医療従事者を守るには、入院前のPCR検査をルーチンに

新型コロナウイルス感染拡大防止のために、最前線の現場に立って、治療や検査に当たっている医療従事者とその家族が差別や偏見にさらされているという報道が目立ちます。そこで、今日の医療現場の状況を正しく理解していただく上で、いくつかの点を指摘したいと思います。

各地の医療機関がクラスターとなっている例が数多く報道されます。これは、日本に限ったことではなく、中国、イタリア、米国等でも医療従事者の感染が目立ちます。その理由として、今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2ウイルス)に感染してから発症まで日数がかかること、また感染していても無症状の人が結構多いことが、SARSや新型インフルエンザウイルスの流行時に比べ、防疫対策を難しくしています。

新型コロナウイルスCOVID-19は1月に武漢でパンデミックが始まり、1か月も経たないうちに、世界中に拡がってしまいました。そのあまりの早さに各国ともに対策が後手に回ったこと言えます。

我が国では、PCR検査をすれば、患者が増えすぎ医療崩壊の原因となる(?)、4日間熱が続かないと検査をしないという、これまでの感染症対策の常識を破る方針がとられました(基本は早期発見、早期隔離です。)その結果、いまだに1日の検査数は1万件に達しておらず、隣国の韓国や中国と比べ、圧倒的に少ない数です。

神戸市の3次救急の要であり、また感染症の指定医療機関でもある神戸市立中央市民病院で院内感染が発生したことに大いなるショックを受けました。50名近い新型コロナウイルス感染症患者を一手に受け入れておりました。感染が蔓延したのは一般病棟です。問診、臨床所見で入院前に念入りにチェックをしていても、無症状感染患者は見落とされてしまいます。

これだけ新型コロナウイルスが蔓延した状態では、入院患者は全員PCR検査を済ませてから入院させることです。PCR検査をしたからといって全ての感染者をチェックできるわけではありませんが、検査をしない場合とは比べものになりません。

医療者を守るには、PCR検査をルーチンにすることです。

見え難い敵を少しでも見えるようにしないと、医療者の士気を低下させてしまいます。国の積極的な支援策を切望します。


2020.04.23 Thursday