143. 小学校入学前に大切なワクチンを
今年に入り、全国で麻しん患者が増加しています。麻しんは、感染力の極めて強い感染症です。麻しんにかかると38度前後の熱が数日続き、一旦解熱した後、再び、高熱とともに発疹が出現します。通常は、1週間から10日前後で回復しますが、ときに肺炎や脳炎を発症して重症化する場合があります。
麻しんワクチンも風しんワクチンも、1回の接種で95%以上の子どもは免疫を得ることができますが、十分な免疫がつかなかった場合を考慮し、また、年数がたって免疫が下がってくるのを防ぐ目的で、接種回数が第1期と第2期の2回接種に変更となりました。
麻しん・風しん混合 (MR) ワクチンの第1期予防接種は1歳から2歳の間に、また、第2期は、小学校就学前の1年間(4月1日から3月31日まで)となっていますが、最近の流行を考えると、できるだけ早い時期に予防接種を受けることです。定期の予防接種は、各市町において指定の期間内には無料で受けられます。(令和元年12月号)
142.「叱る」も、「怒る」も、親子のコミュニケーション
長かった夏休みが終わると、「さっさとしなさい!!」と、毎朝大声で叱っている母親の声が響いてきます。その声だけを聞いていると、「叱る」というよりも、自分のイライラを相手にぶつけるだけの「怒り」のようにも感じられます。
「叱る」と「怒る」の言葉のちがいは、相手のためか、自分のためかで使い分けられています。我が子がいい子になってほしい、子どもによかれとの思いで親は叱っているのですが、いつの間にか怒りに転じています。子どもは自分のしている事の善悪を理解できるようになると、親の「怒り」の程度を測り、親が、本気か、ただのイライラした気持ちか見極めています。
日々繰り返される「叱る」、「怒る」は、親子の大切なコミュニケーションです。子ども自身が自らの行為をよくないと思っているときに、タイミングよく、「叱り」、「怒る」と、子は親に愛を感じます。親だからできる「叱り」ですが、最後には、上手に「ほめる」一言も。(令和元年10月号)
141.「しつける際の親の体罰禁止」が虐待防止法に
先の国会で、虐待防止法改正案が成立し、来年4月から「しつける際の親の体罰禁止」が明文化されることになりました。
親が、ものの道理・ことの善悪を教えるのが「しつけ」であり、親の大切な役割です。しかし、ことの善悪がわかるのは3歳すぎからです。親の思い通りにならず、一筋縄にいかないのが、普通の子どもです。ゆっくりと時間をかけないと、子どもの「しつけ」はできません。
一気に分からせようと、いつも高圧的な態度で臨んでいると、子どもは、その場を一見従順そうに振舞うかも知れません。しかし、子どもの心は大きく傷つき、他人への不信感、やがては反抗心が芽生えていくのです。体罰でなくでも、「ダメ!」という言葉だけで、その時に見せる親の表情から、弱い立場にある子どもの心の奥深くに恐怖心が植え付けられていくのです。
あなた自身が、ゆっくりと、落ち着いた態度でお子さんと向き合う、それだけで、あなたの思いはお子さんに正しく伝わりますよ。(令和元年8月号)
140.「令和」の幕開け
「国民を思い、国民に寄り添う」という天皇陛下の即位でのお言葉には、多くの国民が大変親しみを感じたのではないでしょうか。小学3年生の孫娘もiPadの手を休め、テレビに映し出される天皇、皇后両陛下のお姿を食い入るように見つめていました。日本国及び国民統合の象徴としての天皇が、日本人みんなの尊敬する存在であること実感しました。皇室制は日本人にとっては当たり前のことですが、王室制のない外国人からは羨ましがられているのです。
私が住んでいる地域では「令和奉祝だんじり巡行」が開かれました。小雨降る中でしたが、沿道には多数の老若男女が訪れ、大変賑やかに門出をお祝いしました。お囃子とともに力を合わせて地車を引いた子どもたちにとっては、郷土への愛、新しい時代「令和」への思いが、生涯にわたり記憶として残ることでしょう。(令和元年6月号)
