「アルファ碁」の開発者がノーベル化学賞

昨年秋に、タンパク質の構造を予測するAI(人工知能)「アルファフォールド」を開発し、ノーベル化学賞を授賞した英 Google DeepMind 社のデミス・ハサビス氏が、日本棋院を訪問し、「囲碁なくしてAIの世界はない」と話されたそうです。

囲碁には無限のパターンが

囲碁は、縦・横それぞれ19本の線の交点である361の点に、黒石・白石を交互に並べ、陣地の広さを競うゲームです。そのパターンは一手目が361通り、二手目で361 x 360 = 129,960通り、三手目で361 x 360 x 359 = 46,655,640通り、通常200手くらいまで打ち続けますので同じ局面が再現されることはまずありません。まさに、そのパターンは無限であり、毎回新しい棋譜が作り上げられていくのです。

囲碁AI「アルファ碁」が囲碁界に革命を

コンピューターが人間に打ち勝つことが最も難しいと考えられてきた囲碁において、2015年にヨーロッパ王者に勝利し、2017年5月には中国の天才棋士である柯潔氏に3局全勝で勝利し、人工知能が人間に勝利を収めることを決定づけたのが、デミス・ハサビス氏が開発した囲碁AI「アルファ碁」です。

「アルファ碁」の成功を受けて、囲碁界ではAI碁が選ぶ最良とする一手一手を参考にして、日々新たな打ち方の研究が進められています。特に、若手棋士たちは、従前の定石に拘らないAI碁から学び、ベテラン棋士たちを打ち負かし始めました。

昔のように型にハマった定石を覚えなくても、自由に指し手を選べるこのゲームは、過去の規範が役立たなくなってきた今の時代にマッチしたゲームと言えます。

AIのもつ未知の部分やリスクに対して

人工知能AIは、人間の神経細胞の仕組みを再現したニューラルネットワークを用いた機械学習の手法の1つである多層構造のニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)によるとのことです。

AIは創薬や医療のほか、エネルギーや素材の開発などに広く役立つ一方、AIの活用と悪用の制限を両立させる方法については「まだ誰も良い答えを持っていない」とハサビス氏は指摘しています。

AIは、囲碁においてこれまでの殻を破る新しい発想の重要性を気づかせてくれました。AIには未知の部分や研究すべきリスクはありますが、人間叡智で、前向きに、うまく共存する術を探し求めていくことです。 2025.1.13.