坂口氏は、免疫細胞の一種であるT細胞の中には免疫の暴走を抑えるタイプが存在するとの仮説を立て、根気強く研究を進めて1985年にその存在を示し、95年にはこの細胞の特定に成功し、制御性T細胞の発見者となりました。制御性T細胞は増えすぎると免疫反応を抑制し、一方少なすぎると免疫反応が増強することになります。
本研究は、臓器移植後の拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療への応用が期待されていました。
その後、研究成果の実用化に向け、阪大発スタートアップのレグセル(米カリフォルニア州)が2016年に設立され、20世紀の研究が、四半世紀を経て日の目を見たという感じです。
これまでから、T細胞の研究には、たびたびノーベル生理学・医学賞が授与されてきました。
1980年受賞者:Baruj Benacerraf, Jean Dausset, George D. Snell
業績:主要組織適合複合体(MHC)の発見と免疫応答の遺伝的制御
T細胞の抗原認識に不可欠な MHC分子(ヒトではHLA)の遺伝的基盤を解明し、後にT細胞が抗原を認識する際、「MHC拘束性(MHC restriction)」という仕組みの理解につながりました。これらは、T細胞研究の土台を築いた基礎的発見です。
1996年受賞者:Rolf Zinkernagel, Peter C. Doherty
業績:キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)の抗原認識原理の発見
ウイルス感染細胞をT細胞が認識する際、抗原とMHC分子の両方を同時に認識するという概念、「MHC拘束性(MHC restriction)」として知られる基本原理を確立しました。
これは、T細胞が“何を、どうやって敵と認識するか”という免疫学の中心命題を解明したことになります。
2018年 ノーベル生理学・医学賞:James P. Allison と 本庶 佑
彼らの受賞理由は「免疫チェックポイント阻害」によるがん免疫療法の開発です。これは、T細胞の抑制機構(CTLA-4 や PD-1 など)を解除することで、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにする戦略に関する研究です。
Allison は、 T細胞の抑制性分子 CTLA-4 に関する研究を行い、抗体による阻害が腫瘍を排除する可能性を示しました。本庶 佑は、T細胞上のプログラム細胞死分子 PD-1 を発見し、その抑制作用を明らかにしました。 2025.10.7.