139.「体を動かしたい」、「だれかと遊びたい」が子どもの欲求
春の訪れとともに、学校や幼稚園から帰った子どもたちが、街角の公園に一斉に飛び出し、大声を発しながら夕陽を浴びて走り回っています。子どもたちのもつエネルギーの逞しさは、周りの大人にも元気を与えてくれます。
現代の子どもの問題として、スマホ遊びがよく取り上げられますが、ここでは体を動かすことが優先して、誰一人としてスマホに触れている子はいません。子どもの身体が潜在的に持っている「体を動かしたい」、「だれかと遊びたい」という欲求を引き出し、しっかりと満たしてやることがいかに大切かよくわかります。
今の子育て支援は、お母さんが働きやすいようにと保育所の増設が中心で、子どもの視点に立った生活環境は後回しのようです。
遊び場こそが、地域の子どもたちとって一番大切な生活インフラです。地域のいろんな年代の子どもたちが、晴れの日も、雨の日も、集い、安心して走り回って遊べる場こそが、子どもたちの健やかな成長発達に欠かせないのです。(平成31年4月号)
138. コンプレックスを長所に
外見上のコンプレックスを武器に海外でも活躍する日本人女性4人組のバンド・CHAI(チャイ)を、年初のNHKテレビのクローズアップ現代が取り上げていました。渡辺直美さんとトレンディエンジェルの斎藤司さんがゲストとして参加し、コンプレックスに悩む人たちに元気を与えてくれる番組でした。
学校生活は、マジョリティー(多数派)の中にいると居心地はいいのですが、マイナリティー(少数派)になると、毎日の生活が息苦しく、不登校になります。人はコンプレックスをもつと、自分をマイナリティーの殻に閉じ込めがちですが、そのコンプレックスは他人が持つことのできない特性だと考えれば、大きな長所になるのです。
何もかもが平準化された情報化社会では、マイナリティーの子どもたちのもつ感性が大切にされ、注目される時代なのです。(平成31年2月号)
137. スマホ社会での子育て
育児不安をスマホ検索で解消し、スマホによる読み聞かせ絵本で育てされた子どもたちが、もう小学生になります。算数、国語などのスマホ教材で学習の手助けを受けている子どもも少なくありません。
その一方で、2017年度の厚生労働省の調査では、高校生の16.0%、中学生の12.4%がネット依存と言われ、またネット依存の低年齢化がどんどん進んでいます。中1の女の子の半数以上がスマホを持ち、LINE(SNS)が友達との交流における必須アイテムになっています。何しろ、書き込めば瞬時に相手に伝わり、数秒もしないうちに返事が戻ってきます。
利用の仕方で相手を傷つけ、いじめから自殺へと追い込むこともあります。ツイッターやインスタグラムでは、友達仲間だけでなく、不特定多数の人々に自分の情報が発信されるので、思わぬ災難に出会うこともあります。
子どもが親から離れてSNSを始める前に、家庭や学校でスマホの正しい使い方とリスクをしっかりと教えておくことが大切です。(平成30年12月号)
136. 屋外でからだとこころのリフレッシュを
今年の夏休みは、すさまじい猛暑と度重なる台風の襲来を受け、子どもたちは屋外で自然と共に過ごす時間が短かったのではないでしょうか。
私自身の少年時代の夏の思い出は、一日中屋外で、友だちと野球をしたり、近くの川や池で泳いだり、魚釣りに興じていた日々です。いまは、川や池で泳ぐことは禁じられ、通りでキャッチボールもできません。自らの命への危険、他人への迷惑もあるとは思いますが、気の毒な感じがします。
いよいよ運動会シーズンです。秋の青空の下で、大きなスピーカー音とともに子どもたちが発する元気いっぱいの歓声が、校庭から町中に響き渡ってくると、地域の大人たちにも活気を与えてくれます。
