懐かしくも新しい自律神経機能

年に一度の小児科医の同窓会が先般ありました。昔懐かしい仲間と話していると、何だか四、五十年タイムスリップした感じです。昔一緒に働いていた連中が立派なリーダーとして社会で活躍しておられ、また定年で引退されたとも聞き、驚かされます。

 起立性調節障害と不登校

 いつも私の外来診療を手伝ってくれていた中澤聡子先生から、一冊の著書「よくわかる起立性調節障害」を頂戴しました。先生は、東京逓信病院で、起立性調節障害専門外来を中心に診療されています。

朝、何度起こしても起きられない子。起きても体がだるく、頭痛なども出て、遅刻が増え、不登校へという背景に、起立性調節障害が潜んでいるというのです。ご家族にも理解しやすい平易な文章で、大変評判がよく、昨年末には朝日新聞でも大きく取り上げられたと伺いました。

「起立性調節障害」は私の現役時代からよく知られていた疾患で、その原因として自律神経機能、すなわち、交感神経・副交感神経の優位性のバランスの乱れが関与していると考えられています。通常、血圧変動を診断の一助としていますが、一定時間内の脈拍の変動(ゆらぎ)からも自律神経機能を判定できます。

ストレスチェックアプリ「COCOLOLO(ココロ炉)」

今からほぼ10年前に、神戸大学工学部情報工学科の羅教授の指導で、大学院生であった駒澤氏が、スマホカメラに軽く指を置くだけで、自律神経機能を簡単にチェックできるストレスチェック・アプリを開発されました。

今では、そのアプリ、「COCOLOLO(ココロ炉)」は、スマホを用いて無料で簡単にダウンロードでき、誰でも使用できるので結構評判で、メディアでもよく取り上げられています。

本アプリが開発されて間もない頃に、私も試みてみました。若いスタッフたちでテストすると、「理想」・「やや理想」と判定されるのですが、私にはいつも「ぐったり」か、「ややぐったり」と副交感神経の優位の判定が下され、「お疲れ気味です。」との答えが返ってきます。判定の妥当性には納得できますが、本人は余計に落ち込んでしまいます。

当時、大きな社会問題であった「産後うつ」の早期発見のために我々は試してみました。昨年の日本重症障害児学会では、喜怒哀楽をうまく表現できない重心児のこころの反映として、この「COCOLOLO(ココロ炉)」が用いられています。

「COCOLOLO(ココロ炉)」は、ストレスチェックとして、過労死対策、職場環境の改善などにも役立つのではと考えています。得られた膨大なデータから、より精度の高い判定がAIでなされるに違いありません。  2025.1.29.