新型コロナウイルスワクチンでもっとも懸念される副反応は、ワクチンによって逆に感染が悪化してしまう病態、すなわち、抗体依存性感染増強現象 (Antibody-dependent enhancement: ADE) とワクチン関連増強呼吸器疾患 (Vaccine-associated enhanced respiratory disease: VAERD)です。
ADEは、ワクチンによって産生された抗体が、ウイルス感染を防ぐのではなく、逆にFc受容体を介してウイルスが人間の細胞に侵入するのを助長し、ウイルス感染を悪化させてしまう現象です。これは、ウイルスに対する中和作用の低い抗体が多く産生される場合に生ずる現象です。
VAERDも、また同じくワクチンによって中和作用の低い抗体が多く産生される場合に生ずる現象です。この中和作用の低い抗体は、ウイルスと免疫複合体を形成し、補体活性化を惹起して、気道の炎症を引き起こします。
ADEやVAERDといった副反応を防ぐには、高い中和作用を持つ抗体を産生させ、かつTh1細胞優位の免疫反応を惹起するワクチンの開発でなくてはなりません。1日も早い供給が待たれますが、安全供給のための臨床試験、ワクチンの供給体制の整備、認可後の予防接種有害事象のモニタリング体制の整備が重要なようです。
2020-11-9