屋外での運動・遊びは、子どもの身体を鍛えるだけでなく、からだとからだのふれあいが他人とのコミュニケーション能力の開発に役立ちます。太陽の光と熱をいっぱい浴びるのが、地球上のすべての生物の育ての親となっているのです。(平成30年10月号)
135. 食の好き嫌いは変化する
1歳を過ぎ、離乳食も終わりに近づくと、家族と同じ食材を食べる機会が増えてきます。お母さんは、栄養のバランスを考え、色んな食材を取りそろえて食べさせようとしますが、なかなか思うように食べてはくれません。
なんでも口に入れてしまう子もいますが、多くの子は食に対してたいへん用心深く、初めてのものをなかなか口にしません。「甘い」、「塩辛い」ものは好みますが、「すっぱい(酸)」、「にがい(苦)」には敏感です。
食の偏りが原因で栄養不足になるケースは、今の日本ではほとんどありません。偏食があっても、お子さんが機嫌よく、活発に遊んでいれば何の心配もいりません。
頑張って調理方法をいろいろと工夫しても、食べてくれないときには、親にも子にもストレスとなります。まわりの家族が美味しそうに食べているだけで、いつの間にか、あなたのお子さんも口にしていますよ。きっと。(平成30年8月号)
134. 男らしさと女らしさ
幼児の好きな遊び方やおもちゃには、明らかに性差があります。男児は怪獣、ロボット、電車、自動車などを、女児はお絵かき、なわとび、人形、ぬいぐるみなどを好みます。この幼児のもつ男らしさと女らしさは、親の養育ででき上がるのでなく、お母さんの胎内にいるときにある程度決まってしまうようです。
男児では、妊娠6週から24週にかけて、男性ホルモン(アンドロゲン)が胎児の精巣から大量に分泌され、男性の外性器が形づくられ、脳は男性化し、男性的な行動をとらせるのです。男性ホルモンは男児だけでなく、女児でも卵巣や副腎からわずかな男性ホルモンが分泌されています。
男っぽい女児がいたり、女っぽい男児がいたりするのは、血液中の男性ホルモン量によるのです。子どもの遊びの様子をよく観察し、生まれつきもっているその子の特性を生かしながらの、自然な子育てが大切でしょう。(平成30年6月号)
133. 子どもの「なに」、「なぜ」は創造力のあかし
満3歳を過ぎ、ことばを上手に話せるようになると、矢継ぎ早に「なに」、「なぜ」を繰り返します。
この「なに」、「なぜ」と疑問に思う心こそが、人間のもつ創造力を生み出していくのです。AI化がどんなに進んでも、人間が優位性をもつのは、この創造力です。
子どもが投げかけてきた、「なに」、「なぜ」には、面倒がらずに答えてあげてください。疑問に対して返ってきた答えは、いつまでも脳の奥深くに残ります。もし、答えようもない質問なら、答えられない理由をはっきりと述べることです。これもまた、子どもにとって大きな財産となります。
一番いけないのが、「無視」です。無視が繰り返されると、子どもは知識欲を失い、無気力な大人になっていきます。AIに負けない創造力のある人間に育てるには、子どもの疑問にしっかりと向き合うことです。(平成30年4月号)
132. 10代の若者の活躍が目立っています
将棋の藤井聡太四段は若干15歳ながら公式戦29連勝し、大変注目をされています。冬季オリンピックを控え、10代選手の活躍も期待されています。
10代で世界のトップクラスになった運動選手や芸術家などを、天才少年あるいは天才少女と呼んでいます。二世選手もたくさんいますが、多くはごく普通の両親をもつ子であり、その子育てについて世間の人々は関心を示します。
テレビで映される親へのインタビューで、始めたきっかけは本人が進んでやり始めたと多くの親たちは答えています。また、本人自らが練習に取り組み、親は見守るだけだったとも話されます。
彼らの成功の秘訣は、「粘り強く,やり抜く力」という天賦の才があったからでしょう。また、こども自身が伸ばし始めた芽を摘み取らずに、モチベーションを高めるように上手く育てられたご両親の力も大きいと思います。(平成30年2月号)