヒトコブラクダとの濃厚接触がヒトへの感染リスクであると考えられています。ヒト-ヒト感染の効率は高くないと考えられますが、家族間や医療機関における限定的なヒト-ヒト感染(医療関連感染)も報告されています。

今回のCOVID-19では2月7日付で米国医師会誌『JAMA』に掲載された武漢大学中南病院からの経過報告によると、同大学病院にCOVID-19で入院中の患者138人のうち、40人が医療関係者で、17人がすでに他の病気で入院していた患者でした。およそ4割が院内で感染した可能性があります。https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2761044


 2020/2/21

SARS(重症急性呼吸器症候群)に対するWHOガイドライン

From WHO guidelines for the global surveillance of severe acute respiratory syndrome (SARS). Updated recommendations October 2004. 2002年から2003年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)について、WHOのガイドラインを参考にしながら、今流行中のCOVID-19と対比しながら眺めてみよう。


SARSの致死率は

2003年の流行時のカナダ、中国、香港SAR、シンガポール、ベトナム、米国のデータの分析に基づくと、SARSの致死率は0%から50%以上に及ぶと推定されています。致死率は、年齢層は影響を受け、男性であること、併存疾患の存在も死亡率の上昇に関連しています。


高齢者、小児と妊娠中のSARS

無熱性疾患や細菌性敗血症/肺炎の併発などの非典型的な症状は、高齢者によく見られれます。

根底にある慢性的な疾患と医療施設のより頻繁な使用の両方が、当初考えられなかった院内感染イベントに寄与するようです。

小児集団では、SARSの発生頻度は低く、軽度の病気として観察されます。妊娠中のSARS症例では、妊娠初期の胎児死亡と妊娠後期の母親の死亡率の増加を示唆する報告があります。


SARSの疫学と生態学

2003年3月以降、この症候群について多くのことがわかってきましたが、SARS-CoV感染の疫学とこの疾患の生態学に関する知識は不完全なままです。SARS-CoVの天然の溜池は特定されていませんが、中国南部では、多くの野生生物種-ヒマラヤマスクパームシベット、フェレットアナグマ、およびタヌキが、関連するコロナウイルスによる感染の証拠があります。

香港のアモイガーデンズアパートブロックに住む飼い猫も、SARS-CoVに感染していたことが判明しました。最近では、フェレットと飼い猫が実験的にSARS-CoVに感染すること、以前飼われていた未感染の動物もウイルスに効率的に感染することがわかりました。これらの発見は、この病原体の溜池がさまざまな動物種に関係していることを示しています。

ヤシジャコウネコは、動物から人間への感染に最もよく関連した野生生物種です。ただし、ジャコウネコがSARSのようなコロナウイルスの自然の溜池であるかどうかはまだ証明されていません。


今、最も可能性の高い感染源は実験室!

2003年7月以降、SARSが再発する機会が4回ありました。これらのインシデントのうち3つは、実験室のバイオセーフティ違反に起因し、SARSの発症をもたらしました(シンガポール、台北、北京)。

最も最近の事件は、実験室労働者の家族と病院での接触に関与した3世代間の伝染で、9人の症例の集団であり、そのうちの1人は死亡しました。

WHOは、各国に対して、SARS-CoVの培養物を扱ったり、SARS-CoVで実際にまたは潜在的に汚染された臨床検体を保管しているすべての研究所の実験室が、正しいバイオセーフティ手順に従うこと、並びに実験室労働者の病気の適切な監視と調査を実施することを勧告しています。