新型コロナ禍で幸福を追求することが、かつてなく困難となっています。他人と会えず、孤独で暗い日々の中で、どのように幸せを見つけ出そうとしているかについて、8カ国の人たちの暮らしぶりが取り上げられていました(2月16日発行のNEWSWEEK 日本版)。
ここでは、その中から、メラキ、ケイフ、ワビサビという3つの国のことばを紹介したいと思います。
メラキ、ギリシャ
メラキは、ギリシャ語でμεράκι、英語ではmerakiと綴られています。その意味は、「魂、創造性、愛をもって何かをすること、自分の何かを周りの人に注ぎ込むこと」だそうです。
食卓につく人の心を喜びで満たすのが、ギリシャ料理。その中に含まれているすべての隠し味を、一心不乱に味わおうとする姿勢、これがメラキです。差し詰め、いま日本で流行りの「集中」です。
メラキを実践すれば、本人も周囲の人たちも幸せになれます。マルチタスクはやめたほうがよさそうです。
ケイフ、トルコ
このケイフ、keifという言葉を日本語で正確に説明することは難しそうです。あえて言えば、「何もしないことを喜ぶ気質」です。
イスタンブールの街中で、路上にただ立ってるだけで何もしていない人たちの行為をケイフと呼んでいます。
何もせずにいることが、至福の行為であるならば、どこの国でも手軽に幸せを味わえるかもしれない。
インドネシアを車で走っていると、沿道の庭先で日がな一日、じっと座り込んでいる男たちが思い出されます。
ワビサビ(侘び寂び)
日本人の特性も紹介されています。仏教の影響を強く受けて形作られたのが日本の文化です。生命が無常のものであることを認め、物事を出来るだけ自然な状態で受け入れることにより、日本人は人生への充足感を得ているようです。
日本人には、ワビサビという考え方が根底にあり、儚さや不完全さを尊ぶ思考の持ち主であると西洋人には映っているようです。
こう言われてみると、政府がロックダウンを宣言しなくても、率先して外出自粛を実践している国民性には、このような文化的な背景があるのかもしれません。
いずれも、固有の長い歴史を持つ国々の言葉です。遠い昔に思いを馳せていると、新型コロナ騒ぎを忘れさせてくれます。
2021-2